43 次はどこへ遊びに行く?
入浴から戻り、豪華な夕食を終えると、あっという間に夜が更けた。
私たちは寝る前に私の部屋に集まり、軽く団らんをしていた。
「それにしても、さすが伯爵家というくらい豪華でしたね」
シエルちゃんが、今日一日の出来事を思い返すように言った。
「はい。本当に、忘れられない思い出になりました」
司祭ちゃんも、余韻に浸るように深く頷いている。
「めっちゃお金持ちになったら、いつでもこんな体験ができるかもよー? お金が無限に沸いてくる呪物とかさ、そういうの見つけちゃったりしたらね!」
アニマちゃんが、いたずらっぽく笑いながら身を乗り出してきた。
「そんな呪物、あるわけないでしょ。それに、もしそんなものを使ったら、その後にどうなるかたまったもんじゃないわ」
私は呆れて肩をすくめながら、そう答えた。
私が言うのもあれだけれど、前回一人で泊まったときに比べて、本当に楽しかった。
「ねーねー、今度さ、またどこかこの四人で遊びに行こうよ」
アニマちゃんが身を乗り出して提案した。
「ええ、いいですね」
シエルちゃんも穏やかに微笑んで同意する。
「はい、ぜひ行きたいです」
司祭ちゃんも、期待を込めて深く頷いた。
「仕方ないわね。みんながそういうなら、行くしかないわね」
私も少し照れくさそうにそう答えた。
「クシナっち、素直じゃないんだからー。もう、みんなで行きたいんでしょ?」
「そういうアニマちゃんこそ、みんなで行きたいんでしょ?」
私が少しムッとして言い返す。
「うんうん、私はみんなと行きたいよ! 今度はどこに行く? 海? それとも山かな?」
アニマちゃんは屈託なく笑って、あっさりと肯定した。
「海、いいですね。今度みんなで水着を買いに行きましょうよ」
シエルちゃんが目を輝かせてそう言った。
「私、でも……泳げないんです」
司祭ちゃんは困ったように指先をいじりながら、不安そうに言う。
「大丈夫よ、私だって泳げないから」
私がなぜか胸を張ってそう答えると、アニマちゃんがたまらず吹き出した。
「あはは! クシナっちはなんでそんなに自慢げに言うのさ!」
「よし。じゃあ今度は、またこの四人で海に遊びに行きましょう」
シエルちゃんがパンと小さく手を叩いて、そう締めくくった。
「はい、行きましょうね」
司祭ちゃんも嬉しそうに微笑んで賛同する。
あれよこれよという間に、またこの四人で遊びに行くことが決まった。
なんだかんだ言って、この賑やかな時間は嫌いじゃないわね。
「それじゃあ、そろそろ各々の部屋に戻って寝ましょうか」
私はそう提案した。美少女には良質な睡眠が必要だからね。
「そうですね、私も寝ます。おやすみなさい」
「はい、ではまた明日。おやすみなさい」
「枕投げ大会とかしたかったなー、んじゃおやすみー」
若干一名、おかしなことを言っている子がいたけれど、私たちは解散した。
「ふふ、楽しかったわね。さて、私もふかふかの高級ベッドで寝ましょうか」
私は枕の位置をぽんぽんと整えて、ベッドへと潜り込んだ。
横になった途端、私の意識はあっという間に遠のいていった。
―――翌朝。
私はパチリと目を開けた。
「いつものベッドと違うから、すこし寝坊しちゃったなー」
ずいぶん寝心地のよいベッドだった。
「クシナっちが言ってた通りの、高級ふかふかなベッドだったなー。私も買うのありかもね。サイズは普通でいいけど」
私は顔を洗い、タオルで顔を拭いてから、鏡を見て身だしなみを整える。
「よし! クシナっちに寝起きドッキリしかけよー」
私は口元をニマニマと歪ませながら、自分の部屋を出た。 お目当てのクシナっちの部屋の前へ行くと、ちょうどそこにはメイドのアエラさんが立っていた。
「おはようございます」
私は声を潜めて、アエラさんに話しかけた。
「おはようございます、アニマ様。お早いですね」
アエラさんも、周りに響かないように小声で答えてくれる。
「えへへ、もちろん。クシナっちに寝起きドッキリを仕掛けるためだからね」
私は人差し指を口に当てて、いたずらっぽく笑った。
「さようでございますか」
アエラさんはそう答えるだけで、私を止めようとはしなかった。むしろ、どうぞと言わんばかりに少し脇に避けてくれる。
アエラさんもなかなか良い性格をしてるなーと思いながら、私は慎重にドアノブを回して、部屋の扉をそーっと開けた。
足音を忍ばせて、ゆっくりとクシナっちのベッドににじり寄った。 そして、大きく息を吸い込んで、勢いよく声を上げた。
「クシナっち!!! 朝だよ!! 起きて―!!」
……。
……。
あれ? 何の反応もないな。
私は不思議に思って、ベッドの毛布をばさっと剥ぎ取ってみた。
けれども、そこはもぬけの殻だった。
クシナっち愛用の丸呑みちゃんもローブも、影も形もない。
まるで最初からそこには誰もいなかったかのような、しんとした静けさが広がっているだけだった。




