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寧々からホテルに行きたいと言われたので佐川グループの提携のホテルを颯に予約してもらった。
「奥様って可愛らしい物が好きだったよな?可愛い基調のスイートにしといたぞ」
「助かる!」
部屋に入って寧々の顔がぱぁっと明るくなった。
それだけでも嬉しかった。
とにかく寧々が甘えてくれる事が凄く嬉しい。
あんな、とろんとした顔……。
写真に残したい位だった。
今日泊まって明日もゆっくりするつもりだ。
寧々は疲れてたんだろう、22時位にうとうとして寝てしまった。
俺は穏やかに寝息をかく寧々の顔にキスをする。
またあの口を、むにむにさせている。
もちろん口にもキスをする。
電話がなる。
相手は後藤華蓮だった。
「もしもし」
「紫苑~♡私来月帰れる事になったの!」
「それがどうした?」
「だから!もう契約結婚なんてしなくていいのよ!」
「は?」
「私が留学したから春川寧々と結婚したんでしょ?」
何を言っているんだ?
「俺は寧々が好きだから結婚したんだ。そもそもお前とは付き合ってないだろ?」
「え?私たち5年も一緒にいたじゃない?冗談やめてよ……。紫苑」
「冗談も何も、お前とは体だけの関係だ」
「うそよ!」
「嘘じゃない。」
「じゃぁ、あの女は?」
「寧々は俺の妻だ。永遠に」
「うそよ!」
泣き叫ぶ声がうっとしくて電話を切った。
次の日も寧々との情事を楽しんだ。
なんであんなに可愛いのか……。
寧々の体も俺の体もキスマークでいっぱいだった。
私の物という寧々が愛しくて仕方なかった。
俺は寧々のものなんだから印なんていらないけど、寧々は印がある事が嬉しいと言っていた。
「俺に印を付けれるのは寧々だけだよ♡」
「私にも紫苑くんだけだよ♡」
可愛い。
なんで俺の奥さまはこんなに可愛いんだ。
ホテルのロビーに降りたときに運転手がいた。
だかいつもの板垣さんではない……。
不審に思い颯に電話をかける。
気づいたら車は寧々を乗せて去っていった。
俺は急いで追いかけたが車は行ってしまった。
すぐに颯に車のナンバーを言って持ち主を調べさせた。
実は寧々の携帯と、時計には追跡アプリが付いている。
これは佐川家の当主の奥さまになると安全の為に付けることになっている。
もちろん寧々も了承済みだ。
「寧々はどこだ?」
「どこかの倉庫に向かっているみたいだ。」
「おじい様に電話をして人を向かわせてくれ。」
俺は今移動手段が無いため颯に指示を出しおじい様の精鋭部隊にお願いした。
運転手が迎えにきた。
「会社に行ってくれ。」
「かしこまりました。」
会社についた俺はまず、颯に調べて貰っていた資料をみる。
「灰原商事か……。」
「どうやら、娘が関与しているみたいだ。奥様と同じコンテストに出ていて準優勝だったらしい」
「私怨か?バカバカしい」
「灰原商事の社長と娘は何処にいる?」
「会社にいるみたいだ。」
「今から行くと伝えろ」
「承知しました。」
「もしもし、要か?今から言う事をしらべてくれ。」
灰原商事のロビーに着く。
受付に伝える。
急いで社長が降りてきた。
「佐川取締役、御足労おかけしてすみません。案内させて頂きます。」
「ええ。」
社長室に着いてソファに腰を落とす。
「今日はどうされましたか?」
灰原商事は中小企業だ。
佐川グループと仕事をするなんてない。
「娘さんはお元気ですか?」
「はい?え?どうして娘の事を?」
颯が資料をデスクにおく。
「お宅の娘さまがこちらの佐川取締役の奥さまを誘拐しました。もし傷つけた場合はわかっていますね?」
灰原社長の顔が青ざめていく。
灰原社長は清廉潔白で有名だった。
その娘がまさか私怨で大企業の取締役の妻を誘拐したのだ……。
「すぐに娘に連絡します。」
5分後娘が社長室へ来た。
