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第28話 夜空から降る闇

王都アルディアの夜ーー


静寂は、突然“裂けた”。


バサッ――


空気が揺れる。


一つではない。二つでもない。


バサバサバサバサッ――


無数の羽音が重なり、夜空を黒く塗り潰していく。


城壁の上に立つ騎士が、震える声を漏らした。


「……なんだ、あれ……」


見上げた先の月が――消えていた。


覆っていたのは、影。


数十。


いや。


数百。


黒い翼が、王都の上空を埋め尽くしていた。


次の瞬間――


ギャアアアアア!!


絶叫ととも影が、一斉に落ちてくる。


「魔物襲来!!」


「警鐘を鳴らせ!!」


ゴォン!!


ゴォン!!


重い鐘の音が、王都全体を叩きつけた。


街が、崩れる。


「逃げろ!!」


「子どもを連れて!!」


町中に人々の悲鳴と逃げ惑う足音が響く。


そしてーー転倒する音。


屋台が倒れ、果物が潰れ、荷車が横転する。


夜空から降る闇の正体は――


影鳥シャドウバード


瘴気をまとった鳥型魔獣。


刃のような嘴。


肉を裂く鉤爪。


低空を滑るように飛び、逃げ惑う人々へと襲いかかる。


ギャアッ!!


「うわあああああ!!」


爪が振り下ろされる。


血が――散る。


「助けて……!」


その瞬間ーー


キィィン!!


夜を切り裂く一閃。


影鳥の体が、空中で二つに分かれた。


羽が、ゆっくりと舞い落ちる。


地面に立っていたのは――


レオン。


剣を構え、空を睨んでいる。


「騎士団、出動」


低く、しかし絶対の声。


「人々を守れ」


「はっ!!」


騎士たちが散開する。


だが――空から魔獣が、次々と降りてくる。


屋根に。


広場に。


路地に。


王都そのものが、戦場へと変わっていく。


その頃ーー


城壁を風のように駆ける影があった。


「急ぎましょう!」


エリオスの声。


城壁の上にあがり、息を整える間も入れず、真っ黒な空を見上げた。


そしてーーエリオスが息を呑んだ。


「……嘘」


リナの顔が青ざめる。


「こんな……」


王都の空を埋め尽くす影鳥。


終わりの見えない数。


フェルが低く言った。


『これは“始まり”だ』


『闇は、もう止まらん』


次の瞬間――


ギャアアアア!!


影鳥の群れが、彼らへと急降下する。


十。


いや、それ以上。


「来る!」


騎士が叫ぶ。


だが――


アルが、一歩前へ出た。


「下がっていろ」


地面を蹴る。


次の瞬間。


“黒”が空へ跳ねた。


キィィン!!


一閃。


一匹、落ちる。


キィン!!


二匹。


三匹。


四匹。


空中で、次々と影が裂けていく。


剣が、風を切るたびに。


命が落ちる。


誰も、声を出せない。


エリオスの胸が強く鳴る。


(……すごい)


それは強さではない。


“支配”だった。


空すら、制している。


だが――キリがない。


ギャアアアア!!


異質な咆哮。


空気が、変わる。


降りてきたのは“それ”はーー


他の影鳥とは、明らかに違う。


翼は倍。


影が、濃い。


目が――赤く燃えている。


エリオスが叫ぶ。


「……上位種です!」


アルが剣を構える。


「来るぞ」


影鳥が、一直線に落ちてくる。


狙いは――


リナ。


「リナ!!」


エリオスの叫び。


だが、間に合わない。


その瞬間――


ガキィィン!!


火花が放たれ、鈍い衝撃音が響き渡る。


そこにいたのはーーレオンだった。


レオンの剣が、爪を受け止めていた。


リナの目の前。


一歩も引かない。


影鳥が咆哮する。


ギャアアア!!


翼が振り下ろされる。


だが――


レオンは、動かない。


ただ、言った。


「守る」


次の瞬間。


キィィィィン――!!


流星のような斬撃。


空気が、遅れて裂ける。


影鳥王は――


何もできずに、真っ二つになった。


ズドン。


巨体が地面に落ちた。


誰も、動けない。


リナが呟く。


「……強い……」


胸が、ざわつく。


その時だった。


ドクン。


強く、脈打つ。


胸の奥が、熱い。


空を見上げる。


黒い雲。


その奥――


“何か”がいる。


(見られてる……)


まとわりつく視線と、まるで触れられているような感覚。


逃げられない。


ドクン。


また、鳴る。


フェルが、静かに言った。


『……気づいたか』


リナが振り向く。


「フェル……?」


金色の瞳が、空を射抜く。


そして、告げた。


『リナ』


『闇が――お前を見つけた』


空の上でーー


“それ”が、笑った気がした。


王都の夜は、まだまだ開けることがない。


むしろ――ここから始まる。


第28話 終わり

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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