7−2 陞爵記念パーティー 1 (アルウィン視点)
クーパー子爵とニュートン男爵の陞爵記念パーティーの始まりです。
今回はアリアの従兄弟であるアルウィン視点のお話です。
本日は父上と叔父上の陞爵を記念したパーティーが王宮にて開催されるおめでたい日だ。
私も貴族学校を欠席してパーティーの準備に日々勤しんでいた。
一年前のアリアのお披露目のパーティーの時は全く準備を手伝っていなかったが、いざこうやって最初からパーティーの準備に関わってみるとあの時のアリアの苦労や緊張がわかってきた。……アリア、あの時はお気楽な事ばっかり言って本当にごめん。
朝早くに起きて湯浴みをし、髪も整髪料でカチコチに整えられ、急いで会場である王宮に行き、父上達の後見人となる国王陛下夫妻やドナハ王子に挨拶をして、会場の最終チェックや料理の確認、出席者の席順の確認などやる事がてんこ盛りだ。
僕は未成年だから昼のパーティーだけで済むが、父上や叔父上は夜のダンスパーティーなどにも出席しなければならないので大変だろう。
慌ただしく準備をしている間にパーティーの開始の時間が近づいてきた。
僕は急いでパーティー用の衣装に着替え、髪も整え直してもらった。
そして、出席者の名前と経歴なんかを確認しながら、パーティー中にお腹が鳴らない様に軽食を食べた。その軽食を食べる時も、パーティーの途中でトイレに行かない様にする為に水分は極力摂らない様に気をつけなければならない。
「……アリアのお披露目の時もこんなに大変だったんだな」
「アリア様の方が余程大変だったと思いますよ。アルウィン様は今回のパーティーの主役ではありませんが、アリア様は主役であり主催者の一人でもありましたからね」
「そうか、僕よりも大変だったのか……」
「しかも、アリア様は当時はまだ七歳でしたし、貴族学校にも通っておられないので交友関係は狭く、しかも礼儀作法は奥様や辺境伯夫人の詰め込み教育で習った程度でしたからね」
そうか、交友関係が狭いという事はパーティーの出席者は全て初対面で名前や爵位や家族構成など覚える事はかなりあっただろうし、母上が教えていた礼儀作法は基本的に下級貴族の家族同士のお茶会程度を想定したかなり緩い作法だったので、そっち方面でも苦労しただろう。
僕は本当にわかっていなかったんだな。
今度、アリアに会った時は今までよりも優しくしてあげよう……。
そしてパーティーの始まりの時は近づき、続々と会場に招待客が入場してきた。
僕は両親と一緒に招待客一人一人に挨拶をしていたが、その挨拶の列の中に顔見知りを見つけた。
「アルウィン様、本日はご招待いただき、誠にありがとうございます」
「マーガレット様、ようこそお越しいただきました」
「先日は素敵な誕生季のメッセージカードを頂戴しまして、とても嬉しかったです」
「筆無精の僕のカードをこんなに喜んでいただけるとは恐縮です。アリアに促された時は不安で一杯でしたが、マーガレット様の可愛らしいお顔を見れただけでも出した甲斐があったというものです」
「……まあ、そんな事を言われると照れてしまいますわ」
メグは僕の言葉で真っ赤になっていた。……照れた顔も可愛らしいな。
その後、メグは両親と一緒に会場に入って行った。
ようやくパーティーも落ち着き始め、次第にのんびりとした雰囲気に収まってきた。
僕も貴族学校で知り合った先輩や学友たちと喋りながら過ごしていたが、視界の隅に壁際で一人佇んでいるメグを見かけた。
僕は学友達と別れてメグの所に駆け寄って行った。
「メグ、どうしたの?ご両親とは一緒ではないのかい?」
「お父様とお母様はまだご挨拶周りに出かけているの。このパーティーでは私と同じ位の歳の子供がいないからお話相手がいなくて……」
「……そうだったね。アリアの出席が見送られたから、あまり子供の出席者がいなくて。いても、僕の学友ばかりだから男性ばっかりだしね」
「いえ、アルに謝ってもらう事でも無いから心配しないで。それよりも、貴族学校の事を教えて下さる?私、貴族学校に早く通いたくて待ちきれないの」
「ああ、構わないよ。でも、男性視点の話になるけど、それでもよかったら」
「もちろん構いません。それで、貴族学校はどの様な所なのかしら?」
「うーん、そうだね、貴族学校はある意味、小さな王宮だね。僕の同級生にビビアン王女様が在籍なされているし、ユピテル帝国の公爵の息子が留学してきたりしてるしね」
「まあ!外国の方もいらっしゃるのね」
「そのユピテルの留学生も変わった奴で、何故かはわからないけど寮が僕と同じ部屋になったりしちゃって……」
「えっ?ユピテルの公爵様のご令息様ですよね?貴族学校の寮では、普通は同じ位の爵位の方と一緒の部屋になるとお聞きしたのですが?」
「うん、普通はそうなんだけど、そのユピテルの留学生……名前はロムルスって言うんだけど、ロムルスが二人部屋にしてくれって学校側に頼み込んだそうなんだ。それで、僕の部屋と一緒になったって訳」
「……大丈夫なのですか?噂によると、ユピテルの貴族はわがままな人が多いとお聞きしていますけど」
「他のユピテルの貴族は知らないけれど、ロムルスは全然わがままじゃないよ。ロムルスの付き人のマルコスさんも豪快だけど偉ぶった人でもないし」
「そうなんですか。噂というのも当てにはならないみたいですね……」
ロムルスはユピテルの事をあまり話さないからな、もしかしたら他のユピテルの貴族達はメグが言った様にわがままな人が多いのかもしれない。
その後もメグに貴族学校の様々なエピソードを話し楽しく過ごした。
「楽しいお話をしていただきありがとう、アル。……あーあ、私もアリアと一緒に貴族学校に入学したかったわ」
「アリアは魔術師学校に入学しちゃったしね。あ、そうそう、アリアは無事に高等科に進級したみたいだよ。……アリアの事だから十歳までに魔術師学校を卒業しちゃって、一緒に貴族学校に入学するかもしれないよ」
「アリアでも流石に二、三年で魔術師学校を卒業するのは無理なんじゃ無いかしら。お父様から聞いた話だと、魔術師学校の卒業生の最短記録は五年だと聞いたから」
「その最短記録を作った人がアリアの高等科の先生になったらしいよ」
「そうなの?じゃあ、アリアが五年以内に魔術師学校を卒業するかもしれないわね。……貴族学校で会うのは難しいかもしれないけど、王宮で出会う事もあるかもしれないわね」
「メグの将来の目標は王宮勤めなの?」
「お父様もお母様も王宮勤めだから。私も自然とそうなのかなって……」
「そうか、僕は父上の後を継ぐことになるから、大人になったらメグと会うのは少なくなるのか。ちょっと残念だな……」
「えっ?」
「……ああ、ゴドフリー様がお戻りになられたみたいだ。それじゃあメグ、またね」
「ええ、アルまたね」
僕はメグの父親であるゴドフリー様に挨拶をして、その場を離れる事にした。
久しぶりにマーガレット(メグ)と再会したアルウィン。
アリアとメグは、アリアのお披露目の時から文通をして親交を深めていました。
アルウィンもアリアに促されて時々ですがメグに手紙を送っています。なので、二人で話す時は少し砕けた様な雰囲気になりました。
次回はアリアの父親であるジョンから見たパーティーの様子です。




