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美少女クシナちゃんの雑貨屋~呪いしか鑑定できませんが、問題あります?~  作者: なすちー
第四章

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51 色々失った気はするけど、お金は増えたわ

 クシナ雑貨店。

 カウンターに頬杖(ほおづえ)をつきながら、私は黙々と売金を数えていた。


 嵐のような六日間が、ようやく過ぎ去っていった。


 確かに懐はおおいに潤ったけれど、それ以上に何か、人間として大切なものを失った気がしてならない。私は積み上がった金貨や銀貨の山をぼんやりと眺め、深く、深いため息を吐いた。


 思い返せば、あの六日間は本当にひどいものだった。


 マーガレットはシルクハットに白のタキシード、黒のパンツを用意して、なぜか私に男装をさせようとした。私は慣れないネクタイを指先でいじりながら、鏡に映る自分の姿を直視できずにいたわ。


 コーデリアことドリルちゃんにはメイド服を着せられ、「おかえりなさいませ!ご主人様」という台詞まで強要されたし。


 そして、一番の強敵はシエルちゃんだった。彼女が特注したという巨大なペンギンの着ぐるみを被せられたのよ。

「これ、私が子供の時に抱いて寝ていたぬいぐるみを再現したんですよ」なんて言われたけれど、そんなの知らないわよ。

 重い頭を必死に支えながら接客したけれど、前は見えないし、後ろに振り向くこともできない。何より中は蒸し風呂のような熱さで、あれは本当に最悪の体験だったわ。


 そんな中で、比較的にまともだったのは、司祭ちゃんの日だった。


 何しろ、用意されたのが普通の修道服だったから。

タキシードや着ぐるみに比べれば、全然マシだったわ。


 いつものように雑貨を売りつつ、客足が途絶えた合間に、店の片隅で二人並んで「お悩み相談室」を開いたの。

 私が神妙な顔つきで相談者の話に頷きながら、隣で司祭ちゃんが穏やかに微笑んで見守る。雑貨の売上とは別に、感謝の気持ちとしてお布施(ふせ)が次々と箱に入っていく光景は、なかなか壮観だったわ。


 あれは精神的な疲れも少なかったし、何より実入りがすごかった。私はカウンターで金貨の感触を指先で確かめながら、あの内容なら、またやってあげてもいいわね……なんて、少しだけ素直な感想が漏れてしまった。


 そして、最後はアニマちゃんだわ。

あいつの癖に、この六日間の中で一番マシな服装だったことには本当に驚かされた。なんだか腑に落ちないというか、解せないというか……。


 用意されたのは、動きやすいフード付きの上着にミニスカート。


フードには猫耳が付いていたし、ミニスカートには尻尾まで生えていたけれど、それでも他の連中の「ペンギン」や「メイド服」に比べれば、天と地ほどの差で着られるレベルだった。


 私は手持ち無沙汰に、腰から垂れたフェイクの尻尾を指先で弾き、複雑な心境で手元の金貨を見つめる。


 今も私はその格好のままだ。もっとも、下には自前のロングスカートを履いて、せめてもの抵抗はしているけれど。


 ちなみに、それらの衣装はすべて私の衣装棚に押し込んである。

もうその大部分は、二度と袖を通すこともないでしょうけど。


 ただ、あのペンギンの着ぐるみだけはあまりにかさ張って棚に入らなかったから、仕方なくそのへんに転がしたままだ。


「本当に、これどうするのかしら……」


 私は最後の一束の金貨をまとめ終えると、部屋の隅に鎮座する巨大な塊を忌々しげに見つめ、本日何度目か分からない溜息を吐いた。


 一番売上が良かったのは、ベリルちゃんの天使衣装だったわ。初日という勢いもあったのかもしれないけれど。


 相談料という名のお布施まで含めていいのなら、司祭ちゃんが文句なしのトップだったはずだけど……まあ、あれは別枠よね。


 私は数え終えた金貨や銀貨を木箱へ戻す。


 どうやらベリルちゃんには、何かプレゼントを渡すことになっているらしい。


 私は詳しい中身までは知らされていないけれど、これ以上厄介事に巻き込まれないなら、もうなんでもいいわ。


 それにしても迷宮の件だけど、どうするかしらね。


 私の雑貨屋の倉庫に置かれている呪物も、少しずつ数が減っていっているようだし。アニマちゃんは「私の宝物がー!」って叫びまくって、「どろぼー、絶対処す!」なんて息巻いているけれど。


 私だって、一刻も早く丸呑みちゃんやローブを回収してほしいわ。


 迷宮の崩壊の件も、迷宮が崩壊しないというのは確かに私たちにとっては良いことかもしれない。けれど、あのステランとかいう謎の生物が、なぜ迷宮を維持しているのかまでは分からなかったわ。


 あいつの言っていることが正しいのだとしたら、向こうにとって迷宮の存続には、何かメリットがあるのかしらね。


 私はぼんやりとそんな思考を巡らせたのだった。


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