17
目が覚めると見知らぬ倉庫にいた。
確か私知らない運転手に攫われたよね?
どうしよう……。
ここはどこなんだろ?
「目が覚めた?」
男の人の声が……。
振り返って見る。
うん?
何か見覚えが……。
「悪く思わないでくれよ……俺たちにも理由が……」
この2人にも見覚えが……。
私は記憶の扉をあけてフル回転で過去の映像を出していく。
「もしかして、順くん、圭くん、皐月くん?」
「「「え!?」」」
3人は驚いた顔をしていた。
「覚えてないかな?春川桃李の姉なんだけど?皆んな小さかったから忘れちゃった?」
「寧々姉ちゃん!!」
「良かった!皆んな大きくなったね。桃李とはまだ友達でいてくれてるのかな?」
「ごめんなさい。寧々姉ちゃん。俺……なんて事」
皐月くんの目から涙が……
私は皐月くんの背中を優しく撫ぜてあげた。
「どうしたの?お姉ちゃんに話してみて?」
皐月くんは泣きすぎてえずいていた。
代わりに、順くんが話した。
「実は皐月んとこのお母さんが病気で入院してて、こいつはバイトしながら払ってたんだけど、手術しないと助からないみたいで、金がいるんです。」
圭くんも話し出した。
「ちょうど、金持ちの女からスプリングホテルの玄関ホールにいる女を攫ったらお金を払うって言われて」
なるほど……
それで運転手のフリして攫ったのか?
その女の人の名前って分かる?
「えっと……灰原って言ってた」
今回準優勝だった子が灰原って名前だったなと思い出した。
私に優勝を取られた事に対する憂さ晴らしだった。
「皐月くん、心配しないでおばさんには私たちお世話になったから力にならせて」
私はすぐに兄に電話をした。
何とかすると言って電話がきれた。
「灰原から電話がかかってきた。」
「会社に来いって」
「きっと私の夫が話を付けたんだと思う。」
言われた場所に行くと紫苑くんがいた。
嬉しかった。
でも何とか皐月くん達を罪に問わないようにしたくて紫苑くんに言った。
優しい紫苑くんは責任を問わないと言ってくれた。
その日、紫苑くんは帰りが遅かった。
帰ってきた紫苑くんに疲労の色が見えた。
私はお風呂場で紫苑くんの頭をあらったりした。
部屋まで運んで貰ったが紫苑くんは起きなかった。
私は紫苑くんにキスをした。
本当に綺麗な顔。
この顔を嫌いな人はいないと思う。
紫苑くんが私から離れなかったらいいのに…。
後藤華蓮が帰ってくることに不安がよぎる。
やっぱり彼を譲らないといけないの?
こんなに好きなのに…。
涙が溢れてくる。
私も紫苑くんの横で眠りについた。
朝起きて紫苑くんのお弁当を作る。
「いってらっしゃい」
「いってくるね」
紫苑くんと抱き合ってキスをした。
紫苑くんが強く抱き締めてくる。
「大好きだよ。寧々」
本当にそうならいいのに…。
これは契約結婚だから勘違いしてはダメ。
自分に強く言い聞かせる。
紫苑くんは契約期間中だからしっかり夫を演じてるだけ。
だって契約解消って言われた事ないしなぁ…
そう…。紫苑くんがさっきみたいにだいすきって言ってくれるかど、結婚前にした契約を解消するとは言ってないのだ。
結婚している子達に聞いても旦那さんの溺愛は当たり前みたいで、紫苑くんも夫としての義務を果たしてるだけなんだ…。
でも、私は好きだからそれでもいいの…。
実家に行きコンテストの結果を祖父母に報告した。
「寧々!おめでとう」
2人とも喜んでくれた。
「春川寧々として宇月グループに入社しようと思うの」
「そっか。紫苑くんはいいと言うてるの?」
「え?」
「一度話しときなさい。旦那さんなんだから」
「わかった。」
紫苑くんにLINEを送り会社へ行った
紫苑くんのいるフロアに着いた。
後藤華蓮がいた。
なんで?
私の方を振り返った彼女が言う。
「来月から正式にここで働く事になったの」
「え?」
「しかも、紫苑から直々に連絡がきたわ」
「紫苑くんから?」
「新しいジュエリー部門のデザイナーとしてね?後、去る準備はできた?」
「紫苑くんから離婚の話が出たらします。」
「だから!紫苑は優しいからそんな事言わないわ。自分の立場を弁えなさい。卑しい孤児のくせに」
軽蔑の目を向けてくる。
春川家とは血は繋がってない。
でも家族は私の事を大事にしてくれている。
私は卑屈にならない!
