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フェアリーワールド  作者: 志木遊葉
第1章 妖精使い達の世界
3/7

俺は・・妖精使いになったのか?

 俺は高校に入ってから一人暮らしをしている。それは実樹も同じだ。なので俺は金がなかったりするときあいつに夕飯を食べさせてもらうこともある。

 まぁそれはどうでも良いのだが一人暮らしというのはメリットやデメリットがいくつかある。メリットはさっき行ったように気軽に女子と遊べる(俺は金がないときだけだが)、

自由に生活が出来る。という2つくらいだ。デメリットのほうは基本家事を自分でこなさなければならない、話をする相手も居なくて時々暇な時間が出来る。と、こちらも2つくらいだ。

 現在の俺はデメリットの二つめに悩まされている。つまりこれから何をするか。ということだ。だがその悩みはすぐに消えた。

「今日は色々あって疲れたし少し寝るか。」

 というわけで俺はベットに入った。すぐに俺は睡魔に襲われて眠りに陥った。



「ねぇ、君、ねぇてば」

 どこからともなく声が聞こえてくる。それが誰の声なのか、どこから声を発しているのかもわからない。

「ねぇ、聞いてる?」

「お前は誰だ?」

「お、やっと気づいたか」

 どうやら女性の声らしい。蒼井のように声が透き通っているが、声の高さは蒼井よりも少し高い声だ。ずいぶんと美人なんだろうなと頭の中でこいつ顔を想像しながら話を続ける。

「質問に答えて欲しいな」

「うん、僕はリア」

「リア?」

 「リア」というのは人の名前じゃないような気がする。人じゃなかったら何だ?人の言葉をしゃべるんだから人に決まっている。だが俺は一応、リアと名乗ったやつに聞いた。

「お前は人間、だよな?」

「違うよ、妖精だよ」

「妖精だと・・・」

 はは、何だそれ。何で妖精が俺に話しかけてくるんだよ。というか妖精という生命体は本当にいたのか。俺は蒼井と話してるときに実は妖精なんて生命体がいることをあまり信じていなかった。だがこいつの言葉でなんとなく実在するんだな。と思った。なぜこいつによって納得できたのかはわからない。あくまでなんとなくだ。

「で、その妖精さんが何の用だ?」

「実はお願いがあるんだ」

「言ってみろ。俺が出来ることならやってやる」

「僕の力になって欲しい」

「お前の力になるっていうのは俺が妖精使いになるってことか?」

「そういうことになる」

 俺は今何で自分が冷静な状況でいられるのか不安になった。俺は今あの残酷な世界に入ってほしいと言われているのに。それなのに冷静でいられた。するリアと名乗った妖精が話を続けた。

「僕の誘いを断ったとしても受け入れたとしても君は夢ではなく、現実で襲われるよ。襲われるなら力を持っていた方が良いんじゃない」

「だれがそんなこと受け入れるか」

「じゃあ、君は死にたいの?」

 今まで冷静だった俺が一瞬にして凍りついた。「死」というこの妖精が言ったことがあまりにも現実味があったからだ。やはり俺の予想通りあの夢は現実と関係あったのだ。あの残酷なことが現実でおきていると俺は確信した。なんだかわからないがこいつが言うことは全て正しいような気がしてきた。

「なぁ一つ確認していいか?」

「いいよ」

「俺の夢で起きたこと知ってるか?」

「知ってるよ。そもそもあの夢は僕がみせたんだから」

「は?ちょっと待てよ。妖精の力は戦いにしか使えないんじゃないのか?」

「普通だったらねでも僕は普通じゃない。人の夢を操作できる。ほかの妖精も人の夢に入ることはできるよ。そうやって人間に妖精の力を与えるんだから。でも、ほかの妖精は夢を操作することはできない。それに人に妖精の力を与えた場合は人の夢をにという力は人間には使えない。妖精よりも脳が発達していないから」

