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41話 デンジャラスなドルチェ3 帝 麗の挑戦状

それは唐突に始まった。

「ねえ。今まで攻略してきて誰が1番良かった?」


ベッドの中で甘い時間を過ごした後、嶺さんは腕枕をしてくれて、私の髪を撫でつけながら訊いてきたのだ。


「分かりません。誰が一番とか。言えません。なんか比べるとか出来ないし。誰がとか話したら色々まずいというか、失礼になると言うか。」

私はちょっとだけ考えて答えたのだけれど、

こういう場合どうなんだろう。

普通ってどう答えるものなんだろう。

その都度、その場にいた相手に【あなたが1番です。】

【今までで1番良かったです】とか言うのが常套句なんだろうか。もしかして礼儀みたいなもの? だったりするのだろうか。そうすると私の答えはとんでもない礼儀知らずという事になってしまう。やばい。やってしまったと思った時には遅かった。何とかフォローして誤魔化そうとか考えたけど無理でそもそも頭の中が真っ白だったから何も言い訳すら思いつかない。どうしよう?でも今更どうしようもない。

嶺さんは当たり前に私が自分の事を【1番】だと、【今までで一番素敵でした】とか言うものだと確信して訊いてきたのだろう。

そもそもあまり意味は無く、〔おはよう〕とか〔ご馳走様〕とかそういった挨拶程度の意味だったのだろうと今となっては思うのだ。

そんなにベッドトークで真面目に考えたり話してはいけなかったのだ。

「帝さまが1番ですぅ、」とか適当にデレていれば良かったのだ。


けど、なんだか他の人に悪いと言う気持ちが先んじてしまい。つい。分からないと答えてしまった。

聖也の事も太刀人くんの事も誰かと比べたり、誰が一番とか思ったりしてはいけないような、そもそもこうして嶺さんの腕の中にいるのに、聖也や太刀人くんの事を考えるという事自体にも抵抗があった。今この状況で他の人との行為の事を思い出すとかいうこと自体どうなの?という思いがあった。嶺さんに対しても他の攻略対象者の方たちに対してもである。

なんだか凄くたくさんの男性と身体を重ねてそして品評するというようなことはいけない事のような、自分はそういう事はしたくないなというか、なんかうまく言えないけどとにかく考えたくないのって気持ちだったのである。


「もしかして罪悪感感じてる?君のいた世界ではこういうのビッチとか言うんでしょ?淫乱とか。それで何人もと身体の契りを交わすなんて、罪悪感を感じてる。特に最初に契りを交わした聖也に。違う?」

嶺さんがふと話題の本質を変えてきた。私が言いよどんでいるからそれに対して気遣ってくれたらしい。

のだけれど、そのビッチとかって言葉が私の心にサラッと紙で指を切ったときのような痛みを残した。なんでもない言葉なのだけれど。大した傷じゃないのにやたら痛い、紙でうっかり切ってしまった時の傷のようになんでもないときにいきなりで痛いあの傷と同じ痛みを心に感じた。


‘罪悪感‘そうかも知れない。

私は聖也に合わせる顔が無いように感じている。

聖也の事を好きだ。

この世界に呼んでくれたのも、聖也だし、不老不死の世界で生きていく決心をしたのも、元の輪廻転生の輪に戻らないと決めたのも聖也がいたからだ。

いくらこの世界には貞操観念とか無いからと言われても、元世界で染み付いた貞操観念やら倫理観みたいなものが、私のしている事に対して罪悪感を感じさせているのは事実で、正直めちゃくちゃ罪悪感ある。

攻略が終わると、聖也が二人だけで過ごしたいとか言うので聖也の元に行って、そうすると何故か物凄く懐かしくほっとして、帰巣本能のようなものを感じるのだが、そのときに、〔私は攻略とか言ってあんなことこんな事してしまったのだ〕とか物凄い罪悪感に襲われる。考えないようにしようとしてもやはり罪悪感が付きまとう。しかもその罪悪感があるのに太刀人くんにも惹かれ始めていることを自分でも感じている。一緒にいると楽しい。話をしていてもピアノレッスンしているときも。最近は少しだけ連弾も出来るようになってきたので音を合わせるのがとても楽しい。そして連弾していて彼がとても優しくて協調性があって拙い私の演奏に合わせて弾いてくれる思いやりのある人なのだという事を感じて彼の真面目さとか人間性にも惹かれている自分を否定することが出来ないのだ。どんどん好きになってしまっている。聖也に悪いと思えば思うほど、それに身体を重ねると背徳感もあり余計に好きという感情が高まっていくのを感じる。自分でも怖いと思うのだけれどどうすることもできない。


