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美少女クシナちゃんの雑貨屋~呪いしか鑑定できませんが、問題あります?~  作者: なすちー
第三章 呪物消失編

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33/61

33 持つべきものは友だわ

 ふふふーん、ふんふふーん♪


 思わず鼻歌が漏れるほど、今の私は上機嫌だ。 何しろ、山のような金貨に加えて、あの白金貨まで手元にあるのだから。

 別に浪費家というわけではないが、これだけ懐が温かいと『丸呑みちゃん』の口も緩もうというものだ。 世界一安全な財布であり、倉庫であり、金庫でもある。私の全財産のほとんどを飲み込んでいる彼女?――性別あるのか知らないけど、今日も私の腰に鎮座している。


 そして、私には野望がある。 この金を使って、是が非でも成し遂げなければならないことが。 何よりも大切な、「あれ」を手に入れるために。


 私は身だしなみを整え、鏡の前で最終チェックを済ませる。 行き先は――探索者協会だ。


 探索者協会に入ると、中は閑散としていた。あの閉鎖騒動直前の、殺気立った混雑ぶりは微塵も見受けられない。


「クシナさーん!」


 明るい声とともに大きく手を振ってきたのは、受付嬢のシエルだ。

まったく、美少女アイドルというのも罪なものだわ。……こうしてすぐに、熱烈に呼ばれてしまうのだから。人気者は本当につらい。私はやれやれと肩をすくめ、彼女の待つカウンターへと向かった。


「こんにちは。この前の騒動、本当に大変でしたね」


 シエルが労うように声をかけてくる。


「そうね。おかげで私の雑貨屋が潰れるんじゃないかって心配したわよ」


「あ、心配事ってそっちなんですね……」


 いつもの私に、シエルは困ったような微笑を浮かべて答えた。


「それにしても、今日は全然人がいないわね」


 カウンターに肘をつき、何気なく問いかけた。


「そうですね。迷宮開放からある程度日が経ちましたし……。元々一週間の閉鎖予定だったんですが、あのごたごたでさらに一週間延びて。ようやく再開放されたところなんですよ」


「なるほどね、知らなかったわ」


 ここ数日、私は家にいれば勝手に豪華な料理が次々と運ばれてくるという、世俗から切り離された生活を送っていたのだから。……まあ、その理由は言わないけれど。


「看板受付嬢ちゃんの方は大丈夫だったの? あの騒動の時、姿を見かけなかったから少しは心配していたのよ」


「あはは……私はずっと眠っていましたね。気づいた時には、すべて終わっていたみたいで」


 苦笑いするシエルを見て、私は「ふーん、そうなのね」と短く返した。 まあ、普通の人間の反応としてはそれが正解なのだろう。あの瘴気の中で、平然と怒鳴り散らしていた探索者たちの方が、生物としてどこかおかしいのだ。


 シエルがふと思い出したように

「そういえばクシナさん、今日はどうしてこちらにきたんですか?何か用事でもあったんですか?」

と聞いてきた。


 そうなのよ。ついつい世間話に流されてしまうところだったわ。 私はカウンターに身を乗り出し、真剣な面持ちで本題を切り出した。


「実を言うとね。……ある『大事な物』が欲しくて、ここに来たのよ」


 私は声を一段低くした。シエルがゴクリと唾を飲み込む。


 期待と緊張が入り混じった顔をする彼女に向けて、私は満を持して言い放つ。



「最高級の、ふかふかベッドが欲しいのよ!」


 ……。 …………。


 一瞬の沈黙。協会の喧騒が、そこだけ遠のいた気がする。


「え? ……あのー、クシナさん? ここは探索者協会ですよ?」


「ええ、そうね」


「街の便利屋でも、家具のセレクトショップでもありませんよ?」


 シエルのもっともな反論に、私は動じず答える。


「ええ、知ってるわ。でも、そんな極上の逸品、どこで売っているか分からないじゃない?」


「えー……それくらいは自分で探して……」


 シエルが呆れたようにため息をつき、お断りの言葉を並べようとしたその瞬間。 私は懐から白金貨を指先で弾き、彼女の視線の先で「チラリ」と躍らせて見せたわ。


「お金はあるのよ。……シエルちゃんにも、いくらか色を付けて渡してもいいけれど?」


「まったく、仕方ありませんねクシナさんは! このシエル、一肌脱がせていただきます!」


 さっきまでの渋面はどこへやら。彼女は手のひらを鮮やかに返し、これ以上ないほどの営業スマイルで胸を叩く。


「ふふふ。やっぱり持つべきものは金……じゃなくて、友達ね!」


 私は上機嫌で、最高級の安眠への第一歩を確信した。


「わかりました。午後からで大丈夫ですか? クシナさんのために、本日は午後の仕事を休みにしちゃいますね」


 シエルは妙にやる気に満ち溢れた表情でそう告げた。やはり持つべきものは友達だ。金貨の……いや、私の美貌とカリスマ性が、彼女との友情をより強固なものにしたに違いない。


「ええ、ぜひともお願いするわ」

 私は満足げに頷いた。


「それにしても、そんなにすぐ休みなんて取れるものなの?」


 一応、確認のために聞いてみた。いくら看板娘とはいえ、仕事中に私用で抜けるのがそう簡単に許されるものだろうか。


「はい、大丈夫ですよ。私、真面目なんで」


 シエルは事もなげに、満面の笑みで言い切った。 ……なるほど。どういうベクトルで「真面目」なのかはあえて追及しなかったが、本人が取れると言い張るなら問題はない。


 午後に再度、探索者協会で合流することを約束し、看板受付嬢のシエルと別れた。



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