「で、何でお前は俺にあんな夢を見せたんだ?」

「確実に僕の願いを受け入れてもらうため」

 ようするにこいつは俺が妖精使いにならないと死ぬという状況を作り上げたんだ。だから俺が予想した少しでも足を踏み入れたら消される。という予想も当たってたわけだ。

「どのくらい残酷なんだ?その妖精使いたちの世界は」

「基本的に君が見た夢までは残酷じゃないよ。けど、ひどい人は君の見た夢よりもひどいことをする」

「俺が妖精使いになったらその世界を破壊することはできるか?」

「可能性は限りなくゼロに近い」

「でもゼロじゃないんだな」

「君は妖精使いになった後はあの世界を破壊しようと思ってるのかな」

「ああ、その通りだ。あんなことが現実にあって良いわけないだろうが」

「まぁ、君が力をどう使うかなんて僕の知ったことじゃないけどね」

 やれるのか?俺はあの世界を破壊できるのか?客観的に見たら絶対できないと確信できるのに、今の俺は可能性はゼロじゃない。という事実だけで動こうとしている。殺し合いの世界に自ら入ろうとしているのだ。だが俺はそんなことにも気づけなかった。

「じゃあ、僕の力に・・いや、妖精使いになってくれるの?」

「ああ、やってやる」

 そうして俺は妖精使いになってしまった。この時点で俺はもう後戻りできない状態になった。あの世界が俺の想像をはるかに超越しているという事実を知らなかったのに・・・



 俺は携帯の着信音で目覚めた。

「俺は、妖精使いになったのか?」

 ただの夢という可能性も否定できない。だが妖精というあまりにも現実離れしたことだ。夢によって妖精使いになってしまうかもしれないという可能性も否定できない。

しかし今はそんなことを考えるよりまず先に電話に出ることを優先した。急用とかだったらまずいからな。だが携帯の画面を見たときに急用じゃないことがほぼ100%無くなった。画面に表示されていたのは実樹の名前だったからだ。

「もしもし、実樹か?」

 とりあえず電話に出る。おそらく宿題を見せてとかそういうことだろう。

「はやて、電話に出るのおそいよ。どうしたの?あ、まさか家にまで転入生を連れ込んで朝の続きを・・・」

「そんなわけあるか!」

「じゃあ、どうしたの?」

「帰ってきてから今まで寝てた」

「えぇ!じゃあ宿題まだやってないのかな?」

「あたりまえだ」

 それにしても俺は何時間くらい寝たのだろうか?そう疑問に思い俺は時計を見た。時計は「PM7:45分」と表示されていた。俺が家に帰ってきたのは5時くらいだったから、

3時間近くも寝たのか・・・

「そんなぁーじゃあ今すぐやって!」

「自分でやれそんなこと」

「はやてのいじわる!」

 実樹は拗ねているのだろうか。そんな雰囲気をした口調だ。

「用はそれだけか?他にないなら切るけど」

 一応聞いておくことにする。まぁおそらく他には何もないと思うが・・・

「転入生・・真白蒼井さんだっけ。あの転入生」

 なんでここで蒼井の名前が出てくるんだ?何の脈絡もない名前が出てきて俺は疑問に思う。

「なんで蒼井の名前が出てくるんだよ?」

「えっ、もう名前で呼び合う関係に・・・」

「だから違うって言ってるだろが。そもそもお前と俺だって名前で呼び合ってるだろう

が!」

「あ、それもそうだね」

 まったくもう。俺は心の中でため息をつく。こいつの頭の中はどうなってるんだよ。

 おっと、話が本題からそれてきた。俺は軌道修正をする。

「で、蒼井がどうしたんだよ」

「あの転入生はなんで転入してきたんだと思う?」

「は?親の仕事の都合とかじゃないのか?」

 俺はてきとうに一番オーソドックスな転入する時の理由を述べてみた。実際、蒼井が転入してきた理由なんてそんなことだと思っていた。転入生が来るなんてそんな珍しい事じゃないと思うが、実樹はなんでそんなこと俺に聞いてくるのだろうか。

