平和な世界
学校には既に蒼井がいた。だが既にその周りに男子達もいた。
「どうするんだよ。はやて」
俺のあとについてきた慎が俺に問いかけてきた。
「お前は付いてくるなよ」
「1人だけでエンジョイするのはずるいだろ。」
なんだよエンジョイって。まぁそれはどうでも良いのだが付いてこられるのは困る。
「慎、放課後に駅前のマックでおごってやるよ」
「それだけで俺が手を打つと思っているのか?」
「じゃあ、何をすればいいんだよ?」
「実樹先生もマックにくるなら良いぞ」
「お、マジか」
実樹は校内でトップクラスの容姿だ。下心の塊のようなこいつにとって実樹は大好物なのだろう。
「よし、それで手を打とう」
「よっしゃぁ!」
そう言うと慎はいさぎよく俺達の教室に戻った。
「よし」
さてこれからどうするかだな。強引に突破するか?それはただ返り討ちにされるだけか。普通にあいつに近づいて話しかけるか。
そう考えた俺は蒼井の元に近づいていった。
「蒼井、ちょっといいか」
「はやて、どうしたの?」
何だ?一言しゃべっただけなのにすごい殺気のある視線を感じるぞ。
「場所を変えない?」
「そうだな」
俺たちは逃げるように校舎裏に行った。屋上はスタンダードすぎた。それが俺の考えだ。そう考えると地味な校舎裏のほうが屋上よりいいかと思った。
「さて用件は何?」
「平井誠一」
「はやてを拾ってくれた人だっけ」
「そうだ。だけど俺よりもお前のほうが誠一さんに関係してるんじゃないのか?」
「えっ。何の事?」
何かを隠すように蒼井は言った。
「平井蒼井。それがお前の本名だろ」
「それも・・幼なじみからの情報?」
「いや、リアからの情報だ」
俺は事実を言った。
「そっかリアか。平井誠一の妖精なら何でも知ってるよね」
蒼井は少し間を開けてから話を再開させた。
「リアが言ったとおりだよ。私は平井誠一の娘。平井蒼井だよ」
「今、誠一さんがどこにいるか知らないのか?」
「知らない。生きているかもわからない」
「そうか」
とりあえず確認はできた。今日はそれ以外用はない。俺は教室に戻ろうと思った。
「じゃあ、またな」
「待って!」
蒼井が俺のことを引き留めた。
「どうした?」
「もうちょっとしゃべろうよ。私が教室に戻ってもつまらないから」
蒼井は俯きながら言った。
「そうだな。何をしゃべる?」
「幼なじみのこと。話してくれる?」
「実樹のことか」
「女の子なの?」
「ああ、井口実樹。俺たちが昨日屋上で 話している時に割り込んできたやつだよ」
実際、蒼井と実樹は1度会っているので説明しやすそうだ。
「あの子が幼なじみなの!?」
蒼井はすごく驚いている。そんなに驚くことだろうか。別に普通だと思うが・・・
「そんなに驚くことか?」
「だってかなり美人じゃん!」
そういうことか。確かに実樹は美人だな。でもそれはあくまで容姿だけだ。性格などは全く見た目と反している。
「確かにな。でもお前も負けてないぞ」
「はぁぁ!?な、何言ってるのよ!」
蒼井はほおを赤らめた。蒼井の反応を見て気づいたが俺は今、ものすごく恥ずかしいこと言ったな。
「ご、ゴメン」
なぜ俺は謝ったのだろう。恥ずかしいことは言ったが一応蒼井のことをほめただけなのだから謝らなければいけないことは無かったはずなのに。
「なんで・・謝るのよ。その・・・さっきのは嘘じゃないよね?」
「ああ、嘘じゃない」
なんだよこの雰囲気!すごい憧れてたシチュエーションだけど実際にやってみるとかなり気まずいぞ!
