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第40話 静かな夜と王の勅命

第40話 静かな夜と王の勅命


神殿を出た頃には、すでに空は夕暮れに染まっていた。


崩れかけた神殿を背に、一行は王都へと続く石の道を歩いていた。


誰も口を開かない。


戦いの余韻と、極度の疲労が体を重くしていた。


とくに――リナは限界だった。


足取りがふらつく。


肩で息をしている。


精霊の光を解放した反動か、体から魔力がほとんど抜け落ちていた。


その様子に、レオンはすぐ気づいた。


隣を歩きながら、そっと声をかける。


「……大丈夫か」


リナは小さく笑おうとした。


「うん……平気」


だが、その声は弱々しい。


次の瞬間、リナの体がわずかに揺れた。


レオンの表情が変わる。


「無理をするな」


そう言って、そっと手を取った。


温かい手だった。


驚いたようにリナが顔を上げる。


レオンは何も言わない。


ただ静かに、彼女の手を引いて歩き出した。


その背中は、まるで迷いがなかった。


「……レオン」


「歩けるか」


短い言葉。


だが、その声には優しさがあった。


リナは小さくうなずく。


そのまま、王都までの帰路を歩いた。


夜の風が、静かに吹いていた。


――


王城に戻るころには、すでに夜になっていた。


騎士団の案内で、一行はそれぞれの部屋へと案内される。


エリオスは父親が療養する部屋へ。


アルは無言のまま廊下を歩いていった。


そして――


リナはすぐに部屋へ運ばれた。


魔力をほぼ使い果たしていたのだ。


ベッドに横になった瞬間、体から力が抜ける。


フェルが枕元に飛び乗った。


『派手にやったな』


リナは天井を見つめたまま、苦笑する。


「……そんなつもりじゃなかったんだけど」


『精霊たちは大騒ぎだったぞ』


フェルは尻尾をゆらゆらと揺らす。


『大精霊の器が目覚めたのだからな』


リナは目を閉じた。


その言葉の重さが、まだ現実として実感できない。


その時、


コンコン、と控えめなノックが響いた。


「……リナ」


レオンの声だった。


「入って」


扉がゆっくり開く。


レオンは部屋の中に入り、ベッドの横で足を止めた。


リナの顔を見る。


少しだけ安心したように息を吐いた。


「顔色は……悪くないな」


「少し休んだら楽になったよ」


レオンはしばらく黙っていた。


そして、ぽつりと呟く。


「無茶をした」


叱っているわけではない。


むしろ、心配している声だった。


リナは少し困ったように笑う。


「でも、あのままだと……」


「分かっている」


レオンは視線を落とした。


「それでも」


ゆっくり言う。


「怖かった」


その言葉に、リナは少し驚いた。


レオンが続ける。


「お前が倒れるんじゃないかと」


その声は、とても静かだった。


リナの胸が少し温かくなる。


「ありがとう」


小さく言った。


「でも、レオンやみんながいてくれたから」


レオンは顔を上げる。


「大丈夫だった」


しばらく、二人は黙っていた。


静かな夜だった。


その後、レオンは短く言った。


「今日は休め」


「明日は王との謁見がある」


リナはうなずく。


「うん」


レオンは扉へ向かう。


その直前、振り返った。


「……おやすみ」


「おやすみ、レオン」


扉が閉まる。


部屋は再び静かになった。


フェルが小さく笑う。


『青春だな』


「うるさい」


リナは枕に顔を埋めた。


だが、その頬は少し赤かった。


翌朝――


王城の謁見の間。


赤い絨毯の先に、玉座があった。


その中央に座るのは、


国王―― ラグディアス・ルクス・アルディア。


重厚な鎧をまとった老王だった。


左右には、王都白銀騎士団とーー


王都天空騎士団。


そして、王女セレフィーナ。


リナたちは玉座の前で膝をつく。


ラグディアス王は静かに口を開いた。


「神殿の報告は聞いた」


低く重い声だった。


「闇の魔導士ヴァルディス」


空気が張り詰める。


「奴は確実に動き始めている」


王はゆっくり立ち上がった。


「世界の精霊は弱っている」


「魔物も増えている」


その視線がリナへ向く。


「そして今」


「大精霊の器が目覚めた」


謁見の間が静まり返る。


ラグディアス王は続けた。


「この世界を救うには」


「四大精霊の力を取り戻さねばならぬ」


重い沈黙。


そして――


王は告げた。


「リナ」


まっすぐ見つめる。


「そなたに命じる」


声が響いた。


「四大精霊神殿を巡礼せよ」


レオンが顔を上げる。


アルも静かに目を細める。


王は続けた。


「風」


「水」


「火」


「そして大地」


「四つの精霊の力を目覚めさせよ」


その声は、この国の命令だった。


「これは王命である」


謁見の間が静まり返る。


リナはゆっくり顔を上げた。


その旅が、どれほど過酷なものになるのか。


まだ誰も知らない。


だが――


世界の運命は、確かに動き始めていた。


第40話 終わり

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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次回もぜひ読んでいただけたら嬉しいです!

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