夢の中で合いませんでしたか?
「おーい、はやて、起きろー」
俺は外にいる幼なじみの声で起きた。
「なんだ、夢かよ」
そうだな、夢ならなんでもアリだからな。それにしてもなんて変な夢なんだよ。妖精使いとか、あの男とか。というかあの少女の名前はなんというのだろう?なんで夢の人間の名前なんて気になるのだろうか?
そう思って俺は時計を見た。
時計は「AM8:00」と表示されていた。俺の学校の登校時刻は八時十分だ。
「やべぇ、100%遅刻じゃねぇか!」
「ん、はやて起きたぁ?」
外から幼なじみの声が聞こえる。
「おい、実樹、お前だけ先に行ってろ。お前も遅刻するぞ」
「ん、わかった。はやてもはやくしなよ」
「わかって。」
実樹はそう言って学校のほうへ走っていった。
実樹は長い髪をポニーテールにまとめていて、結構整った顔立ちをしている。また、並の女性より胸が大きい。だが夢に出てきた少女よりは全然違う雰囲気を出している。
俺も5分程度で支度して学校に走っていった。俺の家から学校まではそう遠くない。走れば間に合うかも知れない。そう思って走り続けた。
結果的に遅刻だったが・・・
実樹はセーフだったのだろうか?あいつは足が相当速いから、たぶんセーフだったんだろうな。と俺は推測しながら教室に入った。
うぅ。やはりこの時間に教室にはいるとクラスメイトの視線が集まるなぁ。まぁ当然の事だが。なんて思いながら俺は自分の席へと向かう。
自分の席に着いてからは視線が少なくなり、いつも通りのHRに戻った。その後も特に何もなくHRが終わった。いつもの事ながらHRが終わったと同時に教室が騒がしくなる。
「久々に遅刻したな、はやて」
俺の所に来た俺の親友、五十嵐慎が話しかけてきた。
「二週に一回遅刻するやつに言われたくない!」
俺はてきとうに返事をした。こいつはクラス一遅刻する確率が高いやつだ。学校中でもトップクラスらしい。
「お前はクラスメイト達の視線は平気なのか?」
「最初は辛かったな。だがもう慣れた!」
「なんだ、そりゃ」
「ていうか、そんなことはどうでも良いんだよ」
「何かあったのか?」
俺は遅刻してるためあたりまえだが、HRの前にどんなことがみんなの話題になったのかというのは全然分からないのだ。
「2―4に転入生が来たんだよ」
「へぇ~でその子はかわいいのか?」
転入生と聞いたら俺は真っ先にそれが気になった。健全な男子高校生なら分かってくれるだろう。俺もその健全な男子高校生なのでかなり気になったので慎に聞いてみた。
「それがめちゃくちゃかわいいってうわさなんだよ」
「ほぉ~それはかなり興味深いな」
「だろ。そんで今からその転入生を見に行こうと思うんだが一緒に行くか?」
「同行しよう」
そう言って、俺と慎は2―4へと向かった。2―4の周りにはかなりの人だかりが出来ていた。それも8割くらいは男子だ。みんなその転入生が目的だろう。そんなことを思いながら俺と慎もその人だかりの中に入っていく。
「あの人じゃないのか」
俺は慎が指を指した方を見た。そこにはほかの女子とは全然違う雰囲気を出しているてすごいかわいらしい少女が座っていた。
「ほんとにかわいいな」
俺がそういうと慎も同感なのか「うん、うん」と頷いていた。
彼女はただ席に座っているだけで特に何もしていない。彼女の席の周りには男子達がいるが彼女は彼らの話を軽く受け流している。
それにしても彼女は魅力的だ。顔もすごく良いが彼女を目立たせている一番の理由は彼女が持っている長い黒髪だろう。彼女はその髪を結んでいる様子もなくおろしている。彼女が立ったら腰まで髪が届きそうだな。
まてよ?長い黒髪?
