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35話 ビーチリゾート4 帝 嶺のスキル

そう俺のスキルは、記憶を操る力

人の記憶を見ることができ、その中から自在に好きな記憶を消すことが出来る。

この便利なスキルのおかげで、今まで女に不自由したことも別れ話でもつれたこともない。

当たり前だ。上手く記憶を消しているのだから。付き合っていた事さえ忘れさせることが出来るのだから話がもつれるはずもないのだ。

しかし、見たくないものを見てしまう事もあるし、更に人というものは存外簡単に嘘をつくという事も知っている。更に人の心は自分の事でさえ、本当の気持ちに気付かないこともある。自分に嘘をついている事もあるので、記憶だけが真実とも言い切れないのだ。

そんな俺のスキルはやはり、今回もうっかり使ってしまうと後で痛い事になるという毎度のことになってしまおうとしていた。

瑠璃の肌の水着では分からないそんなところに明らかに人の歯型と思われる傷跡の薄っすらとした痕跡。その傷と日にちにピンポイントでヒットした記憶の断片。


ま、そういう事だよね。

それは、おぞましいほどの嫉妬に取りつかれた男に瑠璃が凌辱されるところを映していた。

何でもないよって顔してるけど、そうだよね、セイヤン。無理だよね。こういうの。攻略とか言う名のLOVEゲームに君みたいに女に執着している男が耐えられるはずないんだよね。

聖也は瑠璃に執着している。

それは見ていて明らかだ。

一度召喚した後に元の世界に帰したという経緯も多分俺たちに汚されたくなかったからではないだろうか。と思っている。何があったのかは俺には分からないが。

好きで好きでたまらないのだという事だけは同じに瑠璃を好きな俺には分かり過ぎるほど分かる。

まあ、誰が見ても分かるという気もするが。

でも、ちょっとおぞましいよ。それ、それって洗脳っていう名前のDVだから。

そんなことで彼女の心を縛り付けるのは無理なんじゃないかな。

いや、上手くいっているんだろうけど。

上手くいっているからこそ、俺の心に反吐が出るような反発感と嫌悪感を起こさせた。


だったら、「攻略はやらなくていい。」とでも発言すればよかったのでは?

瑠璃も冷泉にスキルで一番辛いところは消してもらったからもう平気だと大丈夫だと言っていたことだし。


どうせ、この俺との攻略のための旅行から戻ったら、またこんな事をするつもりでいるのだろう。

瑠璃はそれは納得しているのか?

いや、洗脳されているのだから納得済みなのだろう。

が、

しかし、


俺はもう瑠璃に惚れている。

他の女とは違う。

彼女は別の生き物なのだから。

俺にとって他の女と違う唯一無二の存在。

それが、

あんな風に洗脳の為に身体を傷つけられるのを分かって黙って返せと?

そんな事俺に耐えろと?

知ってしまった今できるとは思えなかった。


【私以外の男に感じるとかいうことは許しませんよ。】

ビシッ!

いやいや、無理だよ。それ。

俺はたくさんの女と付き合ってきたから知っている。

一人に絞るのとかは不可能だって事。

俺もそうだが、女だってそう。

【あなただけよ。あなたしかいないわ、嶺】

って言われても、記憶を覗けば、透けてしまう本当の気持ち。


俺はそれを指摘して攻撃したりしない。

がっかりもしない。

当然だと思うからだ。

俺は自分に自信がある方だと思う。

俺より姿形、所作、才能、財力、それにベッドでの力量と気配り、やさしさ、どれを取っても他のやつに負ける気がしない。


が、恋愛においてはそれだけではない何かがあるのだ。

相性もそうだし、

波長が合うかも。

また対等に話が出来るかとかもである。

俺が素晴らしいからと相手が引け目を感じたりしたらそれもダメ。

舐められてもダメ。


自分より気が合う相手をパートナーが見つける可能性ももちろんあるのだ。


だから俺は去る者は追わず来る者は拒まずである。


そうしていないと、無駄に戦いになり、気力を浪費する。

一人の女を自分に縛り付けることなど考えたことすらなかった。


それを、こんな。

【スキルを使ってもらった後にまでどうして、一晩中抱かれる必要性があるのです?