「そんなありきたりなことで電話なんてしないよ」

「じゃあ、どんな理由だよ?」

「いじめだよ」

「えっ、あいつ、いじめられてたのか・・」

 ありえない。そんな言葉が頭の中ではっきりと出てきた。あの蒼井が?確かにみんなの前ではおとなしくしているだけなのに周りに男子が集まってくる。そう考えれば女子からの嫉妬は受けるだろう。俺が今日受けたように・・・いや、女子の嫉妬はもっとひどいか。

「あいつは女子から嫉妬されてたのか?」

「まぁそれもあるけど、転入生の周りではおかしなことが起きるんだよね」

「何?それはどんなことだ?」

 まさか、妖精のことが関わっているんじゃないだろうな?そうだとしたら誰だって蒼井のことを避けるに決まっている。女子だけでなく、男子からも避けられる。そして蒼井が怖くなって蒼井を不登校にさせるためにいじめにまで発展させてたら?俺も同じ道を歩むことになるのか?いや、まだ俺は妖精使いになったのかもわからないし、蒼井がいじめられてた理由も明確にはなってない。決めつけるのはまだ早いか。

「蒼井の周りではどんなことが起きてたんだ?」

「彼女の周りで原因不明の爆発がおきるの」

 これで決まった。俺は怖くなった。俺の体が勝手に震えだした。まだ妖精使いになったかどうかもわからないのに震えだした。

「はやて、どうかしたの?」

「ああ、大丈夫だ」

「そう?まぁこの話は明日詳しくするよ」

「ああ、それじゃ切るぞ」

「うん、じゃあね」

 そう言って俺は電話を切った。いやな話だな。頭の中の70%は「怖い」という恐怖心がある。だが残りの30%は蒼井が可哀想だという気持ちがある。この2つの感情が俺の頭の中で回っている。

 やばい、このままだとこの2つの感情に押しつぶされそうだ。何かして気を紛らせよう。そう思ったが何もすることがない。

 すると、ピーンポーン、とアパートのインターホンが鳴った。誰だろうか?おそらく慎だろう。そう思い俺は玄関のドアを開けた。

「どちら様ですか~」

 ドアの前に立っていたのは慎ではなく、大学生の男だ。身長は俺よりも少し大きい程度だ。普通の大学の制服を着ている。この制服は俺のアパートから歩いて15分歩く程度でつく距離にある大学の制服なので見慣れている。制服がある大学ということでこの辺では結構有名だ。

「どちら様ですか?」

 俺はもう一度問いかける。男は少し間を開けて話始めた。

「一條蓮だ」

「一條さん?」

「ああ、君は平井はやて君、であってるかな?」

「えっ」

 何でだ?何で俺の苗字を知っているんだ?それも偽名ではないほうの本当の・・・

「何で君は苗字だけ偽名なんだ?」

 一條と名乗った男は俺に問いかけてきた。実は俺はとある個人的な事情で苗字を偽っている。その件のことはあまり話したくないので語らないことにさせて頂くが。

「逆に聞きます。なぜあなたは俺の苗字を知ってるんですか?」

「少しばかり調べさせてもらったよ。なぜ偽名を使っているのかはわからないけどね」

「そうですか。まぁそのことはどうでも良いです。用件はなんですか?」

 あまり触れて欲しくない話題なので話題を変えた。それにしてもこの人普通じゃない。俺が偽名を使っているということまで調べるのはおかしい。だいたい予想は付いた、この人は妖精使いだ。そう思った。

 この一條という人は危険だ。そう訴えるように俺の体が震えている。逃げられるなら逃げたい。だがあいにく玄関は一條が立っていて逃げられない。

 どうする?どうすれば逃げられるんだ?

「そうだね。確かに君の名前なんてどうだっていいね。それじゃ本題に入らせてもらうよ」

 こいつは俺のことを殺しに来たのか?だとしたら俺は今から殺されるのか?