何だよそれ、長い黒髪の少女って・・・俺は確認するために彼女のことをよく観察した。やはりそっくりだ。そっくりというより同一人物にしか見えない。俺の頭の中で一瞬にしてあの夢がよみがえってきた。すごく残酷なあの夢忘れたかった夢がよみがえってきた。
「どうかしたのか、はやて?」
慎が俺の顔をのぞきこむようにして問いかけてきた。こうゆう時は一応心配してくれるんだな。
「ああ、問題ない」
俺は慎に返事をしてから考えた。
(どうする?あの子に話しかけるか?それともこのまま何もしないで教室に戻るか?でもこんな偶然があるわけないだろ。あの子は何かしら俺の夢と関係あるはずだ)
そう思って俺は行動に移した。
「なぁ、慎、転入生の名前は?」
「え、名前?確か真白蒼井だったと思う」
「わかった。真白蒼井だな。サンキュー」
一応慎に礼を言ってから俺は真白蒼井の席へと向かった。この時俺は真白蒼井と何を話すのか?そんなことまったく考えていなかった。ただなんとなく動いていた。
「おい、はやて、どこ行くんだよ」
「真白蒼井のとこ」
俺は慎に言ったとおり真白蒼井の席へとむかった。彼女の席は窓側の一番後ろだ。俺は毎回席替えの時はあの位置を狙っている。なぜならば一番教師の目に付きにくいからだ。教師の目に付きにくければ、教師に「ここを読め」とか「ここの答えは何だ」とか言われにくくなる。そういう理由で俺は毎回席替えのくじを引くときに神に祈るのだが一度もその席を引き当てたことない・・・そんな俺に比べてなんであいつは最初からあの席なんだよ。そんなことを思いながら俺は真白蒼井の席に歩いていった。
「おい、真白蒼井!」
おれは真白蒼井の席に着いたとたん彼女の名前を叫ぶように呼んだ。
だが俺も周りにいる男子達と同じく軽く受け流された。まぁこれは想定内の出来事だ。俺も「下心がある男子」と見られているのだろう。この出来事は想定内だったがこの場合の対処法なんてものは考えてなかった。なんか真白蒼井以外の人間にも変な目で見られてるぞ・・・まぁ人の席に言って勝手にその人の名前を叫ぶかんじで呼んだんだからな。
(何でも良いから話を進めないと精神的なダメージがぁ!)
どうすれば良い?考えろ。あの夢で何が起きた?何かキーワード的な言葉は無かったのか?あ、あの男が言った言葉があるじゃんか!
「おい、妖精使い!」
彼女の肩がビクッと揺れた。
よし、反応したぞ!だが周りの連中は相変わらず変な目で俺を見てるな・・・そりゃあ妖精とかメルヘンチックなことを言ったら誰でもそんな目で見るよな。あの夢からはメルヘンチックなんて言葉は連想できないけど。
「何よ、用があるならさっさと言いなさい」
あの夢の時は全然意識しなかったけど声もすごくきれいだな。一般の女性よりは少し高くて透き通った感じの声だ。彼女には欠点があるのだろうか?ふと疑問に思った俺は改めて彼女を観察した。うーん、しいて上げるなら胸が小さいところかな。
「おい、話しかけておいて無視はないだろ」
彼女がまた話しかけてきた。そういえば俺は何をどう話すか全然決めてなかったんだよな。どうする?とりあえず妖精とかそういうメルヘンチックな単語が出てくる話をみんながいるところでしたくはないから場所を変えよう。
「質問がある。一緒にきてくれるか」
「わかったわ」
彼女も俺に何か聞きたいことがあるのかわからないが、あっさりOKされた。俺の予想では拒否されるとおもったのだが。まぁことがスムーズに進むのは逆に良いことか。
そういことで俺たちは屋上に来た。なんで屋上なのかって?こういうのの定番は屋上かなと思っただけだ。
「で、あんたは何なのよ?」
「何でお前が俺に質問する!逆だろ、逆!」
「良いから答えなさい。あんたは何なの?」
「何って普通の高校生だけど」
それにしてもこいつはなんて意味不明な質問をするんだ。高校にいるんだから高校生に決まってるだろ。
さっきから思っていたのだがこいつ、夢の時と雰囲気が全然違うな。夢の時のこいつはなんというか、守ってやりたくなるような雰囲気だったのだが。
「別にあんたに高校生かどうかなんてきいてないわ」
「じゃあ、何を答えれば良いんだよ」
