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夏の街角で手をつなぐ理由
夏の午後の街は、光が多すぎて少し眩しい。
石畳に反射する陽射し、通りを抜ける風、果物屋から漂う甘い匂い。
ベルンハルトの隣を歩きながら、私は何度もその横顔を盗み見てしまう。
薄手のシャツ。
腕を動かすたびに浮かぶ筋。
夏だから、距離が近い。自然と。
(……近い)
意識した瞬間、彼の指が私の手を探した。
「……迷子にならないように」
理由はもっともらしいのに、
指が絡む速度は迷いがなかった。
(あ、これ……好きなやつ)
歩幅を合わせる。
影が重なる。
人混みでは、腰に軽く添えられる手。
「大丈夫か?」
「うん。ベルンがいるから」
そう言うと、彼の喉が小さく鳴るのが分かった。
露店を覗いたり、冷たい飲み物を分け合ったり、
何でもない時間なのに、全部が特別に感じる。
ふと立ち止まった拍子に、距離が詰まる。
「……暑いな」
「夏だからね」
笑うと、彼は一瞬、視線を逸らしたあと――
「……こうしていると、時間が足りない」
ぽつり。
胸の奥が、じわっと熱くなる。
「じゃあ、ゆっくり歩こ?」
私がそう言うと、
ベルンハルトは小さく頷いて、指を絡め直した。
離さない、というより
離れる必要がないみたいに。




