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第10話 王女との邂逅

王都アルディアの中心。


そこに――白き城がそびえ立つ。


王城アルディア。


青空へ突き刺さるように伸びる白い塔。

幾重にも重なる巨大な城壁。


その威容は、まるでこの国そのものを守る存在のようだった。


門の前で、リナは思わず立ち止まる。


「……ここが、王城」


小さく呟く。


(大きい……)


想像していたよりも、ずっと。


レオンが隣で城を見上げる。


「俺も最初は驚いたよ」


軽く笑う。


「さすが王都って感じだよな」


アルは腕を組み、興味なさそうに言った。


「今ならまだ逃げられるぞ」


「王城なんて面倒事しかない場所だ」


「逃げないよ!」


リナは慌てて首を振る。


その腕の中で。


「ふぁ……」


白猫があくびをした。


フェルだ。


まるでどうでもいい、と言わんばかりの態度。


「フェルは平気なの?」


リナが尋ねる。


金色の瞳が、細くなる。


『城など石の箱にすぎぬ』


『珍しくもない』


「えっ……来たことあるの?」


『……さあな』


フェルは尻尾を揺らした。


それ以上は語らない。


その時――


重い音を立てて、門が開いた。


騎士たちが整列する。


「こちらへ」


三人は王城の中へと足を踏み入れた。


長く続く赤い絨毯。

高い天井。

壁に飾られた古き紋章と絵画。


差し込む光が、床に影を落とす。


「……すごい」


思わず、声が漏れた。


その時、奥の扉が、静かに開く。


現れたのは――一人の少女。


長い金の髪。

透き通る白い肌。

青のドレスを纏った姿は、まるで――


光そのもの。


騎士たちが一斉に膝をつく。


「セレフィーナ王女殿下」


「えっ……!?」


リナは慌ててぎこちなく頭を下げた。


だがーー


「顔を上げてください」


優しい声が、降りてくる。


リナは、恐る恐る顔を上げた。


王女――セレフィーナは、柔らかく微笑んでいた。


どこか儚く、そして、少しだけ寂しげな笑顔。


「あなたがリナですね」


その瞳が、リナを見つめる。


そしてーー


小さく、息を呑んだ。


「……本当に」


「精霊が……」


セレフィーナの周囲にも、淡い光が浮かんでいる。


精霊ーー。


だが――リナの周りとは比べものにならない。


「私は、少しだけ見えるんです」


静かに語る。


「でも……」


リナを見つめる。


「あなたほど精霊に愛されている人は、初めてです」


リナは困ったように笑った。


「そんな……」


「私、ただの薬師で……」


その時、フェルが、ゆっくりと目を開いた。


金色の瞳が――セレフィーナを捉える。


王女の動きが、止まる。


「……猫?」


ほんの一瞬、空気が変わった。


(……何?)


セレフィーナの胸に、微かな震えが走る。


(この存在……)


懐かしいような。


恐ろしいような。


――見上げてはならない“何か”を見たような感覚。


次の瞬間には消えていた。


フェルは再び目を閉じる。


何もなかったかのように。


セレフィーナは、小さく息を吐いた。


そして微笑む。


「今日は、お願いがあって来ていただきました」


「お願い……?」


リナが首を傾げる。


王女は、ゆっくりと窓の外へ視線を向けた。


王都の景色。


その先、遠く北の森――


黒い霧に覆われている。


「王都で、瘴気が広がっています」


その声は、静かだが重い。


「魔物が増えているのです」


「騎士団でも、抑えきれないほどに」


リナの表情が、強張る。


セレフィーナは振り返った。


真っ直ぐに。


リナを見つめる。


「あなたの力なら」


「この王都を救えるかもしれない」


「……私が?」


思わず、声が震える。


レオンが前に出た。


「危険すぎる」


鋭い声だった。


王女は、静かに頷く。


「はい」


「ですが――」


再び、リナを見る。


「あなたにしか、できないことかもしれません」


沈黙が続く。どう答えていいのかリナは困っていた。


その時、フェルが、小さく呟いた。


『……なるほど』


誰にも聞こえない声。


『ついに、始まるか』


金色の瞳が、窓の外を見る。


瘴気に覆われた王都。


そのどこかに――


“何か”がいる。


まだ誰も知らない、深い闇。


それは今、確実に、目を覚ましつつあった。


第10話 終わり


ここまで読んでいただきありがとうございます!


少しでも続きが気になったら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。


次回もぜひ読んでいただけたら嬉しいです!

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