「なんで妖精のことを知ってるかってっこと!」
彼女は叫ぶように俺に問いかけてきた。そんなに重要なことなのだろうか?あの夢が現実となにか関係あるならものすごく重要だけど。なんたって人の命が関係してるんだから。
「俺は妖精のことなんか全然知らないよ。俺が知ってるのはお前が妖精使いだって事だけだ」
「じゃあなんで私が妖精使いだって知ってるのよ」
「夢に出てきたんだ」
「何が?」
「お前がだよ」
「はぁ!?」
彼女はすごく驚いた。という様子を見せる。まぁ誰だって見知らぬ人の夢に自分が出てきたと聞いたら驚くだろう。おそらく俺だって驚く。それは当たり前のことだ。
「なんであんたの夢に私が出てきたのかは知らないけどまぁ良いわ。それで、なんで私があんたの夢に出てきたら私が妖精使いだってわかるのよ」
「お前が夢の中で襲われてた。その襲っていた男の一人がお前のことを妖精使いってよんでた」
「えっ」
彼女はまた驚いたという様子を見せた。今度はその理由がわからない。だがさっきの「驚いた」と今の「驚いた」は微妙に違うような気がした。どこがどう違うのかはわからないが。なんとなくそう感じた。
「それは間違ってない?」
「どういうことだよ」
俺は真白蒼井に聞き返す。意味が分からなかった。何がどうちがうのか。全然分からなかった。
「本当に私が襲われてたの?」
「あぁ」
「あなたが襲われたんじゃなくて?」
まただ。さっぱり意味が分からない。あの時襲われてたのは確実に真白蒼井だった。
そもそもなんでこいつは俺の夢について指摘できるんだ?自分が見ることが出来ない人の夢の内容のことを「それは間違ってる」なんて指摘できるわけがない。それとも妖精使いというのは人の夢を見ることが出来るのか?
「答えが導き出せないなら質問を変えるわ。私はあんたの夢の中であんたの事を守らなかった?」
「1回だけ、俺の代わりに銃で撃たれて、俺のことを守った」
「やっぱり、それは私が襲われたんじゃない。それはあんたが襲われたの。そんなあんたを私は助けただけよ」
何でだよ?何で俺の夢のことを語れるんだこいつは?おかしいだろ。こんなこと普通の人間ができるわけがない。いや、妖精使いは普通の人間じゃないか。それならやはり妖精使いの力が関係してるのか?それなら全てが繋がる。一応本人に聞いてみるか。
「ちょっと待てよ。妖精使いってのは人の夢を見られるのか?」
「そんなことできないわ。妖精の力は戦うことにしか使えない」
は?なんでだよ。じゃあ何でこいつは俺の夢について語れるんだ?俺の頭の中で繋がりかけていた物が原点に戻った。
「じゃあ何で俺の夢で起こったことについてお前がなにかしら語れるんだよ」
「それは・・・」
がちゃ、突然屋上のドアが開く音がした。誰だ?嫉妬してる男子達か?そういえば男子達のこと考えなかったな。みんなこいつに話しかけても受け流されてるのに俺だけあっさり話してもらえるんだもんな。ていうか何で屋上とかありきたりな場所がばれなかったんだろうか?ただ単に奇跡でもおきたのかな?そんなことを思っていたらドアを開けたやつが出てきた。顔はまだ見えないが集団じゃないらしい。それだけで俺はほっとした。1人だったらまだしも、2人以上の集団だったら確実に半殺し決定だ。男の嫉妬は女の嫉妬のようにめんどくさくないが、肉体的ダメージが半端ない。だが出てきたやつは男でもなかった。そこに居たのは意外な人物だった。
「実樹!」
「ん、はやて、それに転入生!」
「何しに来たんだよ?」
「特に意味はないよ。ていうかはやてこそどうしたの?まさか転入生とあんな事やこんな事を・・・」
「「違う!」」
俺と蒼井の声がハモった。こいつも必死に誤解をとこうとしている。とうの実樹は笑っている。
「ごめんね~2人の邪魔しちゃって。すぐに出て行くね。あ、ついでにはやてのこと探してた男子達にはやては食堂にいたよ。ってうそついとくね」
「だから、やましいことは何もしてないって」
「はいはい。」
そう言って実樹は屋上から出て行った。 まったくあいつは・・・
そうして俺は蒼井との話を再開させようと蒼井のほうを見た。その蒼井は顔を真っ赤にしている。
「この変態!」
「何でそうなる!」
