7−1 陞爵パーティーの打ち合わせ (ジョン視点)
第七話「ニヴルヘイムとの戦争」スタートです。
私は今、辺境伯閣下のお屋敷で妻と一緒に自分達の陞爵記念のパーティーの最後の打ち合わせをしていた。
兄さん達はパーティー会場の設営の指揮をとっていて、こういった事務的な作業はいつも私の担当になっている。
「……やはり、アリアは出席出来ないみたいですね」
「ああ、陛下も悩まれたそうだが宰相閣下が例外はあまり作らない方が良いと仰られてな……。それに、今は門閥貴族派の問題もあってあの子をあまり人前には出したく無いのも事実だ……」
「そうですね。あの子の周りに大人の貴族達が擦り寄られても困りますし……」
そうなんだよな。あの子は子供よりも、厄介な大人達を吸い寄せる傾向が高いからな。
かといって、男の子が近くにいるよりかはマシかもしれないけど。本当に悩ましい。
「そういえば、あの子は無事に高等科に進級して、しかも魔術師団の団長に師事して貰える事になったそうだ」
「……凄い事なのですよね?申し訳ありませんが、魔術師界隈の事はあまり詳しくは無いものですから」
「それは仕方がないが、神童と呼ばれたジョンからそんな言葉が聞けるとは思わなかったな」
辺境伯閣下は大笑いしていたが、私にだって知らない事はたくさんある。
「魔術師団の団長はな……、言わば伝説の魔術師と言った所か」
「……伝説の魔術師?」
「ああ、五十年前のニヴルヘイムとの戦争で敗北寸前だった我が国をたった一人で勝利に導いたと言われる人物だ。まあ、嘘か誠かは定かではないがな」
「……それでも五十年前に魔術師として戦場に立たれたお方なのは間違いないのですよね。だとしたら、その団長と言われている人物は相当高齢のお方なのでしょうか?」
「それがな、誰も団長の姿を見た人がいない……というかその戦争以降、公の場に団長は姿を現さないそうだ」
「閣下もお会いになられた事は無いのですか?」
「ああ、私も一度もお会いしていない。国王陛下や宰相のレナード殿、そして副団長のジャスパー殿はお会いしているそうだが」
「凄い人なのですよね、そんなお方がアリアの先生となられるなんて……」
「ああ、陛下曰く、ケルト王国内で頭が上がらない人のお一人なのだそうだ。……ただ、その話を聞いたレナード殿は苦笑しておられたが」
そんな話を聞くと、またアリアが私の手から離れて遠くに行ってしまう様な焦燥感に苛まれてしまう。……メアリー、横でニヤニヤしていないで私を全力で慰めておくれよ。
「それで、クーパー家の王都の屋敷はどうなっている?」
「はい、辺境伯閣下に譲っていただきました屋敷ですが、現在引っ越し作業を行なっております」
「ほう、リフォームは終わったのか。その様子だと来月にはそちらで生活出来るようになるのか。……わかっていた事だが、ヒルが寂しがるかもしれんな」
「ヒル夫人には随分とお世話になりました。辺境伯閣下様からもお礼を申し上げていただけませんか」
妻のメアリーが閣下に深々と頭を下げた。
「いや、ガブリエルやジェラルドがいなくなってから妻は寂しがっていたからな。其方達二人のメアリー殿が何度も顔を出してくれて妻は喜んでいる。これからも、妻の顔を時々見にきてはくれないだろうか?」
「もちろんでございます。ヒル様は私にとって、先生のようなお方ですし、孤児だった私にとっては母親の様な存在でございます」
「ありがとう。妻にもその様に伝えておくよ」
辺境伯閣下はにっこりと微笑んで、妻の感謝を受け入れてくれた。
アリアのお披露目からもう一年以上経ったのか。
あの時はメアリーとアリアがこの屋敷で暫くお世話になると決まった時はどうなるかと心配したが、まさかメアリーとヒル夫人がここまで仲良くなるとは想像していなかったな。
そして、最近になって辺境伯閣下の息子であり、次期領主であったリチャード様の良くない噂が聞こえてくる様になった。
おそらく、ガブリエル様やジェラルド様が領地に移動されたのはその辺りの事情が原因かもしれない。
しかし、この事は聞かない方が良いのだろうな。……聞いたとしても多分碌な事にもならない。君子、危うきに近づかずだ。
久しぶりに登場したアリアの父親であるジョン視点のお話でした。
第七話の題名にも書かれていますが、第七話はケルト王国とニヴルヘイムとの戦争が行われます。陞爵パーティーは嵐の前の静けさといった所でしょうか。




