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溺愛ハッピーエンドが欲しくて頑張ったのに、なぜか彼氏はヤンデレ化した  作者: ChaCha


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割り込む忠告

カフェの空気は、まだ柔らかかった。

昼の光が硝子越しに落ち、甘い香りと食器の触れ合う音が、二人の間を満たしている。


カレンは、頬に残る熱を冷ますように、スプーンでデザートを掬った。

ベルンハルトは、涼しげな表情のまま、彼女の様子を目の端で追っている。


――そのとき。


「やぁ、可愛子ちゃん。逢うのは三回目だね」


軽い声が、甘い空気を切り裂いた。


一瞬で、温度が下がる。


カレンは顔を上げ、首を傾げた。

「……そうでしたか?」


本気で思い出せていない声音。

それが、場を静かに揺らした。


ベルンハルトの指が、テーブルの縁で止まる。

(三回目?)


声の主は、ゆったりとした所作で椅子の背に手を置いていた。

洗練された立ち姿。目線は、まずカレンに、次にベルンハルトへ。


「覚えてない? まあ、無理もないか」


悪びれない微笑。

その視線が、ベルンハルトを測るように滑る。


「一緒に食べていい?」


問いは柔らかい。

だが、拒める余白を、あえて残さない言い方だった。


ベルンハルトは、答える前にカレンを見る。

彼女は、困ったように瞬きをしてから、ちらりと彼を見る。


――任せる、という合図。


ベルンハルトは、椅子に深く腰を預け、静かに息を吸った。


「構わない。ただし、短くだ」


声は低く、穏やか。

それだけで、境界線が引かれる。


「へえ。独占欲、強いんだ」


男は楽しげに笑い、向かいの席に腰を下ろした。

カレンに向ける視線は、相変わらず軽い。


「君、面白いね。ここにいるのに、ちゃんと“ここ”にいない感じがする」


「……そうでしょうか?」


カレンは曖昧に笑った。

悪意を感じない。けれど、居心地は良くない。


ベルンハルトは、何も言わず、カレンのグラスに水を注いだ。

自然な仕草。だが、指先がほんの一瞬、彼女の手に触れる。


カレンは小さく息を吸う。

(近い……)


それを見て、男が眉を上げた。


「へえ。今の、効いた?」


ベルンハルトは視線を上げる。

「彼女は、刺激に弱い。冗談にするな」


淡々とした言葉。

だが、隠さない。


男は肩をすくめた。

「悪い悪い。じゃあ、忠告だけ」


身を乗り出し、声を落とす。


「君、気をつけたほうがいい。彼女、目立つ」


ベルンハルトは、微動だにしない。

「承知している」


その一言で、会話は終わった。


男は立ち上がり、軽く手を振る。

「またね、可愛子ちゃん」


「……失礼します」


カレンは丁寧に会釈した。

その背中が離れるのを見届けてから、息を吐く。


「……びっくりした」


ベルンハルトは、カップを置き、彼女に向き直る。

「怖かったか?」


「ううん。ただ……甘い時間が、急に現実に戻った感じ」


ベルンハルトは、ふっと笑った。

「なら、戻そう」


彼は、テーブルの下で、カレンの指にそっと触れた。

さっきより、確かに。


カレンの肩が、わずかに揺れる。


「……ベルン」


「昼は、ここまでだ」


言葉は抑えている。

けれど、目は離さない。



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