俺は「何もしてないだろ」と続けて言おうとしたが、不意に蒼井の顔に見とれてしまった。顔を真っ赤にして俺のことをにらんでるつもりなのだろうが、俺には顔を真っ赤にして上目遣いで俺のことを見つめているようにしか見えない。
この顔を見てときめかない男子高校生はいないと思う。ていうかこのシチュエーションだったら二人きりなんだしこいつのことを押し倒すやつもいるかもしれない・・・
あ、もちろん俺はそんな事しないが・・・押し倒す、押し倒さないはどうでも良いとして今の蒼井はめちゃくちゃかわいい!もちろんこんな事は口に出していえないが。
キーンコーンカーンコーン。とここでチャイムが鳴った。
「やばい時間だ」
今のは予鈴だから急げば間に合うだろう。さすがにHRにも授業にも遅れるというのはまずいだろう。もちろん授業をさぼるというのも。授業が終わってから教室にはいるときまたあの嫌な視線を浴びせられるからな。
「お前も急げよ、蒼井」
「はぁ?何で勝手に人のこと下の名前で呼んでるのよ」
「じゃあ、真白って呼べばいいのか?」
「い、いや蒼井で良いわ」
それほど恥ずかしいのだろうか?蒼井は声を小さくして言った。
「じゃあ、俺のことははやてって呼べよ、蒼井」
「わ、わかった」
「それじゃ」
その後、授業には間にあったものの男子達の殺意のある視線がかなり痛い。これだけだが良いのだが・・・やめてくれよ。精神的なダメージだけでなく肉体的なダメージを与えるとかやめてくれよ。なんだろう?いつまでたっても男子達の殺意がある視線が途絶えない。もう授業は始まってるのにどうしてだよ。そんなに俺が羨ましいのか。まぁ蒼井はかなりかわいいからな・・・もちろん本人にこんなことは言えないが。
俺はそんなことを思いながら男子達の視線を受け流して、蒼井と話してわかったことをノートに書いてみようと思った。それから何かわかるかも知れないと思ったからだ。そう思い俺はペンを持って聞けたことを箇条書きにして書いていく。
・妖精の力は戦いにしか使えない。
・蒼井は実樹と違って純情である。
やべぇ!この2つしかわかったことがない。
てか、下の1つはどうでも良いから実質1つじゃん!
いや、でも下の情報は蒼井攻略には重要な情報だな。焦って押し倒したりしたらいけないからな。
おっと、今は真面目なことを考えるべきだな。あの夢が現実と関係あるなら、あんな残酷なことが現実で起きているのかもしれないのだから。いやそれ以上のことだってあるのかもしれない。深く考えすぎかもしれないが、あの夢のように簡単に爆発が起こせるような力があるなら戦争に使われるかもしれないのだから。いや、もう手遅れで戦争に妖精の力を応用して使われてたりするのかもしれない・・・
いや、深く考えすぎだ。そもそも戦争に使われてるなら俺が出来ることは何もない。戦争まで行かなくてもあの夢のようなことでも、そんな殺し合いを止めるなんて事俺には出来ない。そんなのに巻き込まれるのは絶対にいやだ。俺にはそんな残酷なことが現実で起きてないことを祈るしかない。というか妖精使いのことに俺は足を踏み入れて良かったのだろうか?それだけで殺されるとかありえないよな。
そんなことを考えたら俺の頭はものすごい恐怖心で覆い尽くされた。だめだ、恥ずかしいがすごく怖い。足を踏み入れて良いのかはわからないが蒼井に詳しく聞くのが一番早いだろう。
そうして俺は慎が話しかけてくるのを振り切って休み時間のたびに2―4に行ったがあいにく蒼井のことは男子が囲んでいて俺が入るスペースがなかった。入ったとしても数人に半殺しにされるだけだ。そう思い今日は諦めた。明日になれば少しくらいは人数が減るだろう。
今日はそのほかに何もなく、帰りのHRが終わった。
俺はいつも実樹と帰る。家が近いというのが一番の理由だろう。実樹もそこそこ美人のためこの学校に通い始めた頃は男子の視線が痛かった。そういう視線には慣れてると思ってたのだがまだまだのようだな。
「ねぇ、はやてホントは屋上で転入生と何してたの?」
「あんな事やこんな事だ」
「えぇ!ホントにしてたの?」
「嘘にきまってるだろう」
そんな話をしながら俺と実樹は帰った。