 くそ、どうすればいいんだよ。

「それじゃあさっそく君のことを排除させてもらうよ」

 そう一條が言った後、一條の手が光った。いや、一條が手を光らせたのだ。この光を現実で見るのは初めてだがあの夢とそっくりだ。あの蒼井が発した光とまったく同じだ。少なくとも肉眼ではそう見える。

 あの夢と現実がまったく同じならおそらく次は爆発が起きる。そう思い俺は右側に倒れるようにして今まで俺が立っていたところから離れられるだけ離れた。

 案の定、俺が立っていたところで爆発が起きた。夢の中ではこの爆発をくらったのは俺じゃないから全然わからなかったが、今ので威力はだいたいわかった。生身の人間がもろにくらったら即死だ。俺のアパートの玄関が広くて良かった。玄関が広くなかったら俺は死んでいたのだからな。

 だが、妖精使いってのは場所を考えないのかよ。なんで人の部屋を爆発させるんだよ。とりあえず、戦場をこの部屋以外の所にしないとな。すきを見て外に出るか。

「今のをかわすとはねぇ。まるで妖精使いと戦ったことがあるみたいだ」

 一條はそう言うともう1度手を光らせた。だがその時の俺は一條が手を光らせる瞬間、この瞬間だけは俺が爆発の中心になるようにするために真剣に集中していたような感じがした。つまり、この瞬間はほかのことには集中できないということだ。それなら話は簡単だ。一條が俺に狙いを定めている間にあいつに飛びかかれば俺に勝機があるかもしれないということだ。 

 ただそれには今放たれた光の直後に起きるであろう爆発を避けなくてはならない。俺はさっきと同じように今度は右ではなく左に避けた。その直後に爆発が起きた。さっきよりも強い爆発だろうか、俺も少し傷を負う。巻き込まれてしまった。だがあいつは俺のことを仕留められていない。

「はやく死ねよ。そっちのほうが楽だぞ。残酷な世界を見なく良いんだからな」

「うるせぇよ!俺はその残酷な世界をぶっ壊すって決めたんだ!ここで死んだらその世界をぶっ壊せないだろうが!」

「君がこの世界を壊す?笑わせるな!そんなことただの人間にできるわけがないだろう!」

 そう言って一條は3発目を放つために構える。あと少しだ、打つ直前にあいつに飛び込めば少なくとも今よりはマシな条件になる。

「今度こそ死ねよ」

 一條は光を放とうとした瞬間、俺は動き出した。一條は俺が動いたことに戸惑っていた。

 「いける!」そう俺は確信した。ケンカなんて普段しない男子高校生のパンチはどのくらいこいつにダメージを与えられるのだろうか?そんなことはわからないが、とりあえずこいつを殴れる。それはわかった。

「うぉぉぉ!」

 俺の予想通り俺は一條を殴れた。そして一條は俺の部屋の玄関に倒れた。

 やったのか?いや、まさか俺のパンチをくらっただけで気絶なんてしないだろう。とりあえずここではないところで戦いたい。そう思って俺は部屋から出た。一條は起きかけていた。だが俺に攻撃する気はないらしい。あくまで「現在は」だが。

「君、おもしろいね。俺のこと殴るなんて」

「戦闘を仕掛けてきたのはお前だろうが」

「まぁ、そもそも君を殺す気は無かったから」

「はぁ?」

 頭が真っ白になった。あいつは俺のことを殺しに来たわけじゃないのか?ほかに目的があるのか?おかしい。もしこいつが俺のことを殺しに来たわけじゃないならリアが言ったこととは矛盾してる。そもそもリアが言っていることは100%正しい。と思っている俺がおかしいのかもしれないが。

「俺にとってのメインディッシュが来たようだ」

 俺の後ろから足音がする。誰だ?慎や実樹だったらまずいな・・・そう思って俺は振り返った。そこには慎や実樹ではなく、真白蒼井がいた。

 まさか、一條の目的は蒼井なのか?あいつにとって俺は蒼井をここに来させるためのものだったのか・・・それなら一條が俺のことを殺さない理由がわかる。一條も無闇に人を殺したくはないのだろう。

