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『婚約破棄された元社畜OL、推し顔の美少年を保護。コスメ錬金で貢いでたら最強ネフィリムに成長し極大の愛で溺愛されています』  作者: 月神世一


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限界オタク、タローマンで推しの着せ替え(リアル)に狂う。~そして出会う、25歳独身ケンタウロス娘~

限界オタク、タローマンで推しの着せ替え(リアル)に狂う。~そして出会う、25歳独身ケンタウロス娘~

「キッドくん! あなた、いくらなんでもその服はボロボロすぎない!?」

翌日の朝。

ポポロ村の宿屋で目覚めた私は、キッドくんの姿を見て思わず叫んでいた。

昨日、リキ兄貴の【聖雷・鉄拳制裁】を食らったせいもあるだろうが、彼の着ている服はあちこちが破れ、ほとんど布の切れ端のような状態になっていた。

国宝級の美顔と美しい白黒の片翼があるから「退廃的な美」として成立しているものの、限界オタクとして推しの身だしなみを見過ごすわけにはいかない。

「別にいいだろ。俺はネフィリムだぞ。いつ誰に襲われるかもわからねぇのに、着飾ってどうすんだよ」

「ダメ! 推しには常に最高のSSR衣装おべべを着ていてもらわなきゃ! ポポロ村には何でも揃う神のお店があるって聞いたわ。さあ、行くわよ!」

「ちょ、引っ張るな! わかった、わかったから!」

私は抵抗するキッドくんの手を引き、村の中央にある巨大な建造物へと向かった。

そこは、ルナミス帝国の創設者(転生者)が『100円ショップの概念』スキルを暴走させて作り上げたという、超大型ホームセンター兼アパレルショップ――その名も『タローマン』である。

「うわぁ……本当に何でも売ってる……!」

店内に入ると、そこは完全に前世の大型ショッピングモールだった。

ガテン系職人向けの頑丈な作業服から、冒険者用の魔導防弾チョッキ、さらには王都の貴族が着るようなフリルのついた最新の私服まで、ありとあらゆる衣類がずらりと並んでいる。

「よし、キッドくん! 今日は私の全財産(錬金術で稼ぐ予定)を懸けて、あなたを世界一輝かせるわ! 着せ替えゲーの始まりよ!」

「きせかえげー……? おい、マジでやめろ、俺は適当な服でいいから――」

「はい、まずはこれ! 『漆黒の魔導タクティカルジャケット』! ノワールの羽の色と絶対合う! 次はこれ、『白銀のアーマーベスト』! ルクスの羽の神聖さを際立たせるわ! あ、こっちの『王道ファンタジー風・白シャツとサスペンダー』も捨てがたい……っ!」

私は両腕に抱えきれないほどの服を持ち、半ば強引にキッドくんを試着室へと押し込んだ。

数分後。

カーテンがシャッと開き、新しい服に着替えたキッドくんが出てきた。

「……どうだ?」

黒を基調とした細身のパンツに、白いシャツ。その上から、機能性とデザイン性を兼ね備えたタクティカルジャケットを羽織っている。

背中のスリットからは、白銀と漆黒の美しい羽が絶妙なバランスで覗いていた。

少し恥ずかしそうに視線を逸らしながら、私の反応を窺う推し(顔)のネフィリム。

「……………………ッ!!!!」

「お、おいセシリア!? なんで黙るんだよ! 似合ってねぇなら脱ぐぞ!」

「尊いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!!!」

私は両手で顔を覆い、その場に崩れ落ちた。

やばい。顔がいい。スタイルがいい。着ている服のポテンシャルを1200%引き出している。完全にアイドル雑誌の表紙だ。推しの私服グラビアだ。

前世で、朝倉月人くんのブロマイドに何万円も課金していた私だが、今、目の前で推し(顔)が私のお見立てした服を着てくれているのだ。

こんなの、実質無料どころか私がボーナスをもらっているようなものではないか。

「最高! 最高よキッドくん! 今の姿を網膜に焼き付けて永久保存したい! はぁっ、次はこっちの服も着てみて! お願い!」

「だーっ! だから俺を着せ替え人形にするなッ! 恥ずかしいだろ!」

顔を真っ赤にして怒るキッドくん。

その照れた顔も最高に可愛い。私は完全にタローマンの中心でオタクの歓喜を叫んでいた。

「ふふっ。随分と楽しそうですね。でも、店内であまり騒いではいけませんよ」

その時。

カパッ、カパッ、と硬い蹄の音を響かせながら、一人の女性が近づいてきた。

上半身は豊満な胸と美しい顔立ちを持った人間の女性。しかし、下半身は艶やかな毛並みを持つ馬の姿――ケンタウロス族だ。

彼女の背中には、物騒極まりない巨大なパイルバンカー式のシールド『アグニ』が背負われている。

「あっ、すみません! ついテンションが上がってしまって……」

「構いませんよ。私はポポロ村自警団のリーダー、マンミアと言います。見ない顔ですね。冒険者の方ですか?」

生真面目そうなマンミアさんは、私と、そして試着室の前に立つキッドくんを交互に見比べた。

そして、ふっと口元を綻ばせる。

「なるほど、そちらの若い彼氏さんの服を選んでいたのですね。16歳くらいでしょうか? 若くして結ばれるなんて、本当に素晴らしいことです」

「えっ!? か、彼氏!?」

「ち、ちげぇよ! 俺はこの女に拾われただけで……っ!」

キッドくんが慌てて否定し、羽をバタバタとさせている。

私もぶんぶんと首を横に振った。

「違います違います! キッドくんは私の尊い『推し(保護対象)』であって、そんな不敬な関係じゃありません! 私はただ、推しに課金(投資)しているだけのしがない限界オタクで――」

