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美少女クシナちゃんの雑貨屋~呪いしか鑑定できませんが、問題あります?~  作者: なすちー
第四章

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53 これはただの黒いローブじゃない、漆黒の呪縛布なのよ


 司祭ちゃんにはとりあえず水を飲んで落ち着いてもらってから、詳しく話を聞いてみることにした。


「あのですね、大通り沿いを歩いていたんです。そうしたらいつものローブを着たクシナさんがいたんです。声をかけようと思ったんですけど、あれ? そういえば今クシナさんローブ着てないんですよねって思い直して、声をかけるのをやめたんです」


 一気にまくしたてた彼女は、手渡したコップの水を飲み干し、話を続ける。


「でもでも、よくよく考えてみたら、あのローブ……クシナさんが着ていたあの呪いのローブにそっくりだったんです。あの、変に色が霞んだところとか」


 司祭ちゃんは、思い出した興奮からか、空になったコップを両手でぎゅっと握りしめながら話を続けた。


「だから、やっぱり声をかけようと思ったんです。でも、再び辺りを見回してもどこにもいなくて……。だけど、あのローブは確かにクシナさんのものでした」

司祭ちゃんの話を聞いて、なるほどね、と私は腑に落ちた。


 あのローブは呪いのローブだし、私以外が着られるとは思わないけれど、話を聞く限り本物の可能性が高いわね。……って、「変に色が霞んだところ」なんて、やっぱりみんなそういう風に思っていたのね。お気に入りだったのに、心外だわ。


「あ、そうです! 私が見た『似ている人』っていうのも、ローブ姿だったんです」


 リネットが思い出したように、会話に入ってくる。


「あ、こんにちは。私、リネットといいます。探索者をやっています」

「はい、よろしくお願いします。私は教会で司祭をやっているシエスタです」


 私の困惑をよそに、リネットと司祭ちゃんは丁寧な自己紹介を交わし始めた。


 私は初対面の挨拶を始めた二人を交互に眺めながら、状況を整理する。


 どうやら、なぜだか知らないけど迷宮に盗られたローブが、今まさにこの街を歩いている私のそっくりさんが着ている可能性が高そうね。


 みんなの話を聞いて、私はその「そっくりさん」を探しに行くことに決めた。


 もし本当に私のローブなら、丸呑みちゃんだって一緒にいるはずだわ。

私の大部分が入った財産、何としてでも返してもらわないとね。


「わかったわ。じゃあ、その私の偽物を探しに行くわよ!」


 私がそう宣言すると、そこには申し訳なさそうな顔をしたシエルちゃんとリネットがいた。


「ごめんなさい、クシナさん。私、これから探索者協会で仕事なんです」

「私も……このあと迷宮に籠る予定なので。すみません」


 二人の無情な断りを聞き、私は逃げ道を塞ぐように、残された司祭ちゃんの方へと無言でゆっくりと視線を移した。


 そして、彼女のことをじーっと見つめ続けることにした。


「え? 私ですか? えっと……うーん……どうしよう……。……まあ、仕方ないですね。はい、お供します」


 渋々ながらも、司祭ちゃんは承諾してくれた。


 うん、やっぱり持つべきものは友達ね。ついでにどこかで美味しいご飯でも食べましょう。

私はそう密かに計画を立てて、司祭ちゃんと二人で街へ繰り出すことにした。


 シエルちゃんとリネットを見送り、私たちは賑わう通りへと足を向ける。

まずは、司祭ちゃんが私を見かけたという大通りを目指した。



「それで司祭ちゃん。大通りまでは出たけれど」


 私は行き交う人々の姿に鋭く目を光らせながら、改めて当時の状況を聞いてみた。


「具体的に、どういう感じで見かけたのか教えてくれる?」


「ええっと、ちょうどここの大通りで、迷宮とは反対のあっちの方に歩いているのを見たんですよね」


 司祭ちゃんは通りの先を指差しながら、そう答えてくれた。


 ふうん、ということは広場の方ね。

あっちの方には飲食店も充実しているし、もう少し行けば住宅街もあるわ。


「わかったわ。とりあえず、そっちの方に向かってみましょう」


 飲食店街へ向かうまでの間、司祭ちゃんはまめに街の人への聞き込みをしてくれた。


 ちなみに私は、ちゃんと辺りを見回して偽物がいないか確認しつつ、頑張る司祭ちゃんを温かい目で見守っていたの。


 時折、「クシナさん、ちゃんとクシナさんも聞き込みしてくださいよ!」なんて、どこかから幻聴が聞こえてきた気もするけれど……多分気のせいね。


「あの、乾いた黒い色みたいなローブを着た女性、見かけませんでしたか?」

「色褪せた黒い色のローブを着た女性を見ませんでしたか?」

「……薄気味悪い黒のローブを着た女性を……」


 私の愛用していたローブの言われようは、それはもう散々なものだった。


(これ、無事に取り返したとしても……もう着るのをやめようかしら……)


 自分のファッションセンスに深刻な危機感を覚え始めていたその時。


 ついに、例のローブを着た偽物に関する有力な情報が舞い込んできた。


「ああ、ちょうど今、あのカフェに入るのを見かけたよ」


「ありがとうございます!」


 司祭ちゃんは丁寧にお礼を言っている。


 よし、ナイスよ司祭ちゃん。これで目的の人物を発見できるし、ついでに念願のご飯にもありつけそうね。


 私たちは、その偽物がいるであろうカフェの扉を押し開けた。




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