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結婚して3ヶ月が過ぎていた。
「今日は本家で食事をする事になっているから」
朝、紫苑くんから言われる。
親族達を集めての食事会があるそうだ。
「分かりました。手土産は何をすればいいですか?」
「森山さんが準備しているからそれを持っていったら大丈夫だ」
「分かりました。」
紫苑くんが会社にいった後、部屋で仕事をしていると電話がかかってくる。
「もしもし」
「お義姉さん、今日来る時に買ってきてくれない?」
「分かりました」
紫苑くんの妹の杏からかかってきた。
こういう使いっ走りをよく頼まれる様になった。
次は義母からもかかってくる。
「今回は?」
「だめです。」
「3ヶ月たったのにまだなの?」
「すみません。」
「取り柄のないあなたが出来ることは跡継ぎを産むことでしょ?しっかりしなさい」
「申し訳ありません。」
「早めに来て食事の準備でもしなさい!!」
跡継ぎの催促の電話だった。
********2ヶ月前
「旦那さま」
「どうした?」
「私たち契約結婚ですが、子供の事はどうお考えですか?」
「別に出来ても構わない」
「分かりました。1年間だけ子作りはしたくないのですがダメでしょうか?」
「なんでだ?」
ジュエリーのコンテストが10ヶ月後にありコレを頑張りたい事を伝える。
「分かった。でもエッチはする。いいか?」
「はい。」
抱きしめてキスをする。
そのまま最後までしてしまった。
*****
紫苑くんとのエッチはほぼ毎日している。
生理の時、私の体調悪い時を除いたらこの3ヶ月途切れることはなかった。
しかも最低でも3回はしている。
疲れないんだろうか?
私はヘトヘトなのに…
体力を付けようと思いウォーキングを始めた。
これで少し体力がついたらいいけど…。
義母に今日の食事会の手伝いをする様に言われたが本家の場所が分からない事に気がついた。
しかも仕事終わりの紫苑を乗せて一緒に行く事になっていたため、電話をかけた。
「もしもし」
優しい声が耳元に充満した。
「お義母さまから今日、早めに行って手伝う様に言われました。車はどれを使用したらよろしいでしょうか?」
「行かなくていい。俺と一緒で大丈夫だから」
「分かりました」
「それじゃあ」
紫苑くんが電話を切りそうだったので急いで聞く。
「紫苑くん。」
思わず紫苑くんって言っちゃった。
怒られたらどうしよう?
「どうしたぁ?寧々?」
あれ?凄い優しい声、もしかして紫苑くんって呼んでも大丈夫なのかな?
もう一度呼んでみた。
「紫苑くん。だ」
恥ずかしくなって大好きとは言えなかった。
紫苑くんの甘い声が耳の中で響く。
「どうした?」
「お仕事頑張って下さい。」
「分かった。ありがとう」
電話を切ってから嬉しくてぴょんぴょん跳ねてしまう。
早く紫苑くんに会いたい♡
デザインが閃いたのでラフ画をいっぱい描いていく。
電話がなる。
着信者は春川桃李18歳、末の弟からだった。
私が血が繋がってないと分かった後でも姉として慕ってくれていた。
「もしもし?桃李どうしたの?」
「ねえね!今度、高校でパーティがあるんだけど、明日香に渡すジュエリー作ってくれないかな?」
「明日香ちゃんのね。了解!」
明日香ちゃんは桃李と幼なじみの女の子だ。
明日香ちゃんのお母様とママが親友だった。
今でも私の事も気にかけてくれる。
桃李との電話を切ってからまた電話があった。
今度は春川湊1番目の弟からだった。
「寧々ちゃんがデザインしたジュエリーが出来上がったから今度会社に来て見てほしい」
「分かった!」
「結婚して幸せ?」
「幸せよ…。」
「もし虐められたら俺に言うんだぞ!!寧々ちゃんは我慢する事があるから心配なんだよ。」
「分かったよ。みなちゃん。ちゃんと言うよ。にいににも心配しないでってつたえて!」
「分かった。」
あの頃と変わらず接してくれる。それが凄く幸せに感じる一方で申し訳ない気持ちにもさせる。
「奥さま。お綺麗です!」
使用人達が言う。
「ありがとう!」
紫苑くんを迎えに行く。
会社から颯爽と出てきた、やっぱりかっこいい。
「お疲れ様です。旦那様」
紫苑くんの目が鋭くなる。
あれ?機嫌悪い?
