不覚
その日の夜、私たちは森の中の少し開けた場所で野営テントを張って野宿しようとしていた。騎士団の人達は見張りのエリオット様を除いてほとんど眠りについた。
「やっぱり森は抜けられなかったな…」
「そうですね。……ところで、エリオット様は何故私のテントの前に座り込んでいるんですか?」
「悪いか?」
「寝ないんですか?」
「俺はあれだ、見張りだよ。」
「対熊用のトラップは即席ですがさっき私が作って設置したので大丈夫だと思いますよ。それに見張りならもう少し外の方でやった方がいいのでは?」
「あのゴソゴソやってたの、熊用トラップだったのか。」
「はい、人間よりも重いものがトラップの板を踏むと、炎と土属性の魔法でできた檻に閉じ込められるような仕組みになっています。上手くかかれば明日は熊鍋ですね。」
「襲われないことより食べること重視かよ…」
ガサガサッ…
そのとき、遠くの方で何かが動く音がした。
「……」
「どうしたシェリー?」
私の顔つきが変わったことに気がついたのか、エリオット様が声をかけてくる。
「…何かの足音が聞こえてきますね。」
「足音…?そんなもん聞こえてこねえが…どんな足音なんだ?」
「そうですね…」
私は再び耳を澄ませる。
ガサ、ガサガサ、ガサガサ…
「…恐らく人間ですね。人数は3,4人程かと。」
「まじかよ…例の賊か…?」
「足音だけでは分かりませんが、その可能性は充分ありますね。」
「これは確認しておいた方が良さそうだな。聞こえる方向を教えてくれるか?」
「私から見て正面の方です。」
「よし…じゃあ行くか。お前はどうする?怖ければ待ってて大丈夫だぞ。」
「いえ、彼らが移動して場所が変わる可能性もありますし、途中まではついて行きます。」
「よし、それじゃあ行こうか。」
――――――
ガサ、ガサガサ…
「さっきよりもかなり近づいてきてますね。」
「ああ、俺にも聞こえるぞ。シェリーの見立て通りみたいだな。」
私たちはさらに音の方へ近づく。
すると、薄汚い格好をした3人組が歩いているのを見つけた。手には騎士や貴族以外は所持が禁じられている剣や魔法銃が握られている。
「…いたな。」
「はい。恐らく例の盗賊でしょうね。」
「3人か…それなら俺がとっ捕まえてくるから、シェリーはここで待っててくれ。」
「わかりました。」
エリオット様に丸投げするのはちょっと気が引けるけど、かと言って私が行っても足を引っ張るだけなのでそこは素直に従う。
「よし、行くぞ!」
そういうとエリオット様はギリギリまで隠れながら近づいた後、一気に3人組に飛びかかっていった。
「なんだてめぇは!?」
「悪ぃが、ちょっと眠っててもらうぞ!」
バシッ!バキッ!
「ガッ!」
「グハッ!」
ドサッ…
エリオット様は一瞬のうちに、鞘に入れたままの剣で2人を気絶させてしまった。
「ち、ちきしょう!」
「観念するんだな」
さすが帝国騎士団の副団長、お強い。
バサッッ!!
!?
「おい!この女がどうなってもいいのか!?」
「シェリー!?」
「すみません…」
しまった、3人組に気を取られて、背後からもう1人後ろから近づいてきていることに気が付かなかった…
その1人に私はあっけなく捕まってしまった。
しかも、両手にはめられた手錠のせいか、魔法が使えない。魔法が使えれば1回相手を吹っ飛ばすくらいはできるのに…
「おい、武器を捨てろ!」
私を捕まえている男が、エリオット様に対し叫ぶ。
エリオット様は黙って盗賊の方に剣を投げると、両手を挙げて降参の姿勢を取った。
そしてそのまま私とエリオット様は、盗賊に捕まってしまったのだった。




