↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
溺愛ハッピーエンドが欲しくて頑張ったのに、なぜか彼氏はヤンデレ化した  作者: ChaCha


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/145

夏の香りとピクニック

夏の気配が、はっきりと輪郭を持ち始めた朝だった。

木々の葉は瑞々しく、風はまだ柔らかい。

芝生の向こうに広がる空は、どこまでも高い。


カレンは両手でバスケットを抱え、少しだけ胸を張った。


中身は、ふたり分。

手作りのサンドイッチに、小さなお菓子。

飲み物と、カトラリー。

シートも、きちんと二人用。


(……完璧)


そう思った瞬間、胸の奥がふわっと浮く。

今日は、ちゃんと“デート”だ。


「準備、随分気合いが入ってるな」


隣でベルンハルトが、穏やかに笑った。

ローブのない私服姿。

陽の下では、その存在感がいつもより近い。


「だって……初めてだし」


言いながら、視線を逸らす。

自分でも分かるくらい、声が弾んでいた。


芝生にシートを広げ、並んで腰を下ろす。

距離は、自然と近くなる。


風が吹く。

草の匂いと、彼の気配が混ざる。


「……気持ちいいな」


ベルンハルトがそう呟いた。

その声は低く、静かで、どこか油断している。


(今だ)


カレンは、ほんの少しだけ勇気を出した。


「ね、ベルンハルト」


「ん?」


「……膝、貸してあげる」


一瞬、間があった。

それから、彼は小さく息を吸って、何も言わずに応じる。


ゆっくりと、彼の頭がカレンの膝に預けられる。

思ったより重くて、思ったより近い。


(……近い)


指先に伝わる体温。

呼吸のリズム。

髪が、風に揺れる。


カレンは、無意識に背筋を伸ばした。

緊張と、嬉しさが入り混じる。


「……落ち着くな」


低い声が、すぐ近くで響く。

それだけで、胸がぎゅっとなる。


カレンは、そっと身を屈めた。

彼の耳元へ、声を落とす。


「……大好きだよ」


それは、囁きに近い音だった。

けれど、確かに届く距離。


そして…

そっと顳かみに口付けを落とした。


ベルンハルトの呼吸が、わずかに乱れる。


「……ずるいな」


そう言って、彼は笑った。

でも、その笑みは隠しきれていない。


カレンは、耐えきれず、両手で顔を覆った。


「~~~~っ」


「はは……」


木陰に揺れる影が、重なって、ほどけていく。


夏の風が、二人の間を通り抜けた。


(……この時間が、続けばいい)


そう思った瞬間、

胸の奥が、じんわりと温かくなった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。