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美少女クシナちゃんの雑貨屋~呪いしか鑑定できませんが、問題あります?~  作者: なすちー
第三章 呪物消失編

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49 クシナちゃん招待される5

 私たちが辿り着いた、というより強制的に転移させられた場所は、先ほどと全く同じ場所だった。


 呪物が乱雑に積み上げられた、あの不気味な保管庫のような空間。 奥にある扉は、私が先ほど開けた時のまま中途半端に開いている。景色も、空気も、さっきいた時と何ら変わりはないようだった。


「いたたた……。もう、なんなのさ、一体……」

アニマちゃんが打ったお尻をさすりながら、顔をしかめて立ち上がる。


「痛いです……。目が回って、気持ち悪いです……」

司祭ちゃんも床にへたり込んだまま、ふらふらと頭を振っていた。


 そんな二人を余所に、私はスッと腕を組み、仁王立ちのまま涼しい顔であたりを見渡す。

だって、私はこれが二回目だもの。一度経験していれば、転移の衝撃への身構え方くらい心得たものだわ。


「ここが……?」

 司祭ちゃんは青ざめた顔で周囲を見渡し、震える声でそう呟いた。


「ええ、さっき説明した呪物保管庫のような場所よ」

私は腕を組んだまま冷静に答える。


「うわー、呪物がいっぱい! これ、いくつか持って帰ってもバレないよね?」

対照的に、アニマちゃんは目を輝かせながら、怪しく光る剣や壺に手を伸ばそうとする。


「やめときなさいよ。アニマちゃんのせいで迷宮が消滅しちゃったらどうするのよ」

私は慌てて彼女の手を制した。 絶対、アニマちゃんの場合のいくつかは、持てるだけ全部を意味しているに違いない。


 私たちがそんなふうに騒いでいると、開いたままの扉の向こう、通路の方からひょっこりとあの生き物が姿を現した。


「アヤヤ、何デ人間がいるのデス? ソレニ、先ほどの人間もいるじゃないデスカ」


 ステランは驚いたように大きな目をしばたたかせ、指先で私たちを順番に指差した。


「そんなの知らないわよ。勝手に飛ばされたのはこっちなんだから」


私が投げやりに肩をすくめてそう答えると、ステランはこれ以上ないほど深いため息をつき、頭を抱えた。


「全ク、仕事の邪魔をシナイでホシイデス」


 彼は独り言のようにそう吐き捨てると、私たちが反論する隙も与えず、流れるような動作で片手を天へと突き上げた。


「即刻、退去を命じマス!」


(あ、またこの感覚――!)


 足元から溢れ出すまばゆい光に、私は咄嗟にアニマちゃんと司祭ちゃんの手を握りしめた。一回目と同じ、ふわふわとした奇妙な浮遊感が私たちを包み込む。 そのまま視界が白く染まり、私たちはまたしても光の渦の中へと消えていった。


「「みなさん!」」


 視界が開けると、そこは先ほどの洞窟ではなく、つい先ほどまでいた伯爵邸の応接室だった。

私たちはソファや絨毯の上に重なり合うようにして、ドサリと着地した。案外、あのステランとかいう生き物も気が利くじゃない。……なんて一瞬思ったけれど、いや、それなら一回目の時も最初からここに返してほしかったわ。


 まったく、こんな無理やりな転移を何度も繰り返されたら、たまったものじゃないわね。私は乱れたローブを整えようとして、ふと肌寒さを感じた。


「それにしても……なんだか、急に冷え込んできたわね」


 私が自分の肩をさすりながら何気なく呟くと、隣で立ち上がったアニマちゃんが不思議そうな顔をして私を見た。


「え? クシナっち、そりゃそうだよ。だって……クシナっち、寝間着だもん」


 アニマちゃんの呆れたような指摘に、私は思考が真っ白になり、自分の足元へと視線を落とした。


 は?


 私は慌てて自分の身の回りを確認した。 さっきまで体を包んでいたはずのローブがない!

そして、いつも傍らにいた丸呑みちゃんもない!!


 どうやら先ほどの転移の際、私が身に着けていた呪物だけが、あのごみ溜め……いえ、保管庫へと回収されてしまったらしい。


「でも、これでクシナさん、もう強制的に連れて行かれることはなくなるんじゃないですか?」


 司祭ちゃんがひょこっと顔を覗かせて、慰めるようにそう言った。 確かに、理屈ではその通りだ。原因となっていた呪物が手元にないのだから、もう夜中に拉致される心配はない。……けれど!


 私の丸呑みちゃんの中には、これまでの商売で貯めた大量の金貨や白金貨、回復薬に、売り物の雑貨品や消耗品が、これでもかというほど詰め込んであるのだ。あの中に私の大部分の財産が入っていると言っても過言ではない。


「……ふざけないでよ」


 絶対、迷宮なんて許さないわ。私の大事な資産を勝手に没収するなんて、あの、のっぺらどろぼーも覚えておきなさいよ。


「絶対に……絶対に取り戻してやるんだから!」


私は思い切り拳を握りしめ、震える声でそう固く誓った。



第三章 『呪物回収編』 おしまい






――。

―――。


「全ク……。呪物ダケを回収スルって、言ってマシタヨネ?」


 ステランはあきれたように、目の前の人物へと言葉を投げた。


「そうだよ。アタシは天才だからねっ」


 その人物は事もなげに、自信に満ちた声で即答する。


「人間モ一緒二転移シテきましたヨ。シカモ、二回モ」


「そんなわけないって。天才は失敗しないからね。……そいつが人間じゃないんだよ、きっと」


 自分は悪くないと言いたげに、その天才は幼い声でそう話す。


「トリアエズ、ちゃんと早急二修正しといてクダサイヨ……」


 ステランは溜息をつき、これ以上の追及を諦める。


「うるさいなー。それより、その人間にはちゃんと()()()説明をしたんだよね?」


 天才と呼ばれた少女は、振り向きもせずにステランへ問いかける。


「エエ、適当ニ呪物回収ノ理由ヲ答エテおきましたヨ」


 ステランは肩をすくめて答える。


「ふーん。ならいいや。これで大手を振って呪物回収ができるね。さあステラン、はやく持ち場に戻って仕事してきてよ」


「全ク……、ステラン使いガひどいデスネ」


 ステランは小さくため息をつき、その天才少女の背中に向けてそうぼやいた。


次話エピローグはさみます。

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