「どうかされましたか?」
「何でだ?」
「何かお疲れの様な気がして…。」
秘書の颯が言う。
「奥様…。社長のお名前ご存知ですか?」
「え?紫苑…。」
もしかして…?
「紫苑くん。お疲れ様」
「ああ。」
口角があがっている。
嬉しそうにしている。私たち契約結婚だけど、名前で呼んでもいいみたい。
そうだ!!
契約書を交わした訳ではないんだし、今は私が本妻なんだから、好きにしてもいいよね?
寧々は本来とっても人懐っこくて甘えん坊だった。
家族と血が繋がってなくて遠慮がちになっていたため控えめになっていただけだった。
5年…。後4年と8ヶ月しかないからいいよね?
紫苑くんの腕に自分の腕を絡ませる。
ぐぃと引っ張り耳元で言う。
「手握っていい?」
紫苑は目を丸くして驚いていた。
今日2回目の大胆な行動だった。
紫苑くんがぎゅっと手を握ってくれた。
大きな温かい手だった。
本邸に到着し、車からおりる。
使用人達が並んでいた。
「紫苑さま、寧々様いらっしゃいませ。ご当主さまがお待ちです。」
佐川グループの現在のトップは紫苑くんのおじい様の佐川正吉だった。
「先におじい様とおばあ様に挨拶に行こう。」
「はい。」
紫苑くんの腕に手を絡めて義祖父母の部屋へ行く。
「ご当主様、紫苑さまと寧々さまがいらっしゃいました」
「入れ」
厳しい声が聞こえてきた。
背筋に冷たいものが走っていった。
中に入ると威厳に満ちた男性と上品な女性が座っていた。
「おじい様、おばあ様、ご無沙汰ています。」
「ああ。代表取締役になって現を抜かしてないだろうな?」
「はい。もちろんです。それより、こちらは妻の寧々です。」
「初めまして。寧々です。よろしくお願いします」
「寧々ちゃん。よろしくね。」
おばあ様のしの様が優しく言う。
「紫苑。寧々ちゃんに話があるからあなたは戻ってなさい」
「分かりました。」
紫苑くんが出ていくと威厳のあったおじい様の雰囲気が優しくなった。
「久しぶりだね。寧々ちゃん大きくなったね。」
「え?」
「菊之助さんとうめよさんから頼まれてるの、寧々ちゃんをよろしく頼むって私達の事は本当の祖父母だと思ってくれたらいいからね。紫苑がいじめてきたらすぐに言いなさいね。」
涙が出てきた。
「後、寧々ちゃん、会いに来てくれないって菊さんが寂しがってたよ。血が繋がってなくても君はあの二人にとって大事な孫なんだ。気にせず甘えなさい。」
「はい。会いに行きます。」
涙が止まらない私を2人は優しく抱きしめてくれた。
化粧を直し、2人と一緒に部屋をでると心配そうな顔で待っている紫苑くんがいた。
「大丈夫か?」
「はい。」
4人で会場に入ると、義父母と弟妹達がいた。
「寧々さん!頼んだものは?」
「鈍臭いわね。本当に」
「お母さん、寧々はあなたの小間使いではありません。杏もだ!!次、寧々にそんな態度をとったら許さない。覚えておけ!」
「まあまあ、紫苑、母さんも杏も寧々さんと仲良くしようとしてだな」
「そうか…父さんがそう言うなら明日から家に届けて貰おう。何が食べたい?寧々。」
「じゃあ。我が家にも届けて貰おう。」
正吉からも言われて、義父母は黙ってしまった。
「それじゃ始めよう。」
当主の号令で食事が始まった。
デザートブッフェが始まったので取りにいくと
若い親族達がいた。
「孤児のくせに偉そうに…」
紫苑くんの弟の玲音が言った。
「私達はあなたを義姉と認めないわ。お兄ちゃんの奥さんは華蓮さんだけよ。」
杏も言った。
「紫苑兄さんの奥さんって孤児なの?」
「よくそれで偉そうにできたな」
子供の言うことだ、相手にせずに席に戻った。
紫苑くんの手を握りしめる。
優しく握り返してくれた。それだけで、心が温まるのを感じた。