それにどうしても攻略はしなくてはいけないのだからと分かっていても太刀人くんとの月光亭での夜があった後なのに、またこうして嶺さんと寝所を共にしているという事自体もの凄い抵抗感があった。

でもさっさと攻略しないといけないらしく、こういう事は勢いで行ってしまった方が良い、色々考えたりしだすと大変だから、と、嶺さんに言われて。嶺さんはみんなの順番なんか考える隙も与えず自分のオフの日に合わせてさっさとビーチリゾートへの旅行の予定を入れてしまった。ちょっと長めの休暇を取れたからと。

もう私は聖也と太刀人くんの事だけでも手一杯なのだ。むしろもう攻略を止めたい。

だけど、全員攻略するのが魂の消滅を防ぐ唯一の方法なのだと、魂の消滅の危機なのだと言われると、自分の消滅をかけてまで、貞操を守る必要があるとは到底思えなかった。それに恥ずかしいがどうしても嫌だというほど嫌な人はいない。むしろ、全員魅力的なのだ。最初に攻略対象を選ぶときもお気に入りキャラを選ぶ時もしばらく悩んでしまうほど魅力的なキャラ揃いなのだ。さすが良く出来た乙女ゲームだと思う。みんな違ってみんないいのだ。だから命を懸けてまで止めようとは思えなかった。

それにやらないと魂の消滅。死んでも人は輪廻転生する。それが元居た世界の魂の形。

そしてここは不老不死の世界。

どちらにしても死ぬという事が魂がなくなるという事ではない。

魂の消滅はそれが無くなってしまうという事。私の完全な消滅を意味する。恐ろしい事なのだから。

だから、この攻略に対して聖也もみんなも協力的なのだ。

止めたいとか迷いがあるのは私だけ。

色々考えているよりさっさと済ませてしまったほうがいいと嶺さんは言った。


それで、こうして旅行に来てあんな事やこんな事をしているという状況なんだけど。

ただ行為をするのでは罪悪感があるだろうし、ムードもへちまもないのでは可哀想だと思ってくれたのか、嶺さんはビーチリゾートへの旅行で私をお姫様気分にしてくれた。

こんなにしてもらって文句を言う女性がいたら教えて欲しいくらいだ。

減点を付けるところなどどこを探してもないのが帝 嶺だった。

嶺さんには感謝こそすれ、不満なんて一つも無いのだ。

嶺さんが一番ですとやはり言うべきだったのだと思う。なのに私はそうしなかった。

それが後々色々と響いてくるのだという事を知っていたら、そしたら、私は迷うことなく


【嶺さんが一番です。】と言っていただろう。


「もし、辛いようなら、俺のスキルでこういう事なかった事に出来るよ。君の記憶から消すだけだけど。それで楽になるなら。何なら攻略全員終わったらまた俺がスキルを使って全員分の記憶を消してあげる。終わったら君が寝ているうちに部屋を出ていけば、目が覚めたら全部忘れてる。俺との記憶は消したくないけどね。」

そう言ってパチリと片目を瞑ってウインクして見せた。

「俺との事の記憶も消せるけどね。俺の事は忘れて欲しくないなあ。」


嶺さんのスキルは、対象者の記憶を選んで消す事が出来るスキルだそうで太刀人くんの、前世の記憶を消す事が出来るスキルと似てるけど。前世に限らず今実際に生きているその記憶を消す事が出来るしかも選んでピンポイントで消せるという便利なものだった。だけどさすがに消せる記憶の総量は前世一つ分消せるというほど大きくはないらしい。その分ピンポイント消去できる便利さがある。実際どちらのスキルが優良なのだろうと考えたら嶺さんのスキルのほうだろう。この世界には前世も来世もなり不老不死の世界なのだから。私のような転生者がいないと太刀人くんのスキルは使いどころがないのだから。今まで使ったことはないのだと言っていたし。何のためにこのスキルを持っているのかも分からなかったとも。


