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子猫になった気弱魔導士は猫嫌いの氷の宰相に愛される  作者: はんぺん


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38/200

38話

 一方その頃――


「エリアナ、何故勝手に教会を抜け出して魔導学院に行ったのだ?」


 精霊教会の敷地の奥にある大司教の居室に呼び出されたエリアナは、彼女の実の叔父である大司教ギュントから詰問を受けていた。


「ごめんなさい叔父様。王都で噂されるようになった女魔導士が気になって、どうしても我慢できなかったの‥‥‥」


 しおらしくそう言うと、エリアナはしゅんとしてうなだれた。普通の人であれば、つい無条件で許してしまいたくなるようないじらしい姿だが、ギュントは冷ややかな目でジロリと一瞥したのみで苛立たしげに話の先を促した。


「わしの前でつまらぬ演技は不要だ。それで、どうだったのだ?その女、我々にとって害をなす存在だったのか?」


 実年齢よりも一回り以上は老けて見える白髪の叔父に対して心の中で舌打ちしたエリアナは、清楚な聖女の仮面を脱ぎ捨てるとアイカについて報告した。


「ええ。確実に邪魔になる存在だったわ。だってあの小娘、どういう訳かこの杖がフシュメルリで出来ている事を一目で見抜いたんだもの。だから生かしておくのは危険だと思って、その場で始末しようとしたけれど、逃げられてしまったの」

「なんだと?」


 ギュントから剣呑な目を向けられ、エリアナは慌てて補足する。


「安心して。すぐに学院にいる手駒たちに後を追わせて、例の魔法で口を封じたから」

「ふむ。では女を魔物化する事には成功したのだな?」

「ええ。彼らの伝令鳥で報告があったから間違いないわ。でも、さすがに始末までは出来なくて学院内に放置したみたいね」

「では魔物化したその女魔導士は、今も学院内をうろついておるのか?」

「いいえ。どうやら私が帰ったあとに、たまたま学院に戻っていたリーラ・バーザンディが小娘を見つけて討伐するために追って行ったみたい」


 彼女は学院にいる別の手駒からの報告を見ながら、さも愉快そうな顔をした。


「ふむ。大魔導士リーラ――炎熱の魔女か。あの女の手にかかれば討伐されるのは時間の問題だな。それで、実際に襲撃した者どもはどうした。もちろんきちんと始末はしたのだろうな?」

「ええ。彼らに仕込んでいた魔法は問題なく発動したわ。まだ発見されてはいないようだけれど、もし学院内で魔導士が三人も廃人状態になって見つかったら、さらに大騒ぎになるでしょうね。ふふっ、あの学院長のじじいが慌てる姿を見たかったわ」

「では、そやつらの口から襲撃の件が漏れることはないのだな」

「ええ、心配はいらないわ。それでね、わたくしちょっと考えたのだけれど、こんな筋書なんてどうかしら?」


 エリアナは上機嫌な顔で、まるで歌うように自分に都合のよい筋書を語り出した。


「完璧な聖女であるわたくしに嫉妬した女魔導士は、危険な魔物を召喚して私を襲おうとしたけれど、たまたま近くに居合わせた魔導士たちに邪魔されて魔物と共に逃げ出すの。その後魔物は炎熱の魔女が見つけて討伐したけれど、女魔導士は行方をくらませたまま。そこで聖女であるわたくしが精霊たちに頼んで、邪悪な女魔導士を見つけ出して退治してもらうのよ」

「‥‥‥」

「どうかしら?これなら完璧な筋書だと思わない?本当の事を言えば、わたくしのレイザック様に近づこうとしたあの小娘は、直接この手で始末したかったけれど、既に炎熱の魔女が追って行ったのなら仕方がないものね」


 美しい顔に花がほころぶような笑みを浮かべながら、聖女にはおよそふさわしからぬ恐ろしい計画を練るエリアナに、ギュントは鼻白んだ。


ご覧いただきありがとうございます!

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