定期巡回
あれから1週間、今日は定期巡回の初日だ。定期巡回は、4日間かけて行うらしい。
私はまだ出発まで時間があったので、自分の寮の部屋で自作の魔導具を作りながら待っていた。
「えーと、この針金は両端切っちゃっていいかな…」
パチッ!パチッ!
私は魔導具の蓋を留めるのに使っていた針金の両端をニッパーで切った。
コンコンッ!
すると、部屋のドアをノックする音がした。
「シェリー、そろそろ行くぞ!」
エリオット様が迎えに来てくれたみたいだ。
「あ、はーい!」
私は切った2本の針金をなんとなくスカートのポケットに入れ、エリオット様について行った。
――――――
「さて、じゃあシェルシェーレ殿には荷馬車に乗って頂きましょうか。」
今はエリオット様に連れられて騎士団の駐屯所まで行き、そこで騎士団長のアルバート様から色々と説明を受けているところだ。
「すみません、ご令嬢をこんな薄汚い場所に乗せてしまって…」
「いえいえ、私はあくまで研究所の研究員の1人として来ている訳ですから気にしないでください。それに私そういうのはあまり気にしないので。」
「ありがとうございます。」
アルバート様は随分と丁寧な対応をしてくださる。でも私は一般的な貴族令嬢の価値観が圧倒的に欠けているので、たとえ馬小屋でも余裕で寝られる。
ちなみに、今回の定期巡回にエリオット様は来るけどアルバート様は来ない。団長と副団長が揃って駐屯所を開ける訳にはいかないからだ。つまり、今回の定期巡回の総指揮はエリオット様がとることになる。
「荷馬車じゃなくて俺と同じ馬に乗ってもいいんだぞ?」
そんなエリオット様は相変わらず息をするようにからかってくる。
「いえ、荷馬車の方が広いので快適です。」
「ハハッ!そういうと思ったよ。」
最近のエリオット様は、私に辛辣な対応をされても何故か嬉しそうだ。
女好き副騎士団長から罵倒好きマゾヒストにでもジョブチェンジしたんだろうか。
まあそれは置いといて。
そんなこんなで、私たちは首都を後にし今回の定期巡回の目的地となるクラウゼ辺境伯の領地へ向け出発した。
――――――
しばらく移動してきて、私たちは森で休憩を取っていた。一応道はあるけど、長年整備していないのか凸凹で馬はかなり足を取られていた。
「確か、今日はまだ領地には着かないんでしたよね?」
私はエリオット様に質問する。
「ああ、今日はこの森を抜けた先の平野の方まで向かう予定だ。つってもこのペースだと森を抜けられるか分かんねえけどな…」
「それだと何かまずいことが?」
「単純に熊が出るから対応が面倒だっていうのと、組織立った盗賊がこの森を根城にしてるって噂だから、接触は避けたいんだよ。」
今回の定期巡回に来ている騎士の方々はエリオット様含め10人だ。騎士の中でもかなり精鋭なので1対1ならまず負けないと思うけど、警戒してるってことは盗賊はもっとたくさんいるかもしれないってことか…?
なんにしても不穏だな…




