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アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第二章 魔術師の卵?  第七話 ニヴルヘイムとの戦争

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209/210

7−17 ウィッカーマンとの戦闘 2

「五体いるウィッカーマンの中央を破壊しましたから、左右二体ずつに分かれていますね。次は一番左端の巨人を倒してみせましょう」


 私が魔術師メイガスの杖で一番左側のウィッカーマンを指し示すと、ウィッカーマンの全身を纏っていた炎の色が変わり出した。

 先程まで真っ赤だった炎の色は青白く輝きだし炎の勢いはどんどんと増していく。

 炎の色が赤く見える時の炎の温度は約800から1000℃だが、炎の色が青く見える時の炎の温度は約1500℃以上となり金属さえも溶かす事が出来る炎となる。

 ウィッカーマンを構成している丸太が如何に魔術によって炎の耐性を持っていたのだとしても、それ程の高温に耐えられる筈もなくウィッカーマンは瞬く間に跡形も無く燃え尽きてしまった。


「ね、燃えている意味って無いと思いませんか。あれじゃ、自殺みたいなものですよ」


 ギュンターさんはまたまた呆気に取られている。


「……一体どうなったんだ?俺には想像もできないが……」

「単純な話です。ウィッカーマンが纏っている炎を活性化させただけです。まあ色々と条件はありますが、その一つは周辺の酸素濃度を変える事ですかね。燃焼に必要な要素は燃えるものと、熱……これは点火源ですね、それと酸素です。燃える物は見たまんまウィッカーマンの身体ですし、点火源は既に体に纏っていました。酸素はだいたい空気中の21パーセント程存在するのですが、酸素濃度を上げると炎の温度は上昇し燃焼速度は速くなります。その結果、ウィッカーマンは早々に燃え尽きてしまったという訳です」


 見た目から脳筋とわかるギュンターさんにとっては未知の領域だったのだろう。だが、わからないのはギュンターさんだけだと思っていたが、周りのみんなも私の話について来れないみたいだ。


「まあ、難しい話は後にして次は右側の二体を同時に倒しましょう」

「同時にだと!」

「これはもっと簡単な理屈です。あのウィッカーマンはゴーレムとしては出来損ないですから常に魔術師が魔術を使って制御しています。その制御を奪えば簡単に破壊する事は可能です」


 私は実際に二体のウィッカーマンの制御を奪い、互いに殴り合せてみた。


「……ウィッカーマンが制御できるのであれば、あのウィッカーマンを味方にできるのではないだろうか?」

「うーん、それはやめておいた方が無難ですね。このウィッカーマンと呼んでいるゴーレムは魔術としては未完成なものでウィッカーマン一体に、体の維持の為に一人、上半身の動きを制御してウィッカーマンに攻撃させる人が一人、同じく下半身を制御して移動させる人が一人、あと炎の制御が一人、そしてウィッカーマンに防御結界を張っている人が一人と最低でも五人の魔術師があのウィッカーマンを動かしているんです」

「……確かに、ジャスパーが集団詠唱と言っていた根拠はその人数でウィッカーマンを作り出した事にあったからな」

「その集団詠唱というのも間違いですね。ゴーレムの作成は集団詠唱には向いていません。私もここに来るまでは、そんな魔術が存在するのかとワクワクしていたのですが、実際見てみたら集団詠唱なんかじゃなくて、部分的に管理をしているだけでした。本来、ゴーレムというのは自立型の巨人の事を指します。その魔術はとても高度な魔術で、どちらかと言えば錬金術に近い魔術なんです」


 ゴーレムの伝承は古今東西色々と存在するが、一番のネックは脳の代わりを何にするかという問題に尽きる。多くはその答えを魔術に求めていたが、脳科学が発達していないこの世界では人工知能を魔術によって創り出すことは非常に困難な道のりになるであろう。

