第41話 巡礼の始まり
王都アルディア城ーー謁見の間。
ラグディアス王の言葉が、謁見の間に重く響いていた。
「四大精霊神殿を巡礼せよ」
それは、ただの旅ではない。
世界の命運を背負う使命だった。
静まり返った謁見の間で、最初に動いたのはレオンだった。
膝をついたまま、静かに頭を下げる。
「王命、確かに承りました」
その声は迷いがなかった。
王はゆっくりとうなずく。
「うむ」
そして、視線はリナへ向いた。
「リナよ」
「この旅は危険だ」
「堕精四騎、そして闇の魔導士ヴァルディス」
「奴らもまた、神殿を狙っている」
王の言葉に、空気が張り詰める。
ノクス=ヴェルディアの森の封印から目覚めた堕精四騎。
その名はすでに騎士団の間でも恐れられていた。
「それでも行くか」
静かな問いだった。
リナは少しだけ目を伏せる。
胸の奥で、精霊の光が微かに揺れていた。
――世界を癒したい。
その想いは、最初から変わらない。
ゆっくりと顔を上げる。
「行きます」
その声は小さかった。
けれど、はっきりと響いた。
「精霊たちを……助けたい」
ラグディアスはその言葉をじっと聞いていた。
やがて、静かに笑う。
「やはり、そなたが選ばれし者か」
その時ーー
隣に立っていた王女セレフィーナが一歩前へ出た。
「お父様」
澄んだ声だった。
「巡礼の準備は、すでに進めております」
王はうなずく。
「うむ」
そして騎士団長へ目を向ける。
そこにいるのは、
王都天空騎士団ーー騎士団長カイル。
「空船の準備を」
「最初の神殿へ向かわせよ」
カイルが深く礼をする。
「はっ!」
セレフィーナが続ける。
「最初の巡礼地は――」
その言葉に、リナたちは自然と耳を傾けた。
王女は静かに告げる。
「天空都市シルヴァリアにある」
「風の神殿ーーリベル・ヴェント」
その名前を聞いた瞬間、エリオスの表情がわずかに変わった。
「天空都市……」
空に浮かぶ伝説の都市。
風の精霊の加護によって浮遊する天空国家。
そして、
空を支配する堕精四騎ーー
ヴォルゼアの領域でもあった。
セレフィーナは説明を続ける。
「天空都市では、ここ数日で空賊が増えています」
「その背後にいるのがおそらく――」
王が低く言った。
「堕精四騎」
「空を閉ざす災厄ーー」
「ヴォルゼア」
空気が一気に重くなる。
アルがゆっくり目を閉じた。
その名は知っている。
忘れることのできない名だった。
かつて――共に戦った仲間。
だが今は、敵。
レオンが静かに言う。
「空賊、か」
セレフィーナはうなずいた。
「天空騎士団も苦戦しています」
「神殿の試練を受けるには、まず空賊を突破しなければなりません」
その時だった。
リナの肩に乗っていたフェルが、ふわりと尻尾を振る。
『空の戦いか』
『久しぶりだ』
レオンがちらりとフェルを見る。
「飛べるのか」
『当たり前だ』
フェルは胸を張る。
『守護神獣をなめるな』
リナは少し苦笑した。
そのやり取りに、緊張していた空気が少しだけ緩む。
王は静かに言った。
「出発は三日後」
「準備を整えよ」
「これは世界の巡礼だ」
その声は、王としての覚悟だった。
「そして」
ラグディアスの視線が、もう一度リナへ向く。
「必ず生きて帰れ」
リナは静かにうなずいた。
「はい」
こうして――
四大精霊神殿巡礼の旅が始まる。
最初の目的地。
天空都市シルヴァリア。
風の神殿リベル・ヴェント。
そしてそこには――
空を支配する堕精四騎。
空を閉ざす厄災ーー
ヴォルゼアが待っている。
世界の運命を変える旅が、
今ーー始まる。
第41話 終わり
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