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第11話 セレフィーナの秘密

王都アルディアの朝は――森とはまるで違っていた。


高くそびえる城壁。

朝日を受けて輝く白い建物。

石畳を行き交う人々の足音と、商人たちの呼び声。


焼きたてのパンの香り。

香辛料の刺激的な匂い。

遠くで鳴る鐘の音。


そのすべてが、リナには新鮮だった。


「……すごい街」


思わず、息がこぼれる。


肩の上で、白猫が静かに尻尾を揺らした。


フェルだ。


金色の瞳が、街の奥をじっと見つめている。


『……リナ』


頭の奥に、声が響く。


「どうしたの、フェル?」


リナが小さく笑うと――


『精霊の流れが乱れている』


その声音には、わずかな緊張が混じっていた。


その時ーー


前を歩いていたレオンが、ぴたりと足を止める。


「……感じないか」


静かな声。


アルも、ゆっくりと眉をひそめた。


「……ああ」


街の奥を見据え、低く呟く。


「濁ってるな」


リナは、目を閉じた。


胸の奥に意識を向ける。


すると――


ざわざわとした気配が流れ込んできた。


精霊たちの声。


落ち着かない。


不安げに、揺れている。


(……誰かを心配してる?)


リナは目を開く。


「……この街の中心」


レオンが振り返る。


「中心?」


リナは、ゆっくりとうなずいた。


「強い力がある」


一瞬、迷うように言葉を選ぶ。


「でも……苦しんでる」


アルが短く言った。


「王城か」


その瞬間だった。


遠くから、馬の足音が響く。


人々が、さっと道を開ける。


王家の紋章を掲げた騎士団。


その中央を――一台の馬車が進んでくる。


豪奢な装飾。


王族のものだと、一目でわかる。


やがて、ゆっくりと止まる。


扉が開いた。


現れたのは――


一人の少女。


淡い金色の髪。

透き通る白い肌。

静かに微笑む、儚げな瞳。


――王女セレフィーナ。


ざわめきが広がる。


「王女様……!」


人々が頭を下げる。


リナは、思わず息を呑んだ。


その瞬間ーー


フェルの尻尾が、ぴんと立つ。


『……リナ』


鋭い声。


今までにない緊張。


『あの娘――』


その時ーー


リナの中で、何かが“繋がった”。


精霊たちのざわめき。


不安の理由。


すべてが――


王女へと向かう。


(……え?)


リナの視界が、すっと研ぎ澄まされる。


そして――


見えた。


王女の胸の奥。


黒い影。


絡みつく、鎖のようなもの。


命を締めつけるように――


食い込んでいる。


「……っ」


呼吸が止まる。


『呪いだ』


フェルの声。


低く、確信を帯びていた。


『しかも……古い』


空気が、重くなる。


『とても古い闇の力だ』


そのとき。


セレフィーナの身体が、ふらりと揺れた。


「……っ」


次の瞬間――


崩れるように倒れる。


「王女様!!」


騎士たちが駆け寄る。


街が、一瞬で騒然となった。


リナは、反射的に前へ出る。


「待って!」


「リナ!?」


レオンが驚く。


だが、リナの瞳は揺れていなかった。


まっすぐに――王女を見つめている。


「このままだと……危ない」


アルが低く問う。


「……見えるのか?」


リナは、はっきりとうなずいた。


「王女様、呪われてる」


その一言で、空気が凍りついた。


レオンの表情が変わる。


「……本当か」


静かな声。


リナは視線を逸らさない。


「助けられるかもしれない」


その言葉に、場の空気が大きく揺れた。


フェルが、静かに目を細める。


『リナ』


その声音は――どこか懐かしい。


『やはりお前は……』


言葉は、そこで途切れた。


王都アルディアーー


その空気が、ゆっくりと変わっていく。


精霊の力。


王女に刻まれた古き呪い。


そして――


再び動き出す、遠い過去の因果。


すべてが、ここで交差しようとしていた。


第11話 終わり


ここまで読んでいただきありがとうございます!


少しでも続きが気になったら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


次回もぜひ読んでいただけたら嬉しいです!

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