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美少女クシナちゃんの雑貨屋~呪いしか鑑定できませんが、問題あります?~  作者: なすちー
第三章 呪物消失編

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45/61

45 クシナちゃん招待される1

 屋敷を飛び出してから、私は一度だけ自分の家に戻った。


 そして息をつく暇もなく、迷宮へ潜る準備を始めた。


 ナイフと愛用の短剣の具合を確かめ、防具を素早く身に着ける。 クシナっちが何も食べていなくて、お腹を空かせているかもしれない。そう考えるとじっとしていられず、簡易食料と水は多めに用意した。


「あとは……ロープに、地面に印や伝言を書くための万能ペン。光源と回復薬も用意してっと」


 私はそれらを大きな背負い袋とポーチの中へ、押し込むようにして次々と詰めていった。ずっしりと重くなった袋を背中にしょって、ポーチは腰に固定する。


 ついでに、奇品や呪物を並べている棚もざっと確認した。けれど、あの「呪いの包丁」の姿はどこにもなかった。使う際のリスクさえ考えなければ、これほど頼りになる道具もないのだけど。


「よし、あとは商店で足りないものを補充してすぐ出発だ」


 私は家を飛び出すと、近くの商店へ駆け込んだ。解毒薬や生活用品、それに寝袋といった品々を買い込み、すでに重い背負い袋へと無理やり押し込んでいく。


ずっしりと増した荷物の重さを肩に感じながら、私は一度も足を止めることなく、一目散に迷宮の入り口へと向かった。


 迷宮の受付を素早く済ませると、私はすぐさま中へと足を踏み入れた。

目の前に広がっていたのは、暗い通路などではなく、どこまでも続くような草原の階層だった。私は第一階層を、次の階層へ続く最短ルートで突っ切っていく。


「シエルが探索依頼を出してくれるんだ。浅い階層の捜索は他の連中に任せればいい」


 私はそう心の中で割り切ると、さらに速度を上げた。背負い袋の中で水筒や荷物がガタガタと音を立てるけれど、今は構っていられない。


 一階層から三階層、そして四階層。私は足を止めずに駆け抜け、ついに第五階層へとたどり着いた。全力で走ったせいで、肺が焼けるように熱い。


「ここからは、少し慎重に探しながら回る必要があるね」


 私はそうつぶやくと、額の汗を手の甲でぬぐい、腰のポーチから自作の地図を取り出した。

長年使い込んで端がボロボロになっているけれど、この階層の構造はすべて書き込んである。私は地図を広げ、周囲の景色と見比べながら、端から端まで見落としがないように確認を進めた。


 今までの草原とはうってかわって、第五階層は鍾乳洞のような洞窟が続いていた。 開けた場所もあれば、狭い洞穴のような道もある。そもそも、ここまでたどり着ける探索者は全体の二割もいない。


 私は死角に注意を払いながら、なるべく速度を落とさずに探索を続けた。曲がり角に来るたび、素早く壁際に身を寄せて奥を確認し、安全を確かめてから次へと突き進む。


「クシナっち、本当にどこにいるのさ……」


 独り言をこぼしながらも、視線は休ませない。岩肌にわずかな違和感がないか目を凝らし、私はさらに洞窟の奥へと足を踏み入れた。




―――。


「……ん」

 背中に伝わる固い感触で、私は目を覚ました。

ゆっくりと体を起こして目を開けると、そこにはしんとした暗い空間が広がっている。


 今までずっと目をつぶっていたおかげか、この暗闇の中でも思いのほか周りの様子が見て取れた。私はぼんやりとする頭を軽く振り、状況を確かめるようにあたりを見回す。


「どこよ? ここ……」


 かすかな独り言が、静かな空間に小さく響いた。


 確か、昨日はみんなと一緒に伯爵の屋敷に泊まったはずだ。眠りに落ちる直前まで、ふかふかしたベッドの幸せな感覚を味わっていたはずなのに。


「うぅ……さぶ……」


 自分の腕をさすりながら見下ろすと、今の姿は昨夜眠りについたときのまま、薄い寝間着姿だった。

あたりを慎重に見回すと、そこにあるはずのないベッドの代わりに、昨夜その横に置いていたはずの私のローブと、丸呑みちゃんが転がっているのが確認できた。


 私は寒さに震えながら、急いでローブを羽織って丸呑みちゃんも身につける。

少しだけ冷え込みが和らぎ、私は一つ、深く息を吐いた。


「一体、なにがどうなって、こうなってるのかしら」


 私は体を起こし、座り込んだままあらためてあたりを確認した。

そこまで広い空間ではなく、増築前の私の雑貨屋と同じくらいの広さのようだった。


 床は大理石のような地面になっていて、まわりには壺やアクセサリー、絵画、それに正体のわからないものがたくさん置かれていた。


 まるでお店か、どこかの倉庫にでも迷い込んだみたいだ。私は暗がりに目を凝らしながら、並んでいるものを一つずつ見つめた。


「え? あれって……アニマちゃんの呪いの包丁じゃない?」


 私は身を乗り出すようにして、転がっている一本の包丁を見つめた。鑑定してみると、アニマちゃんが失くしたと言っていた包丁で間違いない。

 興味を引かれて、まわりに乱雑に置かれている物もいくつか鑑定してみると、壺もアクセサリーも絵画も、すべてが呪物であることが分かった。


「どういうことかしらね?」


 不思議ではあったけれど、深く考える前にまずは喉を潤すことにした。私は丸呑みちゃんから水を取り出すと、一気に飲み干して喉の渇きを癒やした。



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