 そんな事を考えているうちに、ガチンコで殴り合っていた二体のウィッカーマンはダブルノックアウトとなり、バラバラになって崩れていった。


「残る一体はこいつを使います」


 私は右手を差し出し、みんなに私の神霊術で出来た物を見て貰った。


「こいつは……、虫?」

「まあ見た目は甲虫の形をしていますが、形は別に何でもいいんです。ちなみにこの子の名前はタイムドッカーンと言います。名前の通り、時限爆弾です」


 ギュンターさんはびっくりして飛び退いた。


「大丈夫ですよ。ここで爆発する事は無いですから」


 私は笑いながら話していたが、周りのみんなは全く近付いてこない。

 仕方がないので、タイムドッカーンを本来の目的に従って空に放つ事にした。


「あの小さな虫型の爆弾で吹き飛ばすにはウィッカーマンは大きすぎないか?」

「全部を吹き飛ばす必要なんてありません。ウィッカーマンは常に二足歩行をしています。つまり人間の弱点をそのまま引き継いでいる訳です」

「人間の弱点?」

「ええ、タイムドッカーンが位置についた様なので早速爆発させますね」


 私がそう宣言して三秒後、最後に残ったウィッカーマンの右膝はタイムドッカーンによって破壊された。

 ウィッカーマンはそのまま右側に倒れ込み、その衝撃で上半身はバラバラとなった。


「人間の行動で一番負担のかかる箇所は腰と股関節、そして両膝です。片方の膝は立っているだけで体重の40パーセントの重さを支えています。ですが、歩行時には片膝にかかる負担は体重の1.2倍から1.5倍となり、負担は増加します。ウィッカーマンの重量はどれだけかは知りませんが、大きさが50メートルだとして成人男性の約28倍となり、その体積は縦・横・高さが全て28倍となると28の3乗となり21,952倍となります。ウィッカーマンは中身がスカスカですから一概には比較出来ませんが、あのウィッカーマン一体の重量は途方も無い重量だと推測できます。その様な重量を持つウィッカーマンの膝を破壊しないまでも傷をつけたのだとしたら、その傷ついた膝は自重を支える事は出来るでしょうか?答えは見た通り、ウィッカーマンは立つ事が出来ずに転んでしまいましたね」


 またもや、周りの皆さんはちんぷんかんぷんな表情を受けべていらっしゃる。


「ギュンターさん、想像してみてください。人間は転ぶ時、咄嗟に手をついたり受け身を取ったりして衝撃を和らげようとしますよね?」

「……ああ、その通りだな」

「ですが、あのウィッカーマンにはそんな器用な真似は出来ません。つまり、そのまま右側に倒れ込んだ訳です。もし、それが人間だったとしたら、最悪のケースだと右肩の脱臼や右腕の骨折、さらに最悪なケースだと頭部強打による脳挫傷や頭蓋骨の陥没骨折なんて事にもなりかねません」


 ギュンターさんは息を呑んで驚愕していた。

 私も想像しただけであちこちが痛くなってくる様な気がするよ。


「ウィッカーマンはその全重量を逃す事なく全身で受け止める事になったんです。大きさや重量は飛躍的に大きくなりましたが、全身の強度は丸太である事から何ら変わっていません。それは投石機の攻撃によって破壊できた事からも推測できます」


 もし、ウィッカーマンの強度が重量と同じく上がっていたのだったら、投石機の攻撃を跳ね返していた筈だ。実際にはそれが出来ず、最初の一体目は脆くも崩れ去ってしまった。


「ギュンター総司令、ご希望通りウィッカーマン五体全てを破壊する事に成功しました。ところで、このままぼーっとしていてもよろしいのでしょうか?今が攻め時ではないでしょうか?」


 ギュンターさんは私の言葉に目が覚めたみたいで、すぐさま全軍に突撃命令を出した。

 時間にして二十分と少々、私の役目はこれにて終了。

 後はクリスがジャスパーさんを救出してくれるのを祈るばかりだ。

呆気なく、全てのウィッカーマンを倒したアリア。


今までの苦労はいったい何だったのかと頭を抱えるギュンターさん。


次回はクリス視点のお話となります。

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