確かに私が罪悪感を感じている一連の攻略についての記憶を消したら、やった事自体は消えはしないけど気持ち的には楽になるかも知れない。だけど、輪廻転生の輪のバグを治す為の行動であったという事や、太刀人くんに消したかった私を苦しめていた前世の本当ならリセットされたときに消えていたはずの記憶をスキルで消してもらった事とかって、何だか忘れてはいけない気がする。

だから私はうっかり何の気なしに言ってしまったのだ。

「冷泉様にして頂いた事とかって記憶から消してはいけないような気がします。」


それが嶺さんの心の琴線にけたたましく響いてしまうなどとはつゆ知らずに。


「冷泉の?冷泉の記憶だけは消したくないって事?」

場の空気が一瞬で冷えたのが分かった。嶺さんの青い目がとても冷たくまるで絶対零度の光をたたえているのが見えた。

「いえ、冷泉様のだけってわけじゃなくて。」

慌てて付け加えたけど

無理だった。


私は失念していた。

一晩中嶺さんに抱かれていたので、ずっと身体に嶺さんの愛を注いでもらって、頭の中が真っ白だった。


だから太刀人くんに対して嶺さんが対抗意識をめちゃくちゃ持っていて、何でも財閥同士が対抗関係にあって、お家の事があるから嶺さんは太刀人くんに対して好戦的で何に対しても勝負を持ち掛けているという事を。忘れていた。もっとも太刀人くんはあまりそういうのを気にしてなくてめんどくさいと思っているらしいのだが。


「君にとって、冷泉とのことだけは特別ってこと?これからする他の攻略対象の大和や修二や龍との事は消すかもしれないけど、俺とのことも消してもいいけど、冷泉とのことだけは消したくない。と。」


「そんな事言われると、冷泉との一夜の記憶、

今ここで消しちゃおうかな。」

ふっと笑うと、

私の上に覆い被さってきた。

そしてじっと私の目を見つめてくる。青くてどこまでも澄んだ綺麗な瞳。

「ね?そうしちゃう?俺のスキルで、冷泉 太刀人との一夜の思い出、消しちゃおうか。」

え? ええ?

やだ。そんな事したら助けてもらった感謝の気持ちを忘れてしまう。

太刀人くんには凄く良くしてもらってるのに。それはいけない事のような気がする。

嶺さんの青い瞳には動揺して狼狽する私の慌てた顔が映っていた。

私が慌てるのを見て

嶺さんが笑った。

「嘘だよ。そんな意地悪な事しないよ。

だけど、そうだな。

俺との事が終わった後に俺の胸に抱かれてるのに冷泉の事だけ特別扱いなんて言われたら、

いい気持ちしないのは、君も分かってくれるよね。レディ。


気に入らないな。


いや、やはり、気に入らない。どう考えても気に入らない。


これは冷泉に

挑戦状を出すしか。


今からだと、俺が不利だから。


散々昨日出してるわけだし。


どうしようかな。


後日・・・。


でいいか。


とにかく、冷泉と俺との勝負だ。


どっちが瑠璃を気持ちよくするか。

君には協力してもらうよ。

嫌だとか、言わないよね? レディ。君が俺に火をつけたんだから。

消せるのは君だけだよ。


絶対俺は負けないよ。

冷泉なんかに。」

嶺さんの青い目は凄く本気で真剣であるという意思を強く輝かせていた。

絶対に負けないという強い闘志みたいなものがメラメラと燃えてきているような。

絶対零度だった嶺さんの目が青い炎になって燃えている。


気持ちよくさせるって、勝負って。一体何をする気なんだろう。

そのときの私は、嶺さんが何を言っているのか、何をするつもりなのか、さっぱり見当も付かなかったので、返答もせず、そのままにしてしまっていた。つまり、嫌です。協力とかしません。と言って断るということをその場でしなかった。

そのことが後々私自身を窮地に追いやるという事に考えが及ばなかった。


そうして、凄く優しいと思っていたスイートな嶺さんが

太刀人くんに挑戦状とやらを出したらしい。


何日か経ったある日、太刀人くんにラウンジで会ったときに

「あ、瑠璃、帝との攻略、終わったのか。お疲れさま。」

と言われ、


そこまでは良かったんだけど


「それで、また勝負とかっていいのだろうか?

俺は別に構わないが。瑠璃はそれでいいのか?


