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第8話 王都アルディアの影

森を抜けた瞬間、視界が一気に開けた。


その先に――巨大な城壁がそびえていた。


白い石で築かれた、高い壁。

その向こうには、無数の屋根が広がっている。


王都アルディア。


リナは思わず足を止めた。


「……すごい……これが、王都……」


胸の奥から、声がこぼれる。


森で生まれ育ったリナにとって、ここは“物語の中の世界”だった。


旅人の話。

商人の自慢話。


遠い場所だったはずのその景色が――今、目の前にある。


門の前は人で溢れていた。


荷車を引く商人。

武器を背負った冒険者。

鎧姿の騎士たち。


絶え間なく流れる人の波。


こんな光景、初めてだった。


「驚いたか?」


隣でレオンが微笑む。


風に揺れる金の髪が、陽の光を弾いた。


「うん……森とは、全然違う」


「王都なんて、うるさいだけだぞ」


アルが肩をすくめる。


けれど、その目はどこか懐かしそうだった。


その時――


腕の中のフェルが、ゆっくりと目を開けた。


金色の瞳が、王都を見つめる。


『……妙だな』


低い声だった。


リナが首をかしげる。


「どうしたの?」


フェルは、じっと街を見つめたまま言う。


『この街……濁っている』


「濁ってる?」


アルが眉をひそめる。


だがフェルは、それ以上は語らなかった。


ただ静かに、警戒するように王都を見ている。


――門をくぐった瞬間、空気が、変わった。


石畳の道。

立ち並ぶ店。

人々のざわめき。


焼きたてのパンの香りが、ふわりと鼻をくすぐる。


「いい匂い……」


リナは思わず周囲を見回した。


薬屋の看板。

鍛冶屋から響く金属音。

笑い声と、呼び込みの声。


世界が一気に広がったようだった。


――だが、フェルの耳が、ぴくりと動く。


『……来る』


その一言だった。


レオンの表情が変わる。


「何が――」


次の瞬間、悲鳴が街に響いた。


「魔物だ!!」


「逃げろ!!」


人の流れが一気に崩れる。


倒れる荷車。

逃げ惑う人々。


リナの心臓が強く跳ねた。


「王都に……魔物?」


「ありえない……!」


レオンが剣を抜く。


アルも低く呟いた。


「……いや、最近増えてる」


その時――


黒い影が石畳を駆けた。


狼のような魔物。


だが、どこか異様だった。


体から、黒い霧が滲み出ている。


『瘴気だ』


フェルの声が静かに響く。


『闇に侵された魔物だな』


レオンが前に出る。


「下がって!」


だが――速い。


魔物は常軌を逸した動きで迫る。


「くっ……!」


アルが舌打ちした、その瞬間。


ふわり――


光が現れた。


小さな、風の粒のような光。


それがリナの周りをくるくると回り始める。


「……なに、これ……?」


アルが目を見開く。


『精霊が……』


フェルが静かに言った。


『この娘に、集まっている』


リナの鼓動が速くなる。


何かが、内側から溢れてくる。


その瞬間――魔物が飛びかかった。


レオンが剣を振るう。


だが、届かない。


「しまっ――」


そのときだった。


リナの手が、自然と前に出る。


森で薬草を摘んできた日々。

命に触れてきた感覚。


そして――


光が、舞う。


「……癒して」


小さな声した。


だが、次の瞬間、


光が、一気に広がった。


やわらかな光が魔物を包み込む。


黒い霧が、溶けるように消えていく。


やがて――


魔物は、静かに倒れた。


完全に動きを止めていた。


あたりが静まり返る。


誰も、言葉を発せない。


レオンも、アルも。

周囲の人々も、ただ呆然としている。


その中で――


フェルだけが、小さく笑った。


『やはりな』


金色の瞳が、リナを見つめる。


『この娘は――精霊に愛されている』


リナはまだ知らない。


自分の力の意味を。


そして――


この王都アルディアが、

世界の運命を揺るがす場所になることを。


まだ、誰も知らなかった。


第8話 終わり

ここまで読んでいただきありがとうございます!


少しでも続きが気になったら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


次回もぜひ読んでいただけたら嬉しいです!

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