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第18話 精霊騎士の覚醒

王都アルディア城壁ーー


石畳は崩れ、あたり一面に砕けた瓦礫の山となっている。


その中で――


「まだ……終わっていない」


その一言が、夜の戦場に落ちた。


アルが、ゆっくりと立ち上がる。


だが確かにーー重く静かに、


すべての視線を引き寄せる“何か”を持っていた。


呼吸も荒く、血が流れている。


足元はふらついていた。


それでも、その瞳だけは――折れていなかった。


「……まだ立つか」


闇の将ゼルヴァが、わずかに目を細める。


その瞬間、空気が沈んだ。


見えない圧力が、城壁全体を押し潰す。


騎士の一人が膝をつく。


「ぐっ……!」


呼吸すら重い。


ただ“そこにいるだけ”で、命を削られるような圧で押し潰される。


だが、アルは前へ出た。


ギリッ——


石畳が軋む。


「こんなとこで……」


一歩。


「終われるかよ」


さらに一歩。


その瞬間――風が、吹いた。


最初は、かすかだった。


だが、次第に、確実に、アルの周囲の空気が“変わっていく”。


リナが息を呑む。


「……アル?」


フェルが低く呟いた。


『……来るな』


アルは剣を握り直す。


もう、その手は震えていなかった。


「思い出してきた」


低く、確信を帯びた声。


「ずっと……忘れてただけだ」


風が強くなる。


砂塵が舞い上がる。


髪が揺れる。


衣がはためく。


精霊たちが、ざわめいた。


――精霊騎士

――守る者

――契約の剣

ーー


アルの瞳が、ゆっくりと開く。


その瞳の奥に宿るのは——深い黄金の光。


「俺は――」


「精霊騎士だ」


その瞬間ーー光が爆ぜた。


ドォン!!


爆風とともに、風圧が城壁を揺らす。


騎士たちが思わず身を引く。


「なっ……!?」


アルの体から、精霊の光が溢れ出す。


風。

水。

火。

大地。


四つの力が、螺旋を描くように集まり——


剣へと収束していく。


レオンが目を見開く。


「……本当に……」


フェルが静かに告げた。


『目覚めたのだな』


『……精霊騎士』


ゼルヴァの瞳が、わずかに歪む。


ほんのわずかだが、“警戒”が宿る。


「……精霊騎士」


だが次の瞬間、ゼルヴァの手が振り下ろされた。


闇が応じる。


空を覆い尽くすほどの無数の闇の槍で、空が黒く染まる。


一つ一つが、命を奪う刃となる。


「終わりだ」


冷たく宣告すると同時に、


ドォォォォォン!!!


闇の槍が、降り注ぐ。


それはまさに、死の雨。


絶対に防ぎきれない数。


騎士たちが叫ぶ。


「防げ!!」


「無理だ!!」


「間に合わない!!」


悲鳴と絶望が広がる。


その時ーーアルが動いた。


「行くぞ」


その姿が——消える。


次の瞬間、月光のように輝く光が走った。


ザンッ!!


一閃。


闇の槍が触れた瞬間、砕ける。


一つではない。


二つ、三つ、十、百——


連鎖するように、すべてが崩壊していく。


ドォォォォォン!!!


闇が爆ぜ、空が揺れる。


衝撃が次から次へと、遅れて押し寄せてくる。


騎士たちが、声を失った。


「……嘘だろ」


「闇を……斬ってる……」


アルは空中で静止し、ゆっくりと剣を振り払う。


光が、軌跡を描く。


「これが——」


静かな声が、戦場のすべてに届く。


「精霊騎士だ」


リナの胸が強く脈打つ。


精霊たちが歓喜する。


――目覚めた

――守って

ーー君は

ーー


その時、ゼルヴァが、低く、楽しむように笑った。


「クククッ、面白い」


闇が、さらに膨れ上がる。


空気が歪み、圧が増す。


「ならば――」


闇が収束し、凝縮され、形を成す。


それは、城壁を覆うほどの巨大な刃。


「試してやろう」


振り下ろされる。


空が裂ける音。


王都が、軋む。


その瞬間——


「リナ!!」


アルが叫んだ。


リナが、即座に応じる。


「うん!!」


二人の間に、光が繋がる。


精霊が共鳴する。


空気が震える。


「精霊よ——」


リナの声が響く。


「力を貸して」


光が集まる。


四つの精霊が、アルへ流れ込む。


アルが剣を振り上げる。


「借りるぞ!!」


――爆発、光が解き放たれる。


フェルが翼を広げる。


『精霊姫と精霊騎士』


『契約が、今ここに揃う』


アルが踏み込む。


「これで——終わりだ!!」


夜空を裂く、光の斬撃が放たれた。


決戦の一撃。


闇の刃と——激突し、


ドォォォォォォン!!!


世界が揺れる。


光と闇がぶつかり合い——


そして、闇とともに、ゼルヴァの体の大半が砕けた。


だが、ゼルヴァはゆっくり愉しむように笑う。


「……やはり」


赤い瞳が輝く。


「あの方の言う通りだ」


その瞬間、空が裂けた。


ビキィッ——!!


王都の上空が、巨大な闇の裂け目が生じる。


そこから溢れ出すのは——


“次元の違う存在”。


圧倒的な重圧感。


息ができないほど恐怖。


身体中が生命の危機を警告している。


存在するだけで世界を歪める気配。


リナが呟く。


「……これって」


フェルが低く言う。


『闇の王の力だ』


空気が凍りつく。


そしてーーゼルヴァが告げる。


「……闇の王は、まだ目覚めていない」


「だが」


「……その時は近い」


その言葉が、未来を断言していた。


戦いは終わっていない。


むしろ——始まったばかりだ。


アルが剣を握る。


レオンが並ぶ。


リナの瞳が光る。


王都アルディア。


その運命を賭けた戦いは——


まだ終わらない。


第18話 終わり

ここまで読んでいただきありがとうございます!


少しでも続きが気になったら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


次回もぜひ読んでいただけたら嬉しいです!

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