帰りの車中でまで、そんなことをするなんて、運転手もいるのに破廉恥なことを。

恥ずかしくないのですか?

あなたのしている事はただの淫乱な、はあっ、

もう二度とこんな事しないように、あなたの身体に私のこの痛みを。

身体で分かってください。瑠璃。】

がぶっ。

っておいおい、やっぱりそんな、噛みついて。

【痛い?当たり前です。痛いようにやってるんですから。痛くなくてはお仕置きにならないでしょう?

あなたは今私にお仕置きされてるんです。私の心の痛みはこんなものじゃないんです。もっと痛いんですよ。】

がぶっ。

って、全く、これからって時に嫌なもの見ちまったな。

っていうかこれ見つかるようにわざと、消えないやつ、付けたのか。

他の場所は治ってて傷は残っていないし。

薄っすらとだが残るようにしたのは、

俺に対しての牽制?


自分のものだという主張なのか。

にしても、とんだ、洗脳だし、DVだな。


【ごめんなさい。ごめんなさい。】

って

謝らなくてはならないことしてるのは

聖也の方だろ。

つうか、謝らなくていいだろう。

これはこういうゲームなんだから。


見なきゃ良かったな。

いや、これは俺が見たくなくても見るように誘導された情報。

俺のスキルを知っているからこその牽制。

ふう。セイヤン、

俺がこれで、萎えると思ってのことなのか?それとも。

これ、消してやるか。

いや、残しておいた方がいいのか。

またこんなことがあったときに初めてだと何が何だか分からないだろうし。

っていうか、

もうこんな事をさせないようにしなくてはならないが。

どうしたものかな。


こんなに嫉妬して、セイヤン。クールで落ち着いて余裕かましてるから、

こんな事してるとは思わなかったよ。


つうか、は?

水着買いに行ってたんだ。二人で。

悪い事しちゃったのか。


つうか、ちょっとこれ、オッサンっぽ。

俺こんな事しないし。

いくら貸し切りにしてても、


嫌われるのが怖い、ガン見していやらしいとか思われたくないとか思って直視することすら出来なかった水着姿。

俺の事なんだと思ってるんだか。

何このプレイ。風呂で水着とかって。自分がやりたかっただけ?


あ、これ以上覗き見していたら、まずいな。

いくら何でも、失礼か。

もう覗き見しないようにしないと。

それにしても

聖也、セイヤンがねえ。


なんか、そんなことを考えてると、ワインでとろんとした瑠璃がベッドで寝てしまいそうになってる。

首には俺がプレゼントしたネックレス。

俺がプレゼントしたドレスを身に着けて。

よく似合っててよかった。

このドレスを買うときも脱がせるのを楽しみに買ったというのもあるが普通に瑠璃の可愛さと美しさで充分に似合っていたから脱がす目的以外にもドレスの用途はきちんと果たせていた。

それにしてもこれから行う攻略が怖くて、こんなに酔ってしまったのか。

冷泉の時もこんなに酒とか飲んでいたのだろうか。


うっかりまたスキルを使いそうになって、俺は自制して自分を止めた。

いや、冷泉との間に何があったかとか、冷泉はこうしてたとか、そんなことは知る必要はない。

うっかり発動させてしまい、後で見なきゃ良かったって思うのがこのスキルの欠点なのだと思う。

便利なゆえに不便なのだ。


ワインをがぶ飲みしなくてはならないほど、怖いのか。

俺との行為が?

