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子猫になった気弱魔導士は猫嫌いの氷の宰相に愛される  作者: はんぺん


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98/200

98話

レイザックの猫好きリミッターが解除されました(>_<)

「アイカちゃん、やっと来てくれたのね!」


 翌日になり、雨が上がった頃合いを見て約束通りアイカが屋敷を訪れると、マリーナやオルトランはもちろん、シェリーや料理長をはじめとする使用人もみな、大喜びで彼女を出迎えた。


「アイカちゃんが来ている時は、レイザックは近づけないようにしますからね!だから安心してちょうだいね」


 あまりの歓迎ぶりにたじろいでいるアイカにマリーナがそう言いだしたのを皮切りに、料理長のバルデムやメイドたちも次々と宣言する。


「アイカ様がレイザック坊ちゃんに酷い目に遭わされたって事はもう皆知ってますぜ。俺ら全員で坊ちゃんを近寄らせないようにお守りしますんで、安心してまた料理を教えにきてくだせえ!」

「もちろん私たちも協力しますわ!だからまた屋敷を自由にお散歩してくださいね。アイカ様がいないと私たちも寂しくて、なんだか張り合いがでないのです!」

『あ、ありがとうございます‥‥‥』


 レイザックがこぼしていた通り、彼に対する風当たりが強いのは本当の事のようだ。喜びに沸き立つ皆から離れた場所で、彼は一人だけ居心地悪そうにぽつんと立っていた。


「‥‥‥今さら申し開きをするつもりはないが、お前たちは少し俺を(ないがし)ろにしすぎではないか?」


 レイザックがぼそっとぼやくと、使用人たちがぐるんと一斉に振り向いた。


「そうされても仕方のない事を坊ちゃんはしでかしたんだって、本当にわかってるんですかい?!いくら猫嫌いだからってこんなちっこい子猫に冷たくするなんて、鬼畜の所業ですぜ」

「マリーナ様のお話では、レイザック様は、アイカ様に嫉妬した者のつまらない噂を真に受けていたっていうじゃありませんか!それを聞いて私は心底がっかりしましたよ!」

「アイカ様は、私の家族やマリーナ様の命の恩人なのです!ほかにも彼女に助けられた人は大勢います。なのに、レイザック様は、そんな私の恩人に冷たい仕打ちをなさったのです。たとえアイカ様ご本人が許してもシェリーは許せないです‥‥‥!」

「僕やマリーナが、もう少し彼女の心が落ち着くまではそっとしておくよう申し付けたのに、まさか精霊と誓約を結んで勝手に温室に行くなんて。父親として色々と思うところがあるよ」

「ですが、父上、それはですね――」


 バルデムやメイドたちだけでなく、シェリーやオルトランにまで責め立てられ、たじたじになったレイザックは、〈氷の宰相〉と評される冷徹さをすっかり失っていた。


「いくら女性が苦手だからって、子猫になったアイカ様まで冷遇するのは人としてどうなんですかね?」

「レイザック様のせいで、アイカ様の頭をなでなでさせてもらうという私の願いが遠のいてしまったじゃないですか!」


 畳みかける様に、他の者たちも一斉に彼に詰め寄って非難し始めたのを見て、思わずアイカが止めに入る。


『あの、もうそのくらいで宰相様を許していただけませんか?』

『その辺で許してあげてだってー』

「そうですか?まあ、アイカ様がそう言うなら‥‥‥」

「まだまだ言い足りませんが、しかたがありませんね」


 精霊を介して彼女の言葉を聞いたマリーナやオルトランが使用人たちをなだめ、ようやく騒ぎは収まった。アイカが胸をなで下ろした一方でレイザックはというと、顔色を悪くして棒のように立ちつくしていた。


『いい気味ー』

『この屋敷の者たちに高得点を進呈ー』

『あいか、なんであいつを助けたのー?』

『だって、あんなに大勢の人たちから責められたら辛いでしょう?』

『ほっといでもよかったのにー』

『あいかはもう、あいつが怖くないのー?』


 精霊たちから不思議そうな顔で聞かれ、そういえば──とあらためて気づく。


(確かに、いつの間にか宰相様の事があまり怖くなくなっているわ)


 だからこそ昨日、そばで見ていてもいいか、と尋ねられてどうしようか迷っていた時も、その後の彼の熱弁にほだされて、つい了承してしまったのかもしれない。


(不思議だわ。今こうして宰相様を見ていても、ただ単に不器用で優しい人だとしか思えないなんて‥‥‥)


 一時はあんなにも彼を恐れ、近くにいるだけでぶるぶると震えていた自分の心境の変化に、彼女は戸惑いを隠せない。


 わちゃわちゃと騒ぐ精霊たちに囲まれながら、アイカは小首を傾げながらずっと胸に手を当てて考え込んでいた。


今回の話で、やっと折り返し地点まで来ました‥‥‥!

もし面白かったと思っていただけましたらブクマや評価で応援していただけると、更新する励みになります!

なにとぞどうぞよろしくお願いいたしますm(__)m

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