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第37話 大精霊の巫女

セラフィア神殿の中ーー。


最奥で、精霊の光がまだ揺れていた。


リナの身体を包んでいた銀色の風が、ゆっくりと静まっていく。


砕けた石柱。


崩れた天井。


それでも神殿の中心だけは、不思議な静けさに包まれていた。


リナの肩は、レオンに支えられていた。


胸の奥が熱く、息が少し乱れている。


自分の中で、何かが変わった気がしていた。


「……終わった?」


小さくつぶやく。


その時、空気が揺れた。


神殿の奥から、風ではない、もっと深く古い気配が漂ってきた。


そして、現れた影が巨大な光の姿となる。


神殿を守る存在ーー守護精霊だった。


さっきまでリナたちの前に立ちはだかっていた精霊。


けれど今、その巨大な存在は――


ゆっくりと膝をついた。


「……え?」


リナが目を見開く。


アルも、エリオスも言葉を失った。


精霊が、人の前で跪いていた。


光の声が、神殿に響く。


「……目覚めし者よ」


低く古い声が響き渡る。


「精霊に愛されし者」


「そして」


「精霊に選ばれし器」


守護精霊は、頭を下げた。


「我らは汝を認める」


リナの胸の奥が、強く鼓動する。


「大精霊の巫女」


その言葉に、空気が震えた。


リナは戸惑う。


「え……私?」


精霊は静かに頷く。


そして、光が集まり始めた。


守護精霊の胸元ーー。


そこから、小さな光の紋章が浮かび上がる。


光の紋章。


銀色の精霊文字。


それがゆっくりとリナの前へ降りてくる。


「試練を越えし証」


光はーーリナの胸に触れた。


その瞬間ーー


身体の奥に、温かな力が流れ込む。


まるで精霊が微笑んだみたいに。


リナは小さく息を吸った。


「……あったかい」


守護精霊が言う。


「これは精霊の紋章」


「汝はもう、精霊の契約者」


その言葉に、アルが目を細めた。


「契約者……」


エリオスも静かに呟く。


「大精霊の巫女……」


フェルは金色の瞳をゆっくり細める。


その時ーー


神殿の奥から、かすかな振動が響いた。


ゴゴ……と低く石が擦れる音した。


全員が神殿の最奥を振り向く。


巨大な精霊碑が二つに分かれ、巨大な扉が現れた。


そして、古代の精霊文字が刻まれた扉が、ゆっくり開き始める。


守護精霊が言う。


「封印が解けた」


リナが首を傾げる。


「封印?」


その瞬間、アルの背筋にぞくりとした感覚が走った。


何かーー嫌な予感。


神殿の奥から、強く古い魔力が流れてくる。


神聖で、とても強い。


レオンも黙ってそれを見ていた。


その瞳が、ほんの少しだけ揺れる。


アルが気づいた。


「……レオン?」


レオンは何も言わない。


ただその扉を見ていた。


まるで――知っているみたいに。


その時、レオンの脳裏に、遠い記憶がよぎった。


「……ッ?」


まだ小さかった頃の記憶。


星の降る夜だった。


古い神殿ーー幼いレオンが、石の床に座っていた。


まだ小さく細い体。


長い金色の髪。


夜の寒さで肩が震えている。


目の前には、白い法衣を着た一人の男、神官いた。


その顔は、どこか悲しそうだった。


「レオン」


神官が静かに言う。


「お前には役目がある」


幼いレオンは顔を上げた。


「役目?」


神官は頷く。


「この世界を守る役目」


レオンは理解できなかった。


ただーー静かに聞いていた。


神官は続ける。


「もしーー」


言葉を選ぶように、ゆっくり言う。


「もし大精霊の巫女が現れたら」


レオンの瞳が揺れる。


「その方を守りなさい」


レオンは小さく首を傾げた。


「どうして?」


神官は答えなかった。


ただ、レオンの頭に手を置いた。


「それが」


とても優しい声だった。


「お前の運命だから」


レオンはまだ幼く、意味なんて分からない。


それでも、その言葉は胸に残った。


神官は最後に言った。


「お前は星だ」


「そして」


「強い剣になる」


その声は静かだった。


「彼女を守る剣に」


そしてーーレオンは神殿を出た。


それからずっと探してきた。


戦って、剣を握って、そして生きてきた。


そして今、その少女は、目の前にいる。


銀色の髪。


精霊に愛された瞳。


レオンは静かに思う。


(……やっと見つけた)


胸の奥でーーあの言葉がよみがえる。


――守りなさい。


レオンは小さく息を吐いた。


そして、いつもの顔に戻る。


誰にも気づかれないように。


そしてーーリナの少し後ろに立った。


いつもの位置。


守る場所。


リナはまだ扉を見ていた。


「ねえ」


無邪気な笑顔で、振り返る。


「レオン」


レオンは答える。


「なんだ?」


リナは少しだけ笑った。


「なんかさ」


扉を見ながら言う。


「すごいこと始まりそうじゃない?」


レオンは少しだけ目を細めた。


そして、小さく頷く。


「……ああ」


「そうだな」


その声は静かだった。


まるで、全部知っているかのように。


そしてーー神殿の奥の扉が完全に開く。


古代の光があふれ出す。


この瞬間からーー物語は、


まだ誰も知らない場所へ。


ゆっくり動き始めていた。


第37話 終わり

ここまで読んでいただきありがとうございます!


少しでも続きが気になったら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


次回もぜひ読んでいただけたら嬉しいです!

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