「久しぶりね一條連。いや、今は妖精の腕(フェアリーアーム)、コードナンバー007と呼ぶべきかしら」

「来るのが遅いな蒼井。いや蒼い鳥(ブルーバード)、コードナンバー003」

 何だよ。コードナンバーって。何だよ。フェアリーアームって。何だよ。ブルーバードって。頭の中がこんがらがってきた。

 その前にもしかして今から妖精使い同士の戦いが起きるのか?その場合はかなりの量の爆発が起きる。そうなればこのアパートが立っていられるかが心配だ。

 そんなことを心配しているとさっそく戦闘が始まった。

 おい、ここで戦うなよ。そう俺は2人を制止したかった。だが、俺にどうこうできるレベルではない。妖精使い同士の戦いは・・・

「君は邪魔だ!003!」

 一條はそう叫んで蒼井の懐付近に爆発を起こした。俺に向けてきた爆発とはレベルが全然違う。

 だが蒼井はその爆発をひらりとかわす。その後、蒼井も爆発を起こす。蒼井の爆発もかなりでかい。こんな世界に俺が入れるわけがない。

 恐い。すごく恐い。俺の間で2人の妖精使いが戦っている。爆風が俺にも当たる。痛くはないが、それだけでものすごい恐怖心が俺を襲ってくる。体が震えている。逃げたくても足が動かない。それくらいの恐怖心に俺は襲われていた。

 だが妖精使いたちの戦闘は続く。

「あなたは私を倒せるとでも思っているの?」

「当たり前だ!」

 蒼井が問いかけると一條は即答した。

 そういえば全然考えなかったが蒼井と一條、どちらが強いのだろうか?蒼井のほうであることを願うが今はどちらが強いのかというのはどうでも良い。

 ともかくここから脱出したい。爆発に巻き込まれたら俺は死ぬかもしれない。それしか頭になかった。

 すると、一條はそんな俺に気づいたのか俺のほうへ手を向けてきた。

 まさか!逃げなきゃいけない。逃げなきゃ死ぬ。そんなことはわかっているのに足が動かない。

 だが一條は少しも待たずに手を光らせた。

 来る!爆発が来る。そう思い俺は顔を隠すように精一杯防御した。それに意味があるのかはわからないが・・・

 だが、一條が放った光が爆発となって俺に襲いかあかることは無かった。蒼井が俺に身代わりになってくれたからだ。

 これって・・・夢とまったく同じだ。蒼井が俺の代わりに攻撃を受けてけがをした。その瞬間あの夢が頭の中でリプレイされる。

 恐い。それは俺の恐怖心を倍増させた。

 蒼井はというと床に倒れ込んだ。だがまだ死んでないだろう。一條は俺に向けて爆発を放ったのだから、一條は手加減しているはずだ。だが、蒼井はかなりのダメージを受けている。俺が蒼井に近づこうとしたら、俺より先に一條が蒼井に詰め寄っていた。

「死ねよ。コードナンバー003」

 そう言って一條は蒼井のほうへ手を向けた。

 どうすればいい?俺はどうすればいいんだよ。何をすれば良いんだよ。何をすれば蒼井を助けられるんだよ。

「蒼井!」

 俺は叫んだ。その後、一條は手を光らせた。だが、それよりも早く、俺の手が蒼く光っていた。その光はまっすぐ一條のほうへ直進していく。ものすごいスピードだ。そしてその光が一條にぶつかった。一條はそのまま後ろへと飛んでいった。そして壁にぶつかった。

