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溺愛ハッピーエンドが欲しくて頑張ったのに、なぜか彼氏はヤンデレ化した  作者: ChaCha


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暇つぶし

レオンは、退屈していた。


学園の敷地を歩きながら、

整えられ過ぎた花壇や、規則正しい石畳を眺めては、鼻で笑う。


(平和だな)


祖国でも、ここでも変わらない。

優秀な家柄、将来を約束された立場。

周囲が勝手に期待し、勝手に距離を測り、勝手に遠慮する。


刺激がない。


だから留学を選んだ。

首席を争う魔術師がいると聞いて、少しは退屈が紛れるかと思った。


ベルンハルト・アイゼン。


確かに、腕はいい。

理論も魔力量も、拮抗している。

競えば楽しい――それだけの存在。


(……それだけ、のはずだった)


昨日までは。


学園の廊下。

人の流れの中で、ふと視界に入った色。


淡い桃色。


――あ。


レオンの足が、無意識に止まった。


前を歩く二人組。

並んだ距離が近い。

指先が、自然に絡んでいる。


(……恋人、か)


ベルンハルトが、誰かと並んで歩いている。

それ自体は、珍しいことじゃない。


だが。


彼女は、周囲を警戒する様子もなく、

隣にいる男を疑う気配もなく、

当たり前のように微笑んでいた。


(あんな顔、するんだな)


ベルンハルトに向けて。


それが、妙に引っかかった。


昨日、街で見た時もそうだ。

迷子の子どもに目線を合わせ、声を柔らかくして宥めていた。


“優しい”という言葉では、足りない。


(……無防備だ)


危うい、とも違う。

それよりもっと――


(守られている前提の顔、か)


だからこそ、

余計に目が離れなかった。


レオンは、壁際に寄り、

通り過ぎる二人を横目で追う。


彼女は、気づかない。


視線が、刺さっていることに。


(気づかれない、か)


それが、少し面白い。


昨日は、軽く声をかけただけだった。

反応も、特別じゃない。


むしろ――

彼女の方は、自分に興味がなさそうだった。


(……それが、妙だ)


普通なら、

留学生という肩書き、

公爵家の後継という立場。


どこかで、意識する。


だが、彼女は違った。


視線は、すぐ隣にいる男に戻る。

話しかけられても、礼儀はあるが、深入りしない。


(俺を、評価の対象に入れてない)


その事実が、

じわりと、胸の奥に引っかかる。


レオンは、自分の感情を分析する癖がある。

今感じているのは、恋ではない。


もっと単純で、

もっと厄介なもの。


(……興味、か)


暇つぶしを探していただけのはずが、

退屈の方から、寄ってきた。


視線を戻すと、

ベルンハルトが、ほんの一瞬こちらを見た。


目が合う。


――鋭い。


敵意ではない。

だが、警戒が含まれている。


(……はは)


面白い。


彼は気づいている。

“何か”が、こちらを見ていることに。


だが。


(まだ、俺を脅威だとは思っていない)


それも、分かる。


彼の視線は、

彼女ではなく、こちらを測っている。


(守るべきものは、あっちなのに)


レオンは、口角をわずかに上げた。


奪う気は、まだない。

壊す気も、ない。


ただ。


(どんな顔で、俺を見るんだろうな)


ベルンハルトの隣にいる、

あの無防備な少女が。


次に目が合った時。

声をかけた時。


自分を、どう認識するのか。


(……もう一度、会おう)


それは計画じゃない。

選択でもない。


ただの、予感だ。


そしてその予感は、

不思議なほど、確信に近かった。


レオンの視線は、

去っていく二人の背中から、

しばらく離れなかった。




レオン視点

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