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アメイジング・グレイス 〜幼き女神は斯く語りき〜  作者: タカトウ ヒデヨシ
第二章 魔術師の卵?  第七話 ニヴルヘイムとの戦争

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7−12 ウィッカーマン (ギュンター視点)

 ウィッカーマン……、それはケルト王国建国以前に存在していたガリアという地方で行われていた悪しき儀式。

 罪を犯した罪人や、精霊に捧げる供物としての家畜達を巨大な人型の檻に閉じ込めそのまま焼き殺すという悍ましい行為。

 ケルト王国が建国され、ウィッカーマンの儀式は悉く禁止され、今では廃れてしまった儀式ではあるが、いまだに伝承として各地に伝えられている。

 ケルト王国では、子供が悪戯をすると「悪い子はウィッカーマンに閉じ込められて、焼き殺されるよ」と言って躾けたりしているくらいだ。

 つまりはケルト王国民にとってウィッカーマンはある意味恐怖の象徴だったりするのだ。

 そのウィッカーマンが五体現れこちらに向かって前進している。

 大きさは五十メートル程だろうか、単純計算で人の大きさの二十倍以上の大きさになる。

 そんな巨大で、炎によって赤く燃え盛った異形がこちらに向かってゆっくりと近づいて来るのだ。砦のあちこちから恐怖の悲鳴が聞こえてくる。


「総員、落ち着け!トレビュシェットを使って迎撃するんだ。的があんなに大きいんだ、狙いやすいだろう!まずは中央にいる巨人を狙い撃て!」


 俺の命令によって正気を取り戻したのか、多くの兵士達が動き始めた。……中には腰を抜かした奴もいるみたいだが、無理もあるまい。


「ジャスパー殿、魔術であの巨人を倒す事は可能だろうか。幸いな事にあちらからの攻撃は止んでいる。今ならば攻撃魔術に集中できるはずだ」

「……やってみます。それと、至急陛下にご報告をした方が良いと思います。あの巨人群は我々の想定を超えた物です。陛下にお願いしてノエル団長を寄越してもらった方が良いかと思います。もちろん我々も最善を尽くしますが、万が一があるやもしれません」


 いつもは飄々とした雰囲気のジャスパーが柄にも無く緊張している。……これは、魔術師のとっても尋常ならざる状況なのかもしれん。


「わかった、至急陛下に対して伝令を出す。……今すぐ、簡易転移門の準備をせよ!……ジャスパー殿、あの巨人の討伐の指揮をお願いしたい。あの巨人相手だと、私の常識では通用しないからな」

「……それは私も同じ事ですよ。ですが、引き受けましょう。ギュンター殿は砦の防衛に全力を尽くしてください」

「ああ、そちらは任されよう。ジャスパー殿、ご武運を……」

「ええ、互いに生きて帰りましょう……」




 トレビュシェットの攻撃が始まった。

 動いているとはいえ、その歩みは非常にゆったりとしたものだ。非常に狙いやすい。

 だがトレビュシェットによる精密射撃は難しい。

 的が動いているのに加え、撃ち出している石の重さや形がバラバラで石ごとによって弾道がバラバラなのだ。

 だが巨人との距離が徐々に近づくのにつれて、トレビュシェットの攻撃が徐々に当たり始めてきた。

 最初は巨人の右肩あたりに命中したが、少しよろけるぐらいで大して影響はなかった様に見えた。

 だが二発、三発と攻撃が当たり始め、巨人を構成している丸太が弾き飛ばされ、腕が落ち、胴体が削れ、そして八発目の攻撃が当たった瞬間、巨人が崩れ落ちた。


「やったー!やったぞ!!」


 なんとか一体の巨人を撃破したのだが、巨人との距離は砦から僅か五十メートルにまで近づいていた。ここまで近づくとトレビュシェットでの攻撃は不可能になる。

 すでに弓での攻撃によって巨人を構成しているの丸太に命中はしてはいるが、全く意に返さない様子で、ハリネズミのように矢が突き刺さっているのだが、ウィッカーマンはお構いなしに砦に近づいて来る。更に刺さった矢は巨人の炎によって新たな燃料となっているみたいだ。

 魔術師達も攻撃しているのだが、どうやら防御結界によって魔術を防がれているみたいで大して効果がある様には見えない。

 そして、ついに巨人が城壁まで到達してしまった。

 ここまで近付いてしまうと我々には対抗策がない、被害を最小限に食い止めるために城壁からの避難を命じた。


「城壁の上にいる者は速やかに退避しろ!ただし、西門は絶対に死守するんだ。あそこが破られたらモナハン砦が奪われるぞ!」


 そう命じているうちに巨人が城壁に向かって腕を振り上げ強烈なパンチをぶつけてきた。

 石とモルタルによって作られた城壁はいくつか崩れはしたが巨人の攻撃を受け止めたみたいだ。

 ホッとしたのは束の間で、巨人は城壁の上に取り残された兵士が巨人に捕まり、そのまま上に放り投げられ巨人が自ら灯している炎の中に兵士達を投げ入れてしまった。


 ……生きながら炎の中に投げ込むなんて、なんて酷い事をしやがる。


 怒りによって我を忘れそうになったが、あの巨人の前に出ても今の俺ではても足も出せない。悔しさで奥歯を噛み締め、巨人を睨みつける。

 すると、大きな斧を担いだ兵士達が巨人の足元に取り憑いて斧を振り下ろした。

 巨人の足元は、胴体に比べて炎が弱く、近づいても熱によって灼かれないみたいだ。

 兵士達が二度三度と斧を振り下ろしたが、太い丸太で構成されたウィッカーマンには通用せず逆に巨人の足踏みで踏み潰された兵士が続出する始末だ。

 ……なす術がない……。

 我々は巨人による蹂躙に手も足も出せず、巨人が自らの炎で燃え尽きるまで我々は逃げ惑う他なかった。

 ……このままでは、ケルト王国は負けてしまう。

 ここにいる誰もがそう思う悪夢の様な出来事だった。

ウィッカーマンの出現によって、ケルト王国軍が蹂躙されていく様子のお話でした。


実際、初代ゴジラと同じ大きさの巨人が五つ並んでこっちに来たらパニックになるのは間違い無いでしょうね。


次回はジャスパーさんによる、ウィッカーマン攻略作戦です。

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