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40話 デンジャラスなドルチェ2 クレセントムーン

********


帝 麗はイライラしていた。

何がって、聖也はともかく、(聖也は初めからお気に入りキャラに登録されていたから仕方ない。一応目をつぶるというか別格だと思って我慢する。いずれ、お気に入りキャラの座はこの帝 嶺のものになると思うし、そう遠くない未来だとは思うけどとビーチリゾートから帰ってきてすぐに聖也に瑠璃を取り返すように奪われたことがかなりショックだったがこれも仕方がない事、お気に入りキャラなんだからと一応自分を納得させているが、)冷泉と瑠璃の距離感が気に入らないのだ。

なんだかんだピアノレッスンだとか言って冷泉の部屋にいつもいつも入り浸っているように見えるし、食事の時もなんかアイコンタクトを取って楽しそうにしている気がする。(気のせいかもしれないし、もはや被害妄想の域に達しているというのもあるが嶺の目にはそうみえてしまっていた。)


聖也は気にならないのか。なんでやめさせないんだとか、お気に入りキャラなんだからお前が何とかしなくてはいけないだろなどと自分とは関係ないところにまで怒りの矛先がいってしまっているくらいなのだ。


瑠璃と二人きりの時間が欲しい。そう思うけど、理由がない。冷泉のようにレッスンとかいって部屋に呼び出す口実もないし、あんなに楽しかったビーチリゾートへの二人きりの旅行が終わってしまって、攻略だからとかいう理由付けもできなくなり、しかも冷泉は前世記憶消しをするという冷泉のみ持つ稀有なスキルを使った攻略とは別のやらなくてはならない使命ともいうべきタスクがあるから毎月満月の晩には瑠璃と一緒にいれるというボーナスステージが用意されているのだ。ずる過ぎると思うしかない。そこでも【なぜ冷泉だけ、ケッ】とか思ってしまうのである。


自分の中では瑠璃の事が好きだという事に気付いてしまった今この状況は嶺の心を無限に乱す。

本当は一日じゅう独占したいくらいなのだ。

だけど、瑠璃の傍にはいつも聖也がいるし、キッチンで料理を作っている修二の手伝いをしたりして、修二ともなんだかんだ、いつも一緒にいる気がする。良く一緒に買い物に行っている様子も見掛けているし。


それに、冷泉もいつもいつも瑠璃に付きまとっているような気がする。

(だから、俺が近づく隙がないのだ。俺の方が何日も旅行で一緒にいたのに。

変な話冷泉より抱いているはず。)

そう思うとなんだか凄く負けた気がした。


ちなみに大和のソロ曲の作詞をしようとして大和とラウンジのピアノの前に座っている瑠璃の耳元で、

「素敵な曲だね。瑠璃。」

って囁いてみたんだけど瑠璃は耳が弱いから、嶺の声にぴくっと反応していたもののすぐ、気を取り直し、体制を固めて、

「はい。今度の大和君のソロ曲なんです。いい曲にしなくてはと奮闘中です。」

とにっこりとビジネススマイルで応えてきた。

嶺の「瑠璃」呼びに身体が反応しているはずなのに、完璧に制御して仕事モードを続けている。

仕事中となれば、嶺が付け入る隙もない。

(部屋に呼んで二人きりの時間が過ごしたいなあ。「旅行楽しかったね」とか話したりしてイチャイチャしたい。)

そう思うのだが、いかんせん、旅行の間に止まっていた仕事を片付けなくてはいけないらしく忙しそうなので、邪魔をするわけにもいかない。

それは分かってはいるのだが、大人げなくイライラが止まらないのだ。

うまい具合にソロ曲のオーダーがあった大和が仕事とはいえ、瑠璃を独占しているのも気に入らない。

なんで、このタイミングのソロ曲が俺じゃないんだと嶺は事務所に殴り込みに行きたいくらいの気分だった。もちろん、殴り込みになど行くわけもなく、自分のソロ曲のほうが先に出させてもらっているから文句をつけるわけにもいかないのだ。大和はたまたま瑠璃に作ってもらえて運がいいだけで、たまたまこのタイミングなだけであるのだから。


腕を組んで部屋の中をもう何回もぐるぐる回っていた。


はあ、イライラする。


自分が負けたみたいな気がしてそれが気に入らない。

いや、完全に負けている。そもそも修二にすら負けているような気がする。一緒に料理をしているという点で少なくとも嶺よりは接触の機会があるし、会話も多いだろう。

無関心な様子の龍にだけは負けていないかも知れないけど、龍は『女なんかめんどくせえ、俺は女には興味ねえし、どうでもいい。』ってスタンスだから勝負の対象外だからそれと比べるわけにはいかない。