「失礼します。」
父親だけではなく俺もいてびっくりしていた。
「え?どうして佐川取締役?」
灰原社長は娘に近づき思いっきり平手打ちをした。
「お前はなんて事をしてくれたんだ!」
「え?」
「今すぐ誘拐をやめて、今すぐここに佐川取締役の奥様を連れてこい!」
「え?私は佐川取締役の奥さまなんて誘拐してないわ!」
「じゃあ誰を誘拐したんだ?」
「春川寧々っていう孤児の女よ!私が取るはずだった優勝を横取りしたのよ!でも、誘拐なんて……ちょっと仕返ししたかっただけで」
俺はこの女の前に立ち言う。
「ホテルからすぐに男に連れていかれた。車の所有者はお前だったぞ。誘拐してないなんて言い訳が通じると思うか?早く俺の寧々を返すんだ。」
「春川寧々が佐川様の奥さま?」
「そうだ。」
「でも!春川って」
「旧姓でエントリーしていただけだ。どうするんだ?」
「分かりました。」
女はすぐに電話をする。
「もしもし、車に連れていった女を会社に連れて来なさい!」
「荒いお嬢さまだな。わかったよ」
30分後寧々を乗せた車が来た。
車から寧々が降りてきた。
俺の姿を見て寧々が笑顔で抱きついてきた。
俺は安堵した。
寧々を強く抱き締めた。
「何も怪我ないか?」
「大丈夫だよ!」
「良かった」
車から男が3人降りてきた。
その内の1人が言った。
「すみませんでした。」
俺は睨みつける。
「怒らないで紫苑くん!皐月くんにも理由があった」
「皐月くん?知り合いなのか?」
「うん。桃李の友達なの」
この皐月という子は寧々の末の弟の桃李くんの小学校からの親友で、寧々も良く可愛がっていたそうだ。
母子家庭で育ち、母親が入院して手術をしないといけなくなりどうしてもお金が必要だったそうだ。
他の2人も桃李くんの先輩だった。
「まさか誘拐した人が桃李の姉さんだと思わなかった。でも、初めからこんな事するべきじゃなかった。母さんを助けたかったらしっかりバイトしたら良かったんだ。ごめん……。寧々姉ちゃん」
「大丈夫だよ!皐月くん!さっき兄さんに電話したら援助するって言ってたから心配しないで」
寧々が優しく背中をさすると号泣していた。
「何も無かったし君たちを責めるつもりはないよ。これでお母さんに美味しい物でも食べさせてあげなさい」
俺は彼等にお金を渡し帰らした。
寧々にも運転手に家まで送らせた。
振り向いて灰原親子を見る。
冷たい声でいう。
「この件はうやむやにするつもりもない。通報もさせて貰う。」
「そんな……」
「あなたの娘が私怨で命じたんでしょ?」
「このバカ娘が!」
「ごめんなさい」
警察が来た。
灰原社長は項垂れていた。
「紫苑!要に頼んでた件で連絡が来たぞ。あの腹黒女が1枚絡んでるがあいつも頭がいい。お前たちのいる場所を言っただけだ。罪には問えない。」
「わかった。」
まあ今回は許してやる。
寧々に怪我がなかったからな。
だかもし、寧々を傷つけたら絶対に消してやる。
俺は心に誓った。
家に帰ったら寧々が迎えてくれた。
「おかえり!紫苑くん。お疲れ様」
「うん!ただいま。」
「ご飯とお風呂どっちにする?」
「疲れたから先にお風呂に入ってくるね。」
「はい!」
大浴場の方でゆっくりする。
寧々が無事で本当に良かった。
うとうとしてしまっていた。
気づいたら横になっていた。
目を開けると寧々が俺の頭を洗ってくれていた。
「ありがとう……」
「起こしちゃった?大丈夫?」
「うん。」
「今日の夕ご飯は私が作ったんだぁ。食べれそうな、食べてね。」
「ありがとう。」
髪を流してマッサージもしてくれた。
また寝てしまった。
次目が覚めた時はベットの上だった。
午前3時だった。
お腹がペコペコだったので台所へ行き寧々が作ってくれたご飯を食べた。
優しい味だった。
これからもこんな穏やかな時間を過ごして行きたい。
俺は颯にメールを送った。




