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溺愛ハッピーエンドが欲しくて頑張ったのに、なぜか彼氏はヤンデレ化した  作者: ChaCha


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ベルンハルトが買った本

私室の灯りは、落ち着いた橙色だった。

外では夜風が木々を揺らし、窓硝子に微かな音を残していく。


ベルンハルトは、椅子に深く腰を下ろし、膝の上の一冊に視線を落とした。


表紙は、やけに簡素だ。

だが、題名だけが妙に強い。


『彼女を溺れさせる愛とは』

著者:ChaCha

出版社:Two deities


……胡散臭い。

率直に言えば、それが第一印象だった。


(だが)


彼は、表紙を撫でるように指先でなぞる。

紙の感触は、確かに“本物”だ。


観劇の最中、

カレンがあの言葉を口にした瞬間を、思い出す。


――「私もベルンハルトに溺愛されたいな」


胸の奥が、きゅ、と締まった。

呼吸が、ほんの一拍、乱れた。


(……あれは)


彼女の願いだ。

冗談でも、雰囲気でもない。

はっきりと、向けられた言葉。


ベルンハルトは、ゆっくりと本を開いた。



第一章:溺愛とは、管理でも放置でもない


いきなり、刺さる。


(……管理、ではない)


彼は、無意識に眉を寄せた。


――愛するということは、

――相手の行動を制限することではない。

――しかし、距離を与えすぎることでもない。


(……難しいな)


ページをめくる。


第二章:触れない優しさは、誤解を生む


……。


ベルンハルトは、思わず息を止めた。


(……やはり、か)


触れない。

距離を保つ。

安心させるつもりで、そうしていた。


だが。


――触れられない不安は、

――想像の中で、勝手に増幅する。


(……カレン)


彼女の、少し寂しそうな横顔が脳裏をよぎる。

唇に視線を落としたまま、何も言わなかったあの瞬間。


(……気づいていたのに)


次の頁。


第三章:溺愛は、言葉と行動の“同時進行”


――言葉だけでは、足りない。

――行動だけでも、足りない。

――両方が揃って、初めて“伝わる”。


ベルンハルトは、静かに本を閉じた。


(……なるほど)


確かに。

舞台の台詞をなぞっただけで、彼女はあれほど赤くなった。

あれは、“言葉”の力だ。


だが――。


(次は、行動だな)


彼は、背もたれに身を預け、天井を見上げた。


カレンの笑顔。

少し拗ねた声。

馬車の中で、緩んだ頬。


(……可愛い)


喉が、自然と鳴る。


(……俺は、彼女に溺愛されたいと願われた)


それは、責任でもある。

同時に、望外の幸福でもある。


ベルンハルトは、再び本を開いた。

今度は、最初から、丁寧に。


(学ぼう)


彼女が不安にならないように。

彼女が、安心して笑えるように。


――そして。


(……俺自身が、我慢しすぎないためにも)


ページをめくる音が、夜に溶けていく。


遠くで、鐘がひとつ鳴った。


ベルンハルトは、静かに息を吐き、口元を緩めた。


「……次は、もう少し近くてもいいだろう」


誰に言うでもなく、そう呟いて。


本の表紙に記された出版社名を、もう一度だけ見つめた。


Two deities。


(…二柱の神々…ずいぶん、悪戯が過ぎる)


だが。


(嫌いじゃない)


彼は、灯りを落とすことなく、読み続けた。



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