「えっ……違うんですか? あぁ、よかった……」

マンミアさんは、なぜか心底ホッとしたように胸を撫で下ろした。

そして、突然その美しい顔に、どんよりとした暗い影を落とした。

「はぁ……。そうですか、違いましたか。……いいですよね、16歳。一番輝いている時期です。それに比べて、私はもう25歳……」

「えっ?」

マンミアさんは、パイルバンカー付きの盾をガチャンと床に置き、ズーンと落ち込んだオーラを放ち始めた。

「アナスタシア世界では、16歳で成人、20歳までに結婚するのが常識。それなのに私は、村の平和を守ることに夢中で、気がつけば25歳……。ケンタウロス族の誇りであるこの背中には、まだ一度も未来の旦那様を乗せたことがありません……」

ポロリ、とマンミアさんの目から涙がこぼれる。

「25日を過ぎたクリスマスケーキは、半額シールを貼られます。私は……私はもう、半額以下の売れ残りケンタウロス娘なんですかァァァッ!?」

「マ、マンミアさん!?」

突然の号泣に、店内のお客さんたちがギョッとして振り返る。

しかし、私は彼女の叫びを聞いて、居ても立っても居られず、彼女の手を両手でガシッと握りしめていた。

「マンミアさん! 泣かないで! その気持ち、痛いほどわかります!!」

「えっ……?」

「実は私……こう見えて、前世の記憶も合わせると25歳なんです! おまけに昨日、理不尽に婚約破棄されたばかりのバツ付き(未遂)ですよ!」

「ほ、本当ですか……!?」

私は熱い視線でマンミアさんを見つめ返した。

「25歳が売れ残り? 半額シール? ふざけないで! 25歳は女の黄金期、大人の魅力が一番輝くピークじゃないですか! クリスマスケーキがなんだって言うんですか、私たちは最高級のシュトーレンです! 日が経つほどに味が染み込んで美味しくなるんです!!」

「セシリアさん……ッ!!」

「それに、マンミアさんのその艶やかな毛並み! 凛とした立ち姿! こんなに美しい自警団長さんを放っておくなんて、この世界の男たちは全員節穴です! 私が男なら、今すぐその背中に乗せて婚姻届を叩きつけてます!!」

「あぁっ、セシリアさぁぁぁぁんッ!! ありがとうございます、私、私、元気が出ましたぁぁっ!」

「マンミアさぁぁぁぁんッ!!」

私とマンミアさんは、出会ってわずか数分で、国境も種族も越えた熱い抱擁を交わしていた。(※ケンタウロスなので、私が彼女の首に抱きつく形だが)

25歳独身という重い十字架を背負う者同士、言葉にしなくても伝わるソウルがあった。

「……………………なんなんだ、この村の女は」

その光景を試着室の前で見ていたキッドくんは、呆れたようにジト目を向けていた。

しかし、その瞳の奥には、確かな安堵の光が揺れていた。

これまでの彼の人生で、ネフィリムである自分を見て、平然としている者など一人もいなかった。

だが、この自警団長のマンミアという女性は、キッドの白黒の羽を見ても、一切顔色を変えなかった。それどころか、ただの「若い彼氏」だと勘違いし、自分の婚活の悩みを泣きながら打ち明けている。

(……誰も、俺を恐れない。俺を、バケモノ扱いしない)

ポポロ村の住人が大らかなのか、それとも、目の前でケンタウロスと抱き合って「私たちはシュトーレンよ!」と叫んでいるこの変なセシリアが、周囲の空気を変えてしまっているのか。

「……ふっ」

キッドは、無意識のうちに小さく笑みをこぼしていた。

真新しいジャケットの袖を握りしめる。

上質な生地の感触は、セシリアが自分に向けてくれた無償の愛情のように、ひどく温かかった。

「おい、セシリア。いつまで馬と抱き合ってんだ。……早く、他の服も選んでくれよ」

照れ隠しのようにそっぽを向きながら、キッドがそう呟いた。

私はハッとして振り返り、オタクの満面の笑みを浮かべた。

「もちろんよ! さあ、タローマンの在庫が尽きるまで着せ替えゲーの続きをやるわよ!」

こうして、私とマンミアさんという強力な味方(?)を得たキッドくんは、ポポロ村での新しい生活に、少しずつ、だが確実に自分の居場所を見つけ始めていた。

だが、この時の私はまだ気づいていなかった。

「推し活」として軽率に愛情と服を注ぎ込みまくった結果、この気難しくて可愛いネフィリムの少年が、やがて手のつけられないほどの『激重な執着』を私に向けるようになるということに――。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

「タローマン、品揃え良すぎww」

「25歳はクリスマスケーキじゃない、シュトーレンだ!(名言)」

「キッドくん、少しずつデレてきてる……可愛い!」

と少しでも楽しんでいただけましたら、

ぜひページ下部の 【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】 にして評価をお願いいたします!

(※星をタップするだけで簡単に応援できます!)

皆様からの評価と 【ブックマーク】 が、セシリアのオタクパワーと作者の執筆速度を限界突破させる最大のエネルギーになります!

次回、ファミレス『ルナキン』のドリンクバーで、女神リリスちゃんと遭遇!?

そしてキッドの心に芽生える、初めての強烈な『独占欲』とは――。

引き続き、どうぞお楽しみください!

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