「そ、そろそろHR始まるぞ」
「そ、そうだね。そろそろ教室に戻ろうか」
そんな感じに切り抜けた俺はそのまま2-2の教室に戻った。だが教室に戻った途端に慎が俺のところに来た。
「おい、はやて、どんなエンジョイをしてきたんだよ」
「別にエンジョイなんてしてねぇよ」
まぁあんな可愛い子と二人っきりでいることだけでもエンジョイとみなされるのかもしれないが。
「それにしても、お前どうしたんだよ。あの真白蒼井と何で仲良いんだよ」
「え・・いや別にそこまで良い訳じゃないぞ」
さすがに妖精のことは慎には言えない。言ってしまったら慎まで巻き込むことになるのだから。慎や実樹は絶対に巻き込ませたくない。
「いや、真白蒼井と話せるだけでもすごいんだぞ。それに二人きっりってもっとすごいだろ」
「だからそこまでじゃないって。あいつが俺の親父の知り合いだっただけで」
「親父さんの・・・」
慎は誠一さんのことを知っている。俺が孤児院にいたということは知らないが誠一さんを俺の本当の父親だとこいつは思っている。もちろん誠一さんが死んでいるともこいつは思っている。
「なんかゴメンな」
「いや。別に良いよ」
なんとなく気まずい空気になったが俺たちの担任の先生が教室が入ってきたので俺と慎は席に戻った。
その後、いつ通りHRが終わり、授業も終わった。休み時間の時に蒼井の所へ行こうとしたが行ったとしても話すことがないので行かなかった。
帰り道、俺の隣にはいつも通り実樹がいる。
「実樹、昨日言ってたこと話してくれるか?」
昨日、実樹は昨日、俺に電話をかけてきた。そして蒼井がいじめられていたということを俺に伝えた。
「ああ、真白蒼井のことね」
「ああ、頼む」
「わかった。真白蒼井はいじめられていた。女子からも男子からも。理由は原因不明の爆発などが真白蒼井の周りで起こったりしたから、それによって周りの人も被害を受けたこともあるの。だから真白蒼井がいるから害が出る。という噂が流れていじめに発展したの」
「そうか」
と、ここで俺の携帯が鳴った。携帯には慎の名前が表示されていた。
「もしもし」
俺は電話に出る。
「はやてか?慎だけど。お前、マックのこと忘れてないだろうな」
「あっ」
忘れていた。完璧に忘れていた。
「忘れてたのかよ。」
「ああ。悪い。一回家に帰って、着替えてから行くから4時半にマックに集合で良いか?」
「わかった。実樹先生を忘れるなよ」
「わかってる」
そう言って俺は電話を切った。
「なぁ、実樹今からマックに行かないか?」
「はやてがおごってくれるの?」
「ああ」
慎と実樹の分の代金を支払うのは結構きついがギリギリセーフだろう。
「なら良いよ」
「そうか。なら4時半にマックに集合な」
「わかった」
そういて俺のアパートの前で実樹と別れた。そのまま部屋に入って着替える。部屋の中では特に変な出来事は無かった。
その後、10分程度歩いてマックについた。慎はもうすでにマックの前に立っていた。よっぽど楽しみなのだろう。実樹は俺が到着してから3分後くらいにマックに来た。服装は制服のままだ。
「あれ?慎君もいたの?」
「ああ。ていうかお前着替えてこなかったのか?」
「うん。ちょっとめんどくさかった」
そんなことを話しながら俺たちはマックに入った。店内には俺たちのような高校生や大学生が結構いた。だが席は何席か空いていたので俺たちは適当なところへ座った。
その後、慎はてりやきバーガーのセット、実樹はえびかつがはさんであるバーガー・・なんというのだろうか?まぁそれのセットだ。俺は適当にチーズバーガーだ。俺もセットを頼もうとしたがそうすると俺の財布がかなりピンチになるのでやめた。
ちょうど俺たちのもとに俺たちが頼んだ物が運ばれてきたときに何人か大学生が店に入ってきた。
「えっ・・・」
俺はその大学生のグループの人たちが俺たちが座っている席を通り過ぎるときにとある人物を見つけてしまった。一條蓮だ。