 一條は気を失ったようだ。

 だが俺にとってそんなことはどうでも良かった。

「おい、蒼井!」

 今の俺は蒼井のことしか考えられなかった。

「どうしたの?はやて?」

「え、蒼井・・・お前、一條の攻撃を・・・」

「受けたよ。それももろに」

 蒼井は平然としていた。体は傷だらけなのに。

「痛くないのか?」

 俺は問いかけた。だが普通に考えて痛くないわけがない。そんなに傷を負って痛くないわけがない、なのに蒼井は・・

「大丈夫だよ」

 そういって俺の方を向いて笑った。

 良かった。とりあえず俺は安心した。なぜ痛くないのか。そんな疑問はあったがとりあえず安心した。

「お前、家はどこなんだ?帰れるのか?」

「ちょっと難しいかも。でもさ、ここの近くに知ってる人がいる家があるから今日はそこに行こうと思ってる」

「送っていくか?」

「そうしてくれるとありがたいかも」

 というわけで俺は蒼井を送っていくことになった。

 今は午後8時位なのですごく暗くなっていた。

「なぁ蒼井、俺が出した光ってもしかして・・妖精の力なのか?」

「おそらくね」

「だけど、なんでお前や一條と違って俺は白い光じゃないんだ?それに爆発じゃなくて光りそのものが一條に当たったし?」

「それは特別な妖精なんだと思うよ」

「特別な・・妖精?」

「うん、そもそも妖精って言うのは3種類に分けられるの。私やさっきの一條蓮みたいな爆発系、水や火とかの五大元素を操るタイプ、そしてあなたのような特別なタイプ」

「特別な妖精の力を持つやつは俺の他にいるのか?」

「1人だけいる。だけどその人は行方不明だし、生きているかすらもわからない」

「そっか」

 ほんと現実味のない話だ。爆発を起こせる妖精、五大元素を操れる妖精、そして特別な妖精。そんなのがいるのならば妖精使いになった人間は爆発はもちろん、水で人をおぼれさせて殺すことも、火で人を焼き殺すことも、地震を起こして人を殺すことも、空や風を操って何ができるのかはわからないが俺が思いつくだけでもこんなに残酷なことが出来る。

 それならば特別な妖精の力を持っている俺はもっと残酷なことを出来るのではないのか?