「私は春川家とは血は繋がってませんが、家族です。貴方にそんな事言われる筋合いはありません。」
強く言い切った。
紫苑くんが出てきた。
「2人とも会社で辞めてくれ」
「ごめんなさい。」
「紫苑!春川さんが私をいじめてくるのよ!私が佐川グループのジュエリーデザイナーになったのが気に入らないみたい。」
「そんな事」
紫苑くんはため息をついた。
私の方を向いて言った。
「寧々、後藤さんに謝ってくれ」
ずこーんっっと頭部を殴られた様な気分になった。
どうして?
私の方が馬鹿にされたのに…。
彼が無条件で後藤華蓮を信じた事にショックを受けた。
そして悟ってしまった。
私はただの契約妻だと…。
あの優しさ、甘さは契約の為に成り立っていた事を…。
本当の妻が帰ってきたのだ。
偽物の妻なんていらないよね…。
私は何も言わず振り返って走って帰った。
背後から紫苑くんの声が聞こえた気がしたが、無我夢中で逃げていた。
幸い、1階までの直通のエレベーターだったためだれとも出会わなかった。
家に帰ってきた。
今後どうしたらいい?
でも今日は紫苑くんと会う勇気がなかった。
契約終了=離婚を切り出されたら私の感情が崩壊しそうだった。
森山さんに古くからの友達が帰省したので会いに行くことになったと告げて1週間ほど旅行に行くと告げた。
携帯も時計も追跡アプリが入っているので置いていく事にした。
幸い結婚前に使用していた物があるのでそれをこの期間は使う事にした。
実家には祖父母が心配するので帰れない。
兄と弟2人に電話をかけた。
皆んな勘違いじゃないのか?と聞いてきたが私の涙腺はもう耐えられなかった。
久しぶりに小学校時代に住んでいた地域へ行ってみた。
3時間ほどかけて行き、駅前のビジネスホテルが空いていたのでチェックインし、向かった。
街並みは変わっていなかった。
小学校まで歩いた通学路を歩いていく。
あの時は大きく感じた物が今は小さく感じる。
前から犬の散歩をしている男の人が通り際に言った。
「寧々ちゃん?」
振り返ると同級生の田中莉茉ちゃんのお父さんだった。
「莉茉ちゃんのお父さん、お久しぶりです!」
「久しぶりだね。元気してたの?」
「はい!莉茉ちゃんは元気ですか?」
「元気だよ!そうだちょっと待ってね」
莉茉ちゃんのお父さんが電話をかけて5分後に莉茉ちゃんがやってきた。
「寧々ちゃん!久しぶり」
「莉茉ちゃん!」
莉茉ちゃんは小学校時代に仲が良かったグループの1人だった。
「そうだ、3日後に同窓会があるんだけど、寧々ちゃん来れる?寧々ちゃんだけ連絡が取れなくて隆くん困ってたから」
「いきなりだけどいいのかな?」
「大丈夫だよー連絡するね。」
莉茉ちゃんが隆くんに連絡する
「OKだったよ!当日は私の車で一緒にいこ!」
「ありがとう」
「莉茉ちゃんよかったら今日はうちでご飯食べていきなさい」
「ありがとうございます。」
夕食時、莉茉ちゃん家の庭でBBQだった。
同じ登校班だった。
佐藤駿くん、香川佳奈ちゃん、安藤もあちゃんもいた。
駿くんは1つ上、佳奈ちゃんともあちゃんは1つ下だった。
皆んな私を覚えてくれてて小学校時代の話で盛り上がった。
楽しい夜だった。
莉茉ちゃんが言った。
「寧々ちゃんって彼氏は?」
「1年前に結婚したの!」
「そうなんだ!ご主人は仕事?」
「実は彼の大好きだった元カノが帰ってきて…」
契約結婚の事は言わずに話をした。
「うーん。ご主人なんで話聞いてくれないかな?帰りにくかったら私の家で帰る気になるまで一緒にシェアしよ!ホテルは明日チェックアウトしたらどうかな?」
「いいの?」
「うん!友達じゃん!」
卒業してから会ってなかったのにあの頃と変わらない優しさを感じて胸が熱くなった。
私が住んでいる地域の小学校は同じ地区で子供達が集団登校をするので登校班と明記してます。