まあ、攻略前だし、どうなるかは分からないが。今のところは蚊帳の外の存在である。


負けたと言えば、瑠璃につい尋ねてしまったのだ、そんな話はしなければ良かったと言葉が口から出てから後悔したが、出してしまった言葉は瑠璃の脳内で、困ったという解釈をされて、

「わかりません。誰が一番良かったとか言えません。」という言葉になって返ってきてしまったのだから。

嶺はいつも「嶺さんが一番です。今までで一番素敵でした。」

とか言われるのに慣れてしまいそう言ってもらうのが当たり前だと思っていたのだ。

だから、いつものように何の気なしに訊いてしまった。

が、そんな事聞くのは失礼だったのだなと後で後悔した。

瑠璃のように純粋な子にそのような質問はしてはいけなかったのだ。しかも多分言われるまでは他の男のことなど、考えてはいなかったであろうことに気付いて、自分が余計な事をいったばかりに自分で自分の首を絞めることになってしまったのを後悔した。


何となく気まずく、記憶消去の話題をしてみたが、またしても、冷泉の事は【冷泉との月光亭での事だけ】は記憶を消したくないと言う。

それが嶺にとってどれだけ嫉妬を煽るか多分瑠璃は知らないのだろうし悪気無くつい言ってしまったのだろうことは想像に難くなかったが、嶺はプチンと来てしまった。

自分で言い出しておいて、何なんだが、自分との旅行中に、攻略をしているのに、冷泉との攻略旅行の事‘だけ‘は絶対に消してはいけない記憶なのだと、そう言われて、【じゃあ、俺のは消していい記憶なの?】と冷泉以外の他の男との事は消して良くて、冷泉だけ。冷泉だけ特別なのかと。

そう思うと、顔から火が出そうなくらいに嶺の頭の中で嫉妬の感情が焼けつくして、おかしくなりそうな気がしていた。


【こんなに君を好きなのに、俺は冷泉に負けているの?】

その言葉は嶺の心の中で大声で叫ばれたけど、口から出て瑠璃のところに届くことはなかった。

青く燃えるような冷たい怒りと嫉妬の炎は嶺にその場でビーチリゾートバカンス中の瑠璃との情事の記憶をいくつか咄嗟に消去させた。

全部消してしまう前に冷静になって止めておいたが、それでも何回かの事は消してしまった。散々していたので、そんなにおかしなことにはならないと思ったというのもありそのままにしておいた。

それが思わぬとこで役立つとはそのときは思ってもみなかったのだが。残しておいた記憶だけでも瑠璃にとっては甘い快楽に浸った思い出になっているはず。蕩けるような時間のはずだ。自分が攻略旅行の思い出においても冷泉に引けを取ってるとは思えなかった。が冷泉の事だけは記憶を消したくないと言っていたことがどうしても気に食わないと思ってならなかった。


とにかく、冷泉より自分の方が瑠璃にとって優れているのだという事を示さなくてはならない。

実際勝負となれば冷泉に負けるとは思えなかった。

冷泉は真面目で、嶺のような女性遍歴もなく、女性を【婦女子】などと呼んだりしているくらいなのだから。

冷泉は嶺のように遊びで女性と浮名を流すとかただ単に肌恋しくてついそういったことになってしまうなどという事もない。つまり経験値が圧倒的に低い。ことこの件に関してだけは負ける気がしなかった。

奴は女の身体の事など少しも分かっていない。だから大丈夫。俺に勝ち目がある。

ここで実際に体験してもらって俺の方が圧倒的に良いのだという事を瑠璃に身体で分からせたい。

聖也はともかく冷泉には勝てる絶対に。

勝たなくてはいけない。そしてやっぱり嶺さんの方が好きなのと思わせたい。何なら嶺さんが一番とか思って欲しい。嶺でなくてはだめだとか思われたい。


冷泉 太刀人VS帝 嶺では嶺の方が勝ちなのだと瑠璃に認識して欲しい。


帝 嶺は自室のライディングディスクに向かった。ペンを取り今まで何度となく書いた文章を何度となく送った相手に対してしたためる。

ふと窓の外を見ると幾千もの星が瞬いていた。切り取った爪のように細く冷たい三日月が嶺を事を見下ろしていた。帝はため息をついた。

ああ瑠璃に「今夜は月が綺麗ですね。」とでも言えたらいいのに。

実際に月光亭で攻略を出来る冷泉は毎回言ってるのだろう。


そんなことを嶺が思っているとき、聖也が瑠璃に話しかけていた。

「ああ、今夜は月が綺麗ですね。」

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