戻ってからの聖也のお仕置きとやらがか。

どちらにしてもこれから部屋で行う予定のことに関して恐怖を感じているのだろう。

実は嫌なのか?俺に抱かれるのがそんなに。

こんなに泥酔しなくてはならないほど。


俺は胸がチクリと痛むのを感じた。

なぜ胸が痛いのか全くわからなかったが。


もしかして、今俺は瑠璃の事を抱くのが怖いのか。

嫌われるのではないかと。

でも、これは瑠璃の魂を守るために必要なことなのだから、やらなくてはいけない。

俺だけでなく、全員やらなくてはいけないのだし、俺だけ、こんな事はやめようとか言うわけにはいかないのだ。

俺がやらないせいで完全攻略が不可能になってしまったら、それこそ、不味い事態になってしまうのだから。


しかし、あの嫉妬に狂った聖也の記憶の残像が、俺を

何かすごく重苦しい気持ちにさせた。


もっと、軽くエレガントにしたかったのだが。この攻略の夜が必要以上にハードモードになった気がした。


これが俺のスキルの弱点だな。

他人の記憶を見ることが出来るという事はその記憶を自分も追体験することに等しい。同じ苦痛を感じてしまうのだ。それは自身のメンタル面に強く作用する。

そして記憶を消すためにはその記憶をスキャンしてそしてその記憶自体を自分も見なければ消すことは出来ないのだ。記憶を消して欲しいと俺に頼んでくる人の記憶は当然に消したいという以上楽しい記憶ではない。嫌な記憶なのだ。それを消してやるためには俺もその記憶を追体験しなくてはならない。それは俺の魂に物凄い負担がかかっていると感じる。しばらく俺でもメンタルをやられることが多いからだ。だからなるべく人からの依頼は受けない。余程気が向いた時以外は。俺のスキルは俺の為以外には使わないのだ。自身の魂を守るためにそう決めているのだが。つい自動で発動させてしまい後悔することも多いから便利でもあり厄介でもあるスキルなのだ。冷泉のように謎に使いどころがないスキルだと、それ使うときあるのか?というような限定的な対象者にしか当てはまらないし、発動条件も限定的なのだから、月の光の下でとか。それに比べて俺のは特に身体の契りだの結びつきだの関係なく発動するから、便利だけど厄介なのだ。


そうこうしているうちに瑠璃は眠ってしまったらしく、話しかけても返事がない。


首に付けているネックレスを外して、サイドテーブルに載せた。

白い首筋。

薄っすらと汗をかいてなまめかしい。

履いていたサンダルを脱がせてあげて、ベッド下に並べておいた。


はてさて、どうしたものか。

眠っている顔も可愛かった。

とても。


酔っているせいか、赤いリンゴのように色づいている頬に、首筋から鎖骨までほんのりと赤い。

俺は思わず、すっと手を伸ばして頬に触れてみた。


そして、頬にそっと唇を寄せる。

甘い匂いがして、まるで新鮮な果実のような、食べて欲しそうな甘い熟した匂いがして、

我慢できずに口づけてみる。


眠っているのだから文句を言われることも怖がられることもない。

更にかっこつけて素敵とか思ってもらう必要もない。

自分の欲望のままにキスしていいのだと思うとかなり気が楽になった。

いや、本当は良くないのだとは思う。

分かってはいたのだが。

キスくらいは問題ないだろうと。

白雪姫にキスした王子はこんな気持ちだったのだろうか。

白い肌にリンゴのような頬の赤みが刺して、唇も薄っすらと色づいて食べて欲しそうに見える。

それじゃ我慢など出来ずに死体だと言われてもキスしてしまうよね。とふと誰でも知っている童話のことなどを思ってしまい納得する。

こうして無防備な女を目の前にしたら、

仕方のない事なのだと。


そっと首筋から鎖骨、そして胸元にまでキスの雨を降らせてみるが、一向に起きてくる様子がない。

起きるまでワインでも飲みなおして待ってようと思っていたが、薄く色づいたピンク色の唇を見たら、

唇を付けてみたくてたまらなくなってしまい、そっと唇を這わせてみる。


んっ。

ちