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美少女クシナちゃんの雑貨屋~呪いしか鑑定できませんが、問題あります?~  作者: なすちー
第三章 呪物消失編

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39 お昼ご飯は大事

 馬車が静かに止まり、私たちは伯爵邸についた。


空を見上げれば、時間的にはちょうど昼頃だ。お腹も良い具合にすいてきたくらいで、おもてなしを受けるには絶好のタイミングだった。


 馬車の扉が開くと、この前来たときと同様、十人ほどのメイドさんや執事さんに出迎えられた。ずらりと並んだ彼らの丁寧な一礼に、三人は目を丸くしている。


「え、なにこの待遇」

シエルちゃんが、信じられないといった様子でつぶやいた。


「えっへん、なんか偉くなったみたい」

アニマちゃんは、この状況を誇らしげに受け入れて胸を張る。


「あわわ、私場違いじゃないでしょうか……」

司祭ちゃんは、あまりの光景に圧倒されて、すっかりおろおろとしていた。


 シエルちゃん、アニマちゃん、司祭ちゃん、三人がそれぞれの反応をする。 私たちはそのまま、屋敷の中へと導かれるのを待った。


 そして、控えていたメイドたちの中から、私が見知ったいつものメイドのリズさんが前に出てきて挨拶をしてくれた。


「おはようございます、クシナさん、シエルさん、アニマさん、シエスタさん。本日はようこそオスマン邸へ。まずは我が主が挨拶いたしますので、ご案内させていただきますね」


 私たちはリズさんに連れられて、まずは応接室に案内された。


 応接室に入る私たち。そこで待っていたのはオスマン伯爵本人、ここの領主だった。


「よく来てくれた。私は知っている方もいると思うが、フェリクス・オスマン。この迷宮都市の領主である。今日は羽を伸ばしてゆっくり楽しんでいただきたい」


 伯爵は、私たちに向けて穏やかにそう言った。


「「「ありがとうございます」」」


 三人の声が、きれいに重なって響く。


「ええ、ありがとう。いただくわ」


 私はいつもの調子で、さらりとそう返した。


 おかしいわね、私だけ合わなかったわ。 三人の完璧なハモりに対して、私の言葉だけが少しはみ出している。けれど、わざわざ周りに合わせる必要もないわよね。


 まずは私たちが改めてお礼を伝え、それから個別に挨拶をすることになった。



「はじめまして。探索者協会で受付をしていますシエルです。本日はお招きいただき、ありがとうございます」


少し前に出て、シエルちゃんが丁寧な礼と共に挨拶をする。


「ああ、よろしく頼む」


領主は穏やかに頷き、返答した。


「はじめまして。教会で司祭を務めているシエスタと申します。この度は聖代教として、大変申し訳ありませんでした」


 続いて司祭ちゃんが、深く頭を下げて謝罪の言葉を口にする。


「ああ、気にすることはない。シエスタさんに何の罪もないのだからね」


 領主は彼女を安心させるように、優しい言葉を返した。


「こんにちは、はじめまして! 探索者のアニマです。うちのクシナが迷惑ばかりかけてすみません。彼女、ちょっとばかり常識がないので……」


 最後にアニマちゃんが元気よく挨拶をしたかと思えば、なぜか私へのダメ出しが始まった。


「はあ? どういうことよ?」


 予想外の言い草に、私はついに反応してしまう。


「ははは。いや、気にする必要はないよ。私たちはクシナさんに助けられたのだからね」


 領主は愉快そうに笑って、私たちのやり取りを温かく見守ってくれた。


「こんにちは、この前ぶりね。今日は招待してくれてありがとう、目一杯楽しむわ」


 最後に、私が伯爵に挨拶をした。気取らない私の言葉に、伯爵はゆったりと満足そうに頷いた。


「ああ、楽しんでくれたまえ」


 それぞれが挨拶を終えたあと、伯爵が私たちに告げた。


「では、まずは軽く昼食を用意したので、楽しんでほしい。食堂の方へ案内させよう。すでに我が娘たちがいるようなので相手をしてやってくれ。私は執務があるので、これで失礼する」