 そう思うと自分が恐くなってきた。

「そんなに深く考えない方が良いよ」

 俺は顔に出してしまったのだろうか。蒼井は俺にそう言ってきた。

「そうだな」

 それから、俺と蒼井は特に何も話さず、蒼井の知人の家まで歩いていった。

 俺の家を出て15分程度歩いたところで蒼井の知人の家に着いた。

 大豪邸・・とまではいかないが、結構大きな家だ。

「ねぇ、ちょっとよってかない?」

「は?だってここ、お前の家じゃないんだろ?」

 蒼井の予想外の言葉に俺の声が少し裏返った。

「いや、でもさ、話したいことが色々あるし」

「そんなの学校じゃ駄目なのか?」

「実はさ、ここ・・私が入ってる組織の本部なんだよね」

 蒼井は少しためらってからそう言った。蒼井が入っている組織とは・・もしかして妖精が関係しているのだろうか。

「妖精絡みの組織か?」

 蒼井は頷いた。確かにその組織の本部なら蒼井よりも妖精に詳しい人がいるかもしれない。だけど・・

「その組織に俺を入れさせる気か?」

「それは・・」

「まぁいいや。それで中に入っても良いのか?」 

「え・・良いの?」         

 組織には入りたくない。だが妖精のことは知りたい。だから俺はとりあえず中に入ることにした。

 蒼井と一緒にその本部に入った。中も結構広くて、また、かなり良い雰囲気をだしている。

「こっち」

 蒼井は俺を案内する。そしてとある部屋に俺たちは入った。

 そこには大学生くらいの女と俺と同じくらいの男がいた。

 女は短い茶髪で「美しい」という第一印象を持たせるような人だ。

 男のほうは俺の学校と同じ制服を着ている。それを見ると俺と同じ学校なのだろう。だが見たことの無い顔なので1年生か3年生だろう。

「あれ~蒼井ちゃん、その子は彼氏?」

 女が蒼井をからかうように言った。

「ち、違いますよ。由紀さん!」

 蒼井は必死に否定した。その顔がかなり赤くなっていてなんかすごくかわいい。おっと、危ない。危うく妄想モードに入るところだった。

「それじゃあ何なの?その子は」

「まだ確信は持てないけど・・たぶんリアの力を宿している妖精使いだと思っています。」

 蒼井がそう言った瞬間、女の目の色が変わったような気がした。

「あなた、名前は?」

「俺ですか?俺は如月はやてです」

 俺は偽名のほうの苗字を言った。「如月」俺はいつもそう名乗っている。

「如月はやて君ね、私は音無由紀。よろしく」

「よろしくお願いします」

「さっそくだけどそこの椅子にすわってくれるかな」

 由紀さんは色々な機械が置いてある椅子を指さした。

「わかりました」

 俺は言うとおりにその椅子に座る。

「そこにあるヘッドフォンを付けてくれるかしら」

 俺は目の前にあったヘッドフォンを付ける。

「少し、目をつむってくれる?」

 俺は言われたとおりに目をつむる。

 そうするとリアが出てきた夢、蒼井が殺される夢、その前の日の夢も頭の中によみがえってきた。


「もういいわよ」

 そう言われたので俺は目を開けた。

「何をしたんですか?」

「君の最近の夢を見させてもらった」

「えっ」 

 人の夢を見た?なんだそれどこの科学機関の技術だよ。

「あなたは確実に妖精使いになっているわ」

「そう・・ですか」

 俺は半分諦めていた。だから、俺はそれを真に受けることができた。

「俺は・・殺されるんですか?」

 俺は一番恐れていることを聞いた。

「えぇ、確実に狙われるわ。そして殺される」

「ちょっと、由紀さん!」

 蒼井が由紀さんを怒るように言った。

「良いよ、蒼井」

 今はその状況を抜け出せる解決法を見つけ出したかった。どんな状況でもその状況を抜け出せる解決法はある。俺にとってのとある恩人が言った言葉だ。それに由紀は話を続けた。普通ならこんなことを本人には言わない。そんなことを言うのならば何かを知っているのだろう。その解決法を・・

「恐い?」

 由紀が俺に問いかけてきた。そんなの、恐いに決まっている。自分が殺されるかもしれない?そんなことを聞いたら誰だって恐くなる。俺だって例外ではない。すごく恐い。

「当たり前じゃないですか」

「そうよね。なら私たちが守ってあげようか?」

「守る?」

「そうよ、私たちがあなたを狙うやつらから守るの」

 俺の頭の中は最初、何を言ってるのかわからなかった。だが少し考えたらすぐに解が出てきた。

「組織に入れ。ということですか?」

「結構鋭いじゃない」

 予想的中だった。ただで守る。全く「無関係の人間」を守るという行為はこの人達は行わないはずだ。だがそれが「無関係な人間」ではなく「仲間」だったらどうだろうか。絶対に守るだろう。そう考えれば単純だった。

「でも・・」

 だができれば俺は組織になんて入りたくなかった。一條のように人を襲わなければいけない。そう考えているからだ。

「でも、ほかに方法は無いわ。それともあなたは死にたいのかしら?」

 理不尽すぎる。生きるには選択肢はひとつしかないのか・・・

「わかりました」

 俺がそう言った途端、今まで無言だった男が1枚の紙を取り出してしゃべり出した。

「俺はブルーバード、コードナンバー005の大庭満です」

 契約書だろうか。俺にその紙を差し出した。

「ここにサインを」

 紙と同時に1本のボールペンを差し出した。ここにサインすれば俺は組織の人間だ。それが確定する。どんなことをさせられるかわからない。なのに俺はサインして良いのか?