「どうかしたのか?」
「いや、何でもない」
慎が俺に問いかけてきたので俺は返答した。
「そうか。じゃあさっそくいただきます」
慎はさっそくてりやきバーガーを食べ始めた。それに続いて実樹も食べ始めたが俺は一條が気になってなぜかそっちを見てしまう。と、一條が俺のほうをチラッと見てからトイレのほうへ向かった。おそらく「来い」という合図だろう。
「ちょっと、トイレいってくる」
そう言って俺はトイレに向かった。
「どうしてお前がいるんだよ」
「大学生がマックにいることがそんなに不思議なのか?」
一條が言うとおり大学生がマックにいることは全く不思議ではない。だが俺はこいつがすぐにでも人を殺せる危険人物だということを知っている。だからこいつがこんな平和なところにいるということがかなり不思議に思えた。
「俺だって普段は普通の大学生だ。」
「そうだな。ちなみに今からお前は俺のことを殺すのか?」
敵が目の前にいるのだ。だから俺は最初から警戒していた。殺されるかもしれない。そんなことを思っていた。
「ここで俺が爆発を起こすと思うのか?」
「お前ならやりかねないと思ってたのだが」
「さすがにやれないだろ。普通に考えろよ」
冷静に考えればここで爆発を起こせば単純に警察に捕まる。それだけでなく爆発によって破損した物などを弁償しなければならなくなる。そんなことを考えればここで爆発を起こすような人はほとんどいないだろう。
「ところでお前は蒼い鳥に入ったらしいな」
「ああ。お前とは正式に敵になったな」
「そんなことはどうでも良いんだよ。だけど今から言うことは絶対だ。100%だ」
「なんだよそれは?」
「蒼井を絶対に死なせるな」
今、一條がいったことに俺は戸惑った。蒼井を絶対に死なせるな。とこいつは言った。だがこいつは昨日、蒼井を殺そうとした張本人だ。
「おかしいだろ。蒼井を死なせるな。ということどういう意味だ?お前は蒼井に死んでほしいんじゃないのかよ?」
「蒼井には生きて欲しいよ。そしてもう1度蒼井と味方同士として戦いたい。」
一條が蒼い鳥を裏切ったことは由紀さんから昨日聞いていた。俺はその時は何も思わなかった。今も一條が蒼い鳥を裏切ったことについては何も思わない。だが一つだれでも思い浮かぶような疑問が出てきた。
「蒼井と一緒に戦いたいならなぜ蒼い鳥を裏切ったんだよ?」
「零斗だ。あいつは何かをしようとしている。俺や蒼井、そのほかの妖精使いを使って何かをしようとしているんだ。だがその何かは二つの牙を持つ者が二人必要らしい」
二つの牙を持つ者。それはすなわち2匹の妖精の力を持っている妖精使いのことだ。そして今現在、その二つの牙を持つ者は2人しか見つかっていない。それはここにいる一條、そして蒼井だ。普通、爆発系の妖精の力を持っている妖精使いは五代元素を操る妖精の力を持っている妖精使いより弱いと言われているそうだ。だがこの2人はこの妖精使いたちの世界である程度の実力と地位を持っている。それは爆発系の妖精を2匹分、つまり並みの妖精使いの2倍の力を持っているからだ。
「で、その何かを行わせないためにお前は蒼い鳥を裏切ったのか・・・」
「俺が蒼井と一緒に戦ったのは3回程度だ。あいつと俺はかなり相性が良い。同じ二つの牙を持つ者だからな。俺は5年近くこの世界で生きてきた。だがその中で楽しいと思えたのは蒼井と一緒に戦ったときだけなんだ。だからもう1度あいつと戦いたい。だから蒼井を守ってやってくれ」
「お前は蒼井が好きなんだな」
「そうなのかもしれないな」
「じゃ、そろそろ俺は友達のところに戻るかな」
「わかった。さっき言ったことは絶対だぞ」
「わかってる。じゃあな」
一條は意外といい奴なのかもしれないな。敵であることに変わりはないが。そんなことを思いながら俺は慎と実樹のところへ戻った。妖精とかが関わらない平和な世界に。




