37話
少し短めです。
(今の時点では彼らが魔物に変えられた理由は特定できないけれど、エリアナというあの聖女が関わっている事に間違いはないわ。新たな犠牲者が出る前に、実は彼女が襲撃犯の一味で私を殺そうとした事や、あの危険な杖の事をこの人に知らせなくては)
そう決意したアイカは、はやる気持ちのままに籠のふちに小さな前足をかけて身を乗り出すと、レイザックに向かって話しかけた。
『あの、宰相様!私からも大切な話をさせて下さい』
だが、何故か彼は反応を見せず、こちらに目を合わせようともしない。
(おかしいわ。聞こえていないのかしら?)
仕方なく何度も呼びかけ続けていると、ようやく彼がこちらに目を向けた。
(ひっ!)
その瞳は強い憎悪で満ちており、睨まれたアイカは思わず悲鳴を上げて籠から転げ落ちそうになった。
レイザックはそんな彼女を思いやろうともせず、冷淡な声で事務的に語り出した。
「さっき話した通り、この一連の事件の証人である君を、この屋敷で保護することになった。身の安全は俺が保障するし、君の下宿先には、魔導士の仕事でしばらく戻れないと説明しておくから心配は不要だ。はっきり言っておくが、禁忌魔法の解呪方法が見つからない限り、子猫になった君にできる事は何もないし、してもらおうとも思わない。とにかく今は与えられた部屋で大人しくして、俺には不用意に近づかないでくれ」
口を挟む隙も与えず一方的にそう言い渡し、音声阻害の魔道具を止めた彼は、入口に控えていたベイリーに声をかけた。
「用は済んだ。すぐにアイカ嬢を客間へ。部屋の準備は整っているな?」
「はい。イライザが万事整えております」
「そうか。では後の事は頼む。彼女に関して何か不都合な事があれば、すぐに知らせてくれ」
彼はそれだけ指示すると、呼び止める間もなく足早に食堂から出て行ってしまった。
しばらくの間、アイカは呆然としていたが、「宰相様は大の女嫌いで猫嫌い」というミルパの言葉を思い出し、深いため息をついた。
(まさか、宰相様の女性嫌いと猫嫌いがこれほどまでに酷いとは思わなかったわ‥‥‥)
そばに近づくことすら禁じられては、聖女や杖の事を伝えようがない。
(困ったわ。一刻も早く知らせなければいけないのに)
家令によって部屋に運ばれる籠の中で、彼女は不安そうに瞳を揺らしていた。
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