完璧だった一日
部屋の扉を閉めた瞬間、
私はその場にぺたりと座り込んだ。
「……はぁ……」
胸の奥が、まだ熱い。
頬も、きっと赤いまま。
今日のデート。
思い返すだけで、心臓が忙しい。
カフェ。
街歩き。
お揃いの栞。
公園のベンチ。
夕焼けの中の、ベルンハルトの横顔。
――完璧だった。
ベッドに飛び込んで、
ごろりと仰向けになる。
「……」
そっと、自分の唇に指を当てた。
(……してくれなかった)
そこに、ほんのり残る記憶。
彼の視線が落ちて、
一瞬だけ、距離が縮まった、あの空気。
「~~~~~~っ」
声にならない悲鳴をあげて、
枕をぎゅっと抱きしめる。
「……っ、もう……!」
ごろごろ、ごろごろ。
ベッドの上を転がる。
ベルンハルト。
ベルンハルト。
ベルンハルトしか、見えない。
(……好き)
小さく、声に出す。
「好き……」
胸が、きゅっとなる。
(大好き)
今度は、少しだけはっきり。
「……大好き……」
言えなかった。
今日も、言えなかった。
(なんで言えなかったの、私!!)
「もーーーっ!」
ごろごろごろごろ――
「わっ!?」
ドテッ。
勢い余って、ベッドから落ちた。
「……いった……」
床に座り込んだまま、
しばらくぼんやりする。
……でも。
ゆっくり立ち上がって、
ベッドに腰掛けながら、深呼吸。
(私、ちゃんと頑張ってるよね)
逃げてない。
向き合ってる。
ちゃんと、彼の隣にいる。
ベルンハルトは優しい。
大切にしてくれる。
触れる時も、目線も、全部。
(……溺愛、進んでる)
うん。
順調。
私は、枕を胸に抱いて、
もう一度ベッドに転がった。
「……よし」
小さく呟いて、目を閉じる。
今日のデートは、完璧だった。
明日も会える。
また、笑ってくれる。
その確信が、心を満たす。