 伯爵はそう言い残して、席を立った。


「では、こちらに」


 リズさんの言葉に従い、私たちは彼女に連れられて応接室から移動した。


 通された場所は大食堂というよりも、プライベートな雰囲気を重視した小食堂といった感じの場所だった。


 調度品の数々は見るからに高級そうだったが、不思議と妙な温かみが感じられる。大きな窓からは明るい光が差し込んでいて、日当たりの良い心地よい空間が広がっていた。


 中に入ると、そこにはすでにあの美女三姉妹が、それぞれ椅子に着いていた。


 テーブルの一番端の席に座っていた女性から、明るい声があがった。


「あら、皆様こんにちは。私はオスマン家長女のマーガレットよ。よろしくね。今日は礼儀とかそういうのは気にしないで、楽しんでいってちょうだいね」


 マーガレットは、自分から見て右側のテーブルの席に、私たち四人をそれぞれ座らせた。


「まあ、まずは挨拶は私たちからおこなうわね」


 続いて、マーガレットの左隣に座っている女性がしゃべる。


「皆様こんにちは。私は次女のベリルと申します。よろしくお願いしますね。……あとで、クシナ様の日頃の様子について、詳しくお聞かせ願えますか?」


 私はもう「様」付けで呼ばれるのには慣れているから、全然気にしていない。だが、他の三人は「え? 様?」といった感じで、あからさまに動揺していた。


 ベリルの隣、左側に座っているのは、アニマちゃんとすでに顔を合わせているドリルちゃんこと、コーデリアだ。


「ごきげんよう、私は三女コーデリアと申します。皆様方、よろしくお願いいたしますわ」


 三姉妹がそれぞれ挨拶を終えて、次はいよいよ私たちの番になった。


 やはりここは、一番の美少女である私から挨拶するのが筋だろう。


「こんにちは。今日は一杯楽しませてもらうわ。泊まらせてくれて感謝するわね」


 私はきちんとお礼を伝えた。こう見えて、私にはちゃんと常識もあるのだ。


 次に挨拶をしたのは隣に座った司祭ちゃんだ。


「はじめまして、皆様。教会で司祭をやっています。このたびは聖代教――」


 さきほどと同じ謝罪を口にしようとした彼女の言葉を、私はすかさず遮った。


「もう、司祭ちゃん。今日は目一杯楽しむ日なのよ? さっさと普通に挨拶しなさいよ」


 司祭ちゃんは少し困惑した様子だったが、すぐに気を取り直して言い直した。


「私は司祭のシエスタです。みなさんとぜひ仲良くなりたいです。よろしくお願いします!」


 うんうん、それでいいのよ。

堅苦しいのは抜きにして、早くご飯を食べたいものね。 


 司祭ちゃんの右隣に座るシエルちゃんが挨拶をした。


「はじめまして、冒険者協会の受付をやっております。みなさん仲良くしてください」


 うん、普通ね。


 最後はアニマちゃんの番だ。


「クシナのやらかしを介護しているアニマです、よろしくね」


 やらかしたのはアニマちゃんの方じゃないかしら。そう思って言い返そうとした、そのときだった。


「いいえ、クシナ様は計算でやっているのです! 断じて適当にそのやらかしをしているのではありません」


 ハーフアップにして丁寧に編み込んだ凝った髪型が特徴的なベリルちゃんが、身を乗り出すようにして勢いよく割り込んできたわ。


 そうね、計算だわ。

うん、絶対にそう。いつか、計画通り!なんて格好つけて言ってみたいものね。


 そんな私の妄想をよそに、目の前では二人の言い合いが続いていた。


「いやー、ベリルさん、全然わかってないねー」

アニマちゃんが呆れたように言うと、ベリルちゃんがムキになって言い返す。

「いいえ、誰よりも分かっているのは私です!」


 モテる女はつらいわね。でも、私はそんなことより、とっととご飯を食べたいのよ。


「はいはい、二人ともいい加減にして。早く美味しい料理を食べましょう」


 私がしびれを切らして口を挟むと、ようやく場が落ち着いた。


「そうですね、クシナ様がそういうのなら」

「どんな料理が出るのかな。もう二度と作るのはごめんだけど、食べるのは別だよねー」


 アニマちゃんも同意して、騒ぎはとりあえず収束したようだ。


 こうして、和やか?で楽しそうな昼食会が始まった。

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