【冷泉家の人間たるもの、勝負は必ず受ける、そして勝つ】ってのがあるから、やろうとは思うが。

その身体のほうとか、どうなのかなと思って。無理ではないのか?」

と顔を赤くして言うのだけれど。


「期日は明後日のようだが。」


「お前がいないと勝負にはならんのだから、お前が嫌だというのなら、この勝負はなかったことにしても。」

と歯切れ悪くもやもやとした様子で小声で付け加えた。


挑戦状とやらが太刀人くんのところに届き、そして、その期日は明後日らしい。

その勝負に私が居ないといけないらしい?


立会人? とか? 審判みたいなものという事で私が同席する必要があるとの事だった。

っていうか、嶺さんがなんか凄く変なことを言っていたような気がする。

えっと、あの時なんか頭が真っ白な時でよくわかっていなかったんだけど。

あ、どっちが気持ちよくさせるかとかなんか、そんなことを言っていたような。


「あ、太刀人。」

嶺さんが通りかかった。


嶺「お前、挑戦状受け取った?」


太刀人「ああ、それで、今。瑠璃に。」


嶺「まさか、お前、この勝負はなかったことにとか言い出すつもりじゃないだろうな。」


太刀人「いや、そのつもりだったが。」


嶺「自信ないのか。俺に負けるのが嫌なんだろう。」


太刀人「負けるわけがないと思うが。」


嶺「いや、俺に負けるのが嫌で瑠璃にやめておこうとか言っていたのではないか?弱虫め。」


太刀人「そんな事はない。負けるはずがないだろう。お前なんかに。いつもいつも勝負持ちかけてきては

俺に負けてるだろ。」


嶺「は?この前のスキーでは負けたが、あれはお前の得意分野だからな。俺は練習時間が少なかった。ちょうど仕事が立て込んでいて。」


太刀人「言い訳か。帝。聞き苦しいな。。練習時間が取れなかったのはお前のスケジュール管理が悪かったせいであろう。勝負とはそういうものだ。負けは負けだろう。」


嶺「だから、仕切り直しだって言ってんだよ。勝ち逃げは卑怯だろうが。

レディをどっちが気持ちよくさせるかの勝負。

ちょうどいいだろう?俺とお前のどっちが優れているか。

レディに判断してもらうってのは。」


太刀人「・・・・・・・。」


嶺「怖いのか?俺に負けるのが。」

太刀人「負けるわけがないって言っている。」


嶺「じゃ、明後日だ。またな。」


嶺「レディ、立会人は君しか出来ないのだから断るとかは無しだよ。それにレディの仕事のスケジュールも調べて明後日にセッティングしてあるから、[仕事があるから無理も理由]にならないから、もう逃げられないからね。レディ楽しみにしてて。最高に気持ちよくさせてあげるから。」

そして私に投げキッスをして、出て行った。


太刀人「という事だ。

すまない。やはりなかったことには出来ぬようだ。

勝負となると、やるなら俺も万全の態勢で臨まねばな。

お前に、その、(ここで何故か太刀人くんは目を泳がせて言いづらそうに言葉を続けた)負担を掛けてしまうかと思っていたのだが、断るわけにもいかなくなった。俺なりに善処しよう。瑠璃に悪いようにはしない。むしろよろこんでもらえるように。」


良く分からないが、おずおずと私の頬を両手で挟み、美しい紫紺の瞳でじっと見つめられて、「期待してくれ」とか言われると

[勝負の立会人とか嫌です。]とか言える雰囲気もなく、

「はい。期待しています。」

などとにっこり笑って言ってしまったのだった。

太刀人くんの髪いつも美しく切りそろえられていてサラサラしていて綺麗。こうして話しているときも太刀人くんの顔に零れ落ちてサラッとして揺れて綺麗などと見惚れてしまっていて自分の言葉の意味など考えることもせずに口から出ていた。

それがどれだけとんでもないことを示していたのかなど知らずに。


「おお、俺に期待してくれると、そう瑠璃は言うのだな。そうとあらば、俺も一層精進しよう。万全を期して臨もう。瑠璃の期待に応えるのが男というものだな。それでは早速じいに連絡して色々と入用のものを準備してもらわないとだな。忙しいな。」

などと気合が入った返事が返ってきた。

そして太刀人くんの顔はちょっと赤くなっていたのだ。

私の事を見つめる紫紺の目はうるうるとして色を含んでいたように思う。

「そうか、瑠璃は俺に期待して。」

などとブツブツと独り言を言いながら太刀人くんは何か準備があるらしく部屋に戻っていった。

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