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アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第二章 魔術師の卵?  第七話 ニヴルヘイムとの戦争

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7−18 姫様の奸計 (クリス視点)

 私は今、猛烈に後悔している。

 何故、あの時、この姿になる事を許容してしまったのか。

 姫様のお力を持ってしても時間が巻き戻るという事は絶対にあり得ないが、可能ならばあの時に舞い戻り、あの時の自分を殴ってやりたい気分だ。

 荒ぶる気分をどうにか抑えながら、私はニヴルヘイムの陣地を目指し、姫様から脅された時の事を思い返していた。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 姫様が、朝食の前にお手洗いを済ませたいという事で、私を伴って別室に移った時に事件は起こった。


「姫様、そのままでは下着を脱がすことは出来ません。さあ、こちらに……」

「……クリス、お手洗いのくだりは貴方を誘い出す口実だから真に受けないで頂戴。じゃあ、率直に言いましょう。早速で悪いのだけど、これを着けてジャスパーさんを救出して来てちょうだい」


 姫様の手にある物は、何処かで見覚えのあるマスクだった。

 仮面舞踏会にでも参加出来そうなド派手なマスク……、私の記憶の中でも最上級の黒歴史が頭に甦ってくる。


「……姫様、そのマスクは……」

「素顔で構わないのならそれでも良いけど、それだと後々面倒にならないかしら?だったら、このマスクをつけた方が無難だと思うのだけど」

「そうではありません!あの格好をするのは、あれきりだったはずですが!」

「……そんな事を言った記憶はないわ。……『叡智の書』でも確認したけれど、私はそんな言葉は言っていないわね。よかったわね、あの勇姿をまた見られる日が来るなんて、私ですら想像できなかったわ」

「姫様が仰っていらしゃらなくても、私がたかが人間のためにこの様な恥ずかしい格好を二度もする必然性はないと思います。姫様、今回は諦めてください」

「……クリスがそう言うのなら仕方がないわね……、せっかくこの写真の勇姿をまた見られる日が来るのかと思ったのだけど、クリスが拒否したのなら仕方がないわね……」

「……しゃ、写真?」

「ええ、クリスも見てみる?とても綺麗に写っていると思うのだけど」


 私は姫様から渡された写真を見て愕然となった。

 その写真には、メイド姿でド派手なマスクを着けた私が魔法少女の変身シーンの様な恥ずかしいポーズをとってドヤ顔を披露している写真だったからだ。


「私はこんな恥ずかしいポーズをした記憶はございません!」

「そりゃそうよ。これは私が作ったバーチャルアイドルだから」

「……バーチャルアイドル?」

「ええ、バロールや私が見た姿を元に『叡智の書』を使って既に3Dモデリングを作ってみたの。これで、いつでもVtuberとしてデビューする事が出来るわね」

「……こんなくだらない事のために神器まで使うなんて……」

「くだらなくは無いと思うの。だって、こんな無敵で素敵なアイドルは世の皆様に知らしめないといけないもの!」

「今すぐ消してください!」

「……ええー、どうしようかなー。クリスが私のお願いを聞いてくれないとー、私、間違ってお姉様にエトワール・ド・ラ・リフィーの3Dモデリングを転送しちゃうかもねー」


 私は姫様の言葉を聞いて血の気が引いてしまった。

 こんな姿をした私を、あのフリン様に見られたらと思うと……、絶対に面白がっていじり倒されてしまう。


「お姉様は面白がって、本当にVtuberとしてデビューさせちゃうかもしれないわねー」


 そうなったら最悪だ。

 あのフリン様の事だから、話はVtuberだけではとどまらず、ボーカロイドソフトも開発して、私の顔のイラストをおまんじゅうの様な顔にデフォルメさせ「ゆっくりエトワール」として世に放つことすら厭わないだろう。

 あれは、あのキャラクターだから許されているのであって、私がやっても炎上するだけだという事がわからない筈がないのに!


「……くっ、殺せ……、生き恥を晒す前に……」

「くっコロなクリスには悪いのだけど、時間が無いから早く決めてくれるかしら。このマスクを着けてジャスパーさん達を救出しに行くか、お姉様のお楽しみのためにVtuberデビューをするかどっちが良いのかしら?」

「…………ジャスパー様を救出に行きます…………」

「そう、それでこそ私のクリスだわ」


 私は、あの時の姫様の笑顔を二度と忘れない。

 もう二度と姫様に屈してなるものか!

 そう固く誓うのであった。

再びやって来た、エトワールチャンス!


次回、エトワール・ド・ラ・リフィーの活躍に乞うご期待!

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