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溺愛ハッピーエンドが欲しくて頑張ったのに、なぜか彼氏はヤンデレ化した  作者: ChaCha


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眠い朝の実践

翌朝。


柔らかな朝日が差し込む中、

カレンは少し重たいまぶたをこすりながら支度を整えた。


(……寝不足)


理由は、考えるまでもない。


昨夜、あの一言が何度も頭の中で再生されて、

布団の中で転がり続けたせいだ。


馬車の音が聞こえて、

胸がきゅっと鳴る。


扉を出ると、そこにいた。


「おはよう」


ベルンハルトの声は、いつもより少し低い。


……眠そうだ。


目が合った瞬間、

二人同時に、ふっと笑った。


「眠そうだな」

「ベルンも……」


言ったあとで、カレンは固まる。


(……あ)


名前。


いつもより、近い呼び方。


ベルンハルトが、わずかに目を見開いた。


「……今、なんて?」

「え、あ……」


カレンは慌てて視線を逸らす。


「その……つい」


沈黙。


でも、気まずさはなかった。


むしろ、

その沈黙ごと、柔らかい。


「……悪くない」


そう言って、ベルンハルトは先に馬車へ乗り込んだ。


隣に腰掛ける。


距離は、いつもと同じはずなのに――

今日は、近い。


体温が、はっきりわかる。


馬車が動き出すと、

カレンは落ち着かない指先を膝の上で組み直した。


(……昨日の続きみたい)


ベルンハルトは、ちらりと横を見る。


頬が少し赤い。

目の動きが忙しい。


(……効いているな)


喉が、自然と鳴る。


そして、

彼は“学んだこと”を思い出した。


――距離を縮めるのは、急がず、自然に。


そっと、手を伸ばす。


指先が、

カレンの髪に触れた。


さらり。


耳に掛けるだけの、ささやかな動作。


なのに。


「……っ」


カレンの肩が、びくりと跳ねる。


ベルンハルトは、身を寄せた。


唇を、耳元に近づける。


声を落とし、

静かに、熱を含ませて。


「……カレン。顔が、真っ赤だ」


囁き。


低く、柔らかく。


「~~~~~っ」


声にならない悲鳴。


カレンは両手で顔を覆い、

そのまま前屈みになる。


「ま、待って……これは……」

「何がだ?」

「心の準備が……!」


馬車の中。


小さな沈黙。


そして――


ベルンハルトは、耐えきれず、笑った。


「……はは」


(……なるほど)


これは。


確かに。


効果が、ある。


同時に、

自分の胸の内側が、妙に熱い。


(……これは俺にも来るな)


理性に、直接。


だが、

それすらも悪くないと思ってしまう。


カレンは、まだ顔を覆ったまま、

小さく息を整えていた。


「……今更だけど」

「うん?」

「私……こういうの、耐性なくて……」


小さな声。


正直な、告白。


ベルンハルトは、視線を逸らしながら、静かに言った。


「……覚えておく」


(段階は、必要だな)


そう判断しながらも、

胸の奥で、確信する。


――これは、成功だ。


馬車は規則正しく進み、

学園の門が近づく。


二人は、もう一度、ちらりと視線を交わして――

同時に、笑った。


寝不足の朝。


でも。


距離は、確実に縮んだ。




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