「あの・・この組織は具体的にどんなことをするんですか?」

「妖精の力を悪用した人間を倒す。ってところかな」

「それじゃあ、俺がこの組織にいなくてもあなた達は俺のことを守ってくれるんじゃないんですか?」

 始めから、気になっていた。組織の仲間でもない俺をなぜ蒼井は助けたのか。それが不思議だった。妖精の力を悪用する人間を倒すのならば、悪用した人間に殺されそうになった人間を守るのと同じ事だ。

「追いつかない。かもしれない。何せ君はほとんどの妖精使いから狙われる。おそらく君の妖精がリアだってことが広まったら1時間に3回のペースで襲われるわ。その点、いつもあたし達の近くにいるのであれば問題ない。相手も集団でいたら困るからね。」

「納得のいかない理由ですね」

 俺が危ないと感じたのならすぐ蒼井に連絡すれば良い。俺だって妖精使いだ。時間稼ぎくらいならできるはずだ。

 そう考えたところで部屋のドアが開ける人物がいた。

「平井誠一」

 その人物はとある男の名前を言った。平井誠一この名前に俺は聞き覚えがあった。この人は俺が偽名を使っている理由に深く関わる人だ。まぁこのひとに「如月」と名乗れと言われただけなのだが・・・

「なんで誠一さんの名前が出てくるんですか?」

 俺は部屋に入ってきた俺より少し背の高い25歳前後くらいの男に問いかけた。

「やはり、誠一が拾った子か」

 そう、俺、如月はやて・・もとい平井はやてはもともと孤児院にいた。だが、5、6歳の頃に平井誠一という男に拾われたその時の俺はまだ名前もなかった。いや、あったのかもしれないがそれを知っている人はいなかったのだ。誠一さんはその時20歳前後だった。かなり若かったので孤児院の人は俺を誠一さんに渡すのはかなり考えさせられたそうだ。その後、小学1年からは普通に学校に通った。そこで実樹と知り合ったのだ。その後も普通に小学校生活を送り、卒業式にも出た。小学校の卒業式には誠一さんも出席していた。もちろん中学校にも通った。だが、その卒業式には誠一さんは現れなかった。その日、俺と誠一さんが住んでいた家に帰ったが誠一さんの姿はなかった。近所の人が捜索願いを出してくれたのだが結局見つからなかった。だがその数日後、何者かの骨が近くの山で見つかった。その骨は誠一さんのではないのかということになり結局その骨は誠一さんのであると言うことで収まった。

 俺はその骨を1度だけ見せてもらったことがある。だが、その骨が誠一さんの物とは俺は思えなかった。それがなぜなのかそんなことは全くわからなかった。その後、俺のもとにはかなりの額の保険金が入ってきた。今はその保険金で生活しているというわけだ。

 だがその誠一さんをなぜこの人は知っているのだ?

「気にならないか?なぜあの誠一が死んだのか。もちろん、誰かに殺されて骨などを山に捨てられたわけではない」

「知っているのですか?」

「いや、死因は知らない、それにまだ生きているかもしれない」

「だったら何で誰かに殺されたわけではないということがわかるのですか?」

「誠一に会ったからだ。その事件でこの辺りが騒がれていた頃に」

 ダメだ。ついて行けない。認めたくはないが誠一さんはもう死んでしまっている。その死因が誰かに殺されたというのも認めたくはないが諦めていた。だがこの男が嘘をついているようにも見えない。

「ちなみに、誠一は元ブルーバードのリーダーだ」

「え・・・」

 誠一さんがこの組織のリーダーだと・・

「そんなわけあるわけないだろがッ!」

 俺は思わず叫んでしまった。誠一さんが妖精に関わっているわけがない。そうであって欲しい。

 だが、俺の言葉を全く無視して男は話を続けた。

「誠一が行方不明・・もしくは死んだ理由は妖精が関わっている可能性が高い」

「俺がこの組織に入って、戦っていけば誠一さんについてもわかるかもしれない、と言いたいのか」

「ああ」

「わかった。入ってやるよ」

 そう言って俺はさっき渡された紙にボールペンで書き殴るようにサインした。

「よし、では君にブルーバード、コードナンバー002の称号を与えよう」

 男は静かにそう言った。

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