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第12話 古代の呪術

王都アルディアの大通りは、先ほどまでの喧騒が嘘のように静まり返っていた。


倒れた王女セレフィーナの周囲には騎士たちが集まり、張り詰めた空気が広がっている。


「王女様を城へ!」


騎士の声が響く。


その時だった。


「待ってください!」


透き通る声が響いた。


リナだった。


騎士たちの視線が一斉に向けられる。


レオンが静かに前に出た。


金色の髪が光を受けて揺れる。


「彼女は治癒の力を持っている」


落ち着いた声だった。


騎士たちは迷ったように顔を見合わせる。


その間にも、王女の呼吸は弱くなっていた。


アルが低く言う。


「時間がない」


騎士の一人が歯を食いしばった。


「……やってみろ」


リナはゆっくり王女の前に膝をつく。


王女セレフィーナの顔は青白く、まるで命の灯が消えかけているようだった。


リナはそっと手を伸ばす。


指先が王女の胸の上に触れた。


その瞬間――ドクン。


強い闇の気配が流れ込んできた。


リナのエメラルドグリーンの瞳が大きく揺れる。


(……強い)


まるで黒い鎖が王女の命を締めつけているようだった。


その鎖は、普通の呪いではない。


古く、冷たい、闇の力。


肩の上のフェルが静かに言う。


『古代の呪術だ』


リナの心に声が届く。


『おそらく数百年前のもの』


(そんな……)


リナは目を閉じた。


胸の奥へ意識を沈める。


すると――精霊たちが集まり始めた。


風の精霊。

水の精霊。

火の精霊。

大地の精霊。

ーー小さな光の精霊たちが、

ざわざわと、リナの周りに集まってくる。


アルが目を見開いた。


「……精霊たちが」


レオンも驚きを隠せない。


リナの体から、やわらかな光が溢れ始めていた。


フェルが小さく笑う。


『やはりな』


その声はどこか誇らしげだった。


『精霊姫の力だ』


リナの手から、淡い光が王女へと流れ込む。


光が闇の鎖に触れる。


――バチッ!


黒い影が激しく揺れた。


「……っ!」


リナの体が震える。


闇の抵抗が強い。


それでもリナは手を離さない。


「……大丈夫」


小さく呟く。


「必ず助けるから」


その時だった。


王女の唇がわずかに動いた。


「……だれ……」


リナは優しく言った。


「リナです」


王女の瞳が、ゆっくり開く。


金色の瞳だった。


そして、その視線は――レオンを見つめた。


王女の表情が変わる。


「……兄様?」


空気が凍りついた。


騎士たちが一斉に顔を上げる。


レオンは一瞬だけ目を伏せた。


だがすぐに、静かに言った。


「……無事で良かった」


その声は穏やかだった。


だがリナは気づいてしまう。


レオンの瞳の奥にある――


深い決意に。


その時、突然、王女の胸の黒い鎖が震えた。


フェルの声が鋭く響く。


『下がれ、リナ!』


次の瞬間。


黒い霧が王女の体から噴き出した。


地面に落ちた霧は形を変える。


それは――影の魔物だった。


騎士たちが剣を抜く。


「魔物だ!」


アルが剣を構える。


「来るぞ!」


レオンが前に立った。


金色の髪が夜のような影の前で輝く。


「リナ、王女を頼む」


その声は、驚くほど落ち着いていた。


影の魔物が牙を剥く。


しかし次の瞬間ーー


レオンの剣が光った。


――閃光。


一瞬で魔物の影が裂ける。


騎士たちが息をのむ。


アルが低く呟いた。


「……やっぱりな」


リナは王女を抱きながら、その光景を見つめていた。


(レオン……)


その剣は、ただの剣ではない。


王族の血。


守るための力。


そして――


世界を変える戦いの始まり。


フェルが静かに呟いた。


『……運命が動き始めたな』


王都アルディアの空に、重たい雲が広がる。


そして、古代の闇。


すべてが交わる時が――


近づいていた。


第12話 終わり

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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次回もぜひ読んでいただけたら嬉しいです!

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