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溺愛ハッピーエンドが欲しくて頑張ったのに、なぜか彼氏はヤンデレ化した  作者: ChaCha


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奪われた唇

昼前の光が、ベルガモット家の応接室に柔らかく差し込んでいた。

カーテンは開け放たれ、外の庭の緑が静かに揺れている。


扉は閉められていない。

メイドも控えている。

形式としては、何も問題はないはずだった。


けれど。


カレンは、椅子の端に浅く腰掛けたまま、息を整えていた。

隣にいる存在が、どうしても近い。


(……はやく、ベルンはやく来て……)


そう思った瞬間、時間は皮肉なほどゆっくりになる。


レオンは、特に動くでもなく、悠然と座っていた。

まるで、この場所が自分の居場所であるかのように。


「緊張してる?」


低い声が、耳元に落ちる。


「……してません」


即答したものの、声が少しだけ揺れた。


(してる。すごく)


逃げるように、カレンは立ち上がろうとした。

席を変えるだけ。

それだけのつもりだった。


その瞬間。


手首を、掴まれた。


「っ……」


強くはない。

けれど、迷いがない。


引かれる。

身体が、バランスを崩す。


次の瞬間、腰に回された腕に支えられ、視界が一気に近づいた。


「……!」


言葉になる前に、温度が触れた。


唇が、重なる。


ほんの一瞬。

けれど、確かに。


頭の中が、真っ白になる。


(なに……今……)


離れたと思った、その刹那。


角度が変わり、もう一度。


視界いっぱいに、レオンの瞳があった。

逃げ場を失った視線。


「……」


何も言えないカレンを見て、レオンは満足そうに目を細める。


「甘いな」


囁く声が、近すぎる。


「……もっと、欲しくなる」


その言葉に、はっと我に返った。


(だめ……!)


両手で、必死に押し返す。


「やめてください!」


力いっぱい。

震えながら。


レオンは、きょとんとした顔で瞬きをした。


「……あれ?」


その瞬間。


応接室の入り口に、影が落ちた。


空気が、凍る。


「……カレン?」


ベルンハルトの声だった。


時間が、止まる。


カレンは、レオンの腕に支えられたまま、体勢を崩していた。

視線の高さ。

距離。

どう見ても、言い訳の余地はない。


レオンは、カレンの腰に手を置いたまま、ゆっくりと振り返る。


「やあ。良いタイミングだね」


楽しげに、そう言った。


ベルンハルトの目が、静かに細められる。


その視線は、まずカレンを捉え、

次に、レオンの手の位置へ。


何も言わない。


ただ、空気が変わった。


カレンは、ようやく自由になった身体で一歩下がり、

必死にベルンハルトを見る。


「……違うの、これは……!」


言葉は、途中で詰まった。


何をどう説明しても、

今見た光景が消えるわけじゃない。


レオンは肩をすくめ、愉快そうに言う。


「誤解しないでくれ。

 俺は、ただ……確かめただけさ」


その瞬間。


ベルンハルトの中で、何かが、静かに音を立てて崩れた。


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