没ep.旅立ちの朝
ついに冒険へ向け、カサリナの町を旅立つ日。
晴れた空の下、玄関先で、見送りに出た両親を振り返った。
少し心配そうな父さん。いつもと変わらず明るい笑顔の母さん。
「それじゃあ行ってきます」
「お世話になりました」
俺達が順に言うと、2人は頷いて答える。
「気をつけて行くんだぞ」
「まぁ、頑張りなさい。応援してるから」
重みを感じさせる父さんの声と、軽めな母さんの声。
『はい!』
元気よく答えた時に蓮之介と重なった。両親に背を向け歩き出す。
2人並んでニーアを迎えに行く。彼女の家まで来た時、大きな涙声が聞こえてきた。
「やっぱり心配だよぉ。行かないで〜」
おじさんの声だ。宥めるニーアの声も聞こえてくる。
「お父さん、私なら大丈夫です。1人じゃないですし……」
「やだやだ、可愛い娘が見知らぬ地に行くなんて」
「いい加減におしよ。恥ずかしい」
門前まで来たら、おばさんも交えて大騒ぎしていた。
娘に縋りつくおじさんを、おばさんが引き剥がそうとしている。
「母さんは心配じゃないのかい? ニーアちゃんはこんなに可愛いんだよ。良からぬ虫がついたら、そのまま帰って来なかったらどうするんだい!」
「お、お父さん」
ニーアが困惑していた。一方でおばさんは盛大なため息を零す。
「バカな妄想も大概にしな。嫁に出す時は祝福してやりゃあいいのさ」
「あー聞こえない。聞こえなーい」
手が腕ごと塞がっているから、おじさんは首を振って抵抗する。
傍目にも往生際が悪い。ついにおばさんが本気の顔になった。
「とにかく離れな。見苦しいったらありゃしない」
「いぎゃあぁぁっ!!」
(あぁ、おじさんがまた……)
「なんというか、ニーアの強さの秘密を見た気がするぜ」
情けない叫びが響く中で、蓮之介の呟きが虚しく耳に届く。




