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美少女クシナちゃんの雑貨屋~呪いしか鑑定できませんが、問題あります?~  作者: なすちー
第四章

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54 全然似てないし、私の方が美少女よ

 カフェに入るなり、私たちは店員に軽く事情を説明して、例のローブを羽織った人物――私の「偽物」を探すことにした。


 そして、目的の人物はすぐに見つかった。

一人でテーブル席に座っていたのだけれど、まあ目立つこと、目立つこと。テーブルの上には、これでもかというほどの大量の料理やデザートが並んでいた。


 もぐもぐ、ごくごく、もきゅもきゅ……。

それはもう、見ていて清々しいほど美味しそうに食べている。


 私は確信を得るために足音を忍ばせてそのテーブルへ近づき、まずは後ろ姿から検分することにした。


 後ろから見る限り、間違いなく私のローブだわ。背丈も私と同じくらいだし、これなら見間違えてもおかしくない。


 けれど、回り込んで正面から見てみると、私とは全くの別人だった。


 髪は私より緑がかった黒色。そして何より、知的なのか食いしん坊なのか分からない、赤いフレームの眼鏡をかけている。


 私はその眼鏡の少女と、テーブルを占拠する山盛りの料理を交互に眺め、あまりの別人っぷりに少し拍子抜けしてしまった。


 私は司祭ちゃんと共にそのテーブル席へ近づき、声をかけた。

「少しいいかしら?」


 テーブルに座る赤眼鏡の女は、フォークを動かす手を止めようともせずに答えた。

「ん? なに? アタシ忙しいんだけど?」


 そのローブをどういう経路で入手したにせよ、見ず知らずの他人に話しかけられたのだから、まあ納得のいく反応だわ。


「実はね、そのローブについて聞きたいのよ。それ、私が失くした――迷宮に盗られたローブなの。何か知らないかしら?」


 私は逃がさないように真正面に立ち、単刀直入に問いかけた。


「ふぅーん、なるほどね」


 その女は短くそう答えると、視線を再び目の前の料理へと戻した。

「とりあえず、アタシがこれ全部食べ終わってからでいい?」


 テーブルにはまだ、大量の料理やデザートが山積みになっている。普通なら「待てないわ」と一喝するところだけれど……。


「ええ、いいわよ」


 私は即答した。


 だって、これだけ美味しそうな料理が並んでいるのを見せつけられたら、ただでさえ空いているお腹が我慢できるはずもないもの。


 相手が食べ終わるのをただ黙って見ているなんて苦行、私には無理だわ。なら、いっそのこと相席して一緒に食べてしまえばいいのよ。


「じゃあ、私たちも何か頼みましょうか」


 私は相手の女に許可を取るまでもなく、迷いなく正面の席を引き、どっしりと腰を下ろした。


「え?」


 司祭ちゃんは「この人、本気ですか?」と言いたげな、信じられないものを見るような顔で私を見ている。


 けれど私はそんな視線を涼しい顔で受け流し、困惑する司祭ちゃんを無理やり隣の席に座らせた。


「司祭ちゃん、何食べる? デザートもいいわね」


 私は通りかかった店員を手招きで呼び止め、流れるような動作でメニューを広げた。


 相手の女も特に文句を言う様子はなく、ただ黙々と料理を平らげていた。それなら好都合だしね。


 私はそう自分に言い聞かせ、まずはお腹を満たすことに専念する。



 私と司祭ちゃん、そして目の前の女がひとしきり料理とデザートを堪能し終えたところで、私は改めて本題を切り出した。


「それで? 何であなたがそのローブを着ているわけ? それ、立派な『呪いのローブ』なんだけど」


 私は食後の満足感に浸りながらも、鋭い視線を彼女へと向けた。


「着るもんが何もなかったからだよ」


 女は実にあっけらかんと言い切った。


 いや、着るものがないからといって、普通は呪いのローブなんて選ばないでしょうに。もしかして彼女も私と同じように、呪いの影響を受けない特殊な存在なのかしら。


 私が疑念を深めていると、女は私の内心を見透かしたように言葉を続けた。


「それに、呪いの効果なんてアタシには受けつけない。……君だってそうでしょ?」


 彼女は眼鏡の奥の瞳をいたずらっぽく細め、私に問いかけてきた。


「ええ、そうね」


「だよね。アタシと雰囲気が似ているからね。……そうかー、君がステランが言ってた存在かな」


 さらりと、彼女は聞き捨てならない名前を口にした。


 ステラン。あの、のっぺらぼうのお化けみたいな、迷宮の正体不明な生き物と関わりがあるっていうの?


 それに、雰囲気が似ているなんてどういうことかしら。失礼しちゃうわ、私のほうがいくぶんも――いえ、圧倒的に美少女だっていうのに。


 隣では司祭ちゃんが、一言も漏らすまいと真剣な表情で話に聞き入っている。


「……つまり、あなたがこの街から呪物を回収していた張本人っていうことなのね?」


 私は飲み干したカップをテーブルに置き、彼女の正体を暴くように真正面から見据えた。


「うん、そだね」


 この女は、何一つ隠す気はないといった様子で、実にあっけらかんと答えてきた。


「それは何でかしら?ステランは迷宮が崩壊するって言ってたけど?」

私は続けて質問する。


「なるほど。ステランはそう言ったんだね。別に話しても構わないけど……場所、変えよっか? 色んな人が聞いてるみたいだけど、ここでいいのかな?」


 彼女は周囲の客席を鋭い一瞥(いちべつ)で確認し、どこか試すような口調でそう言った。


 確かに、彼女の言う通りね。ステランや迷宮の核心に触れる話を、こんな不特定多数の人間がいる場所で続けるのは得策じゃない。


 私はその女を連れて、静かに話ができる場所――再び我が家である雑貨屋へと戻ることにした。



 ……ところで、一つだけ想定外の、そして許しがたい事態が発生した。


 私が誘ったのだから、司祭ちゃんの分を支払うのは(やぶさ)かではないわ。

でも、この女、あれだけの量を平らげておいて「お金、持ってないんだよね」なんて涼しい顔で言い出したのよ!


 結局、三人分の莫大な食事代はすべて私の財布から消えていったわ。


 私は店への帰り道、あまりに軽くなった自分の財布を力任せに握りしめ、この女から情報を一滴残らず吐かせた上で、支払った代金はあらゆる手段で回収してやると心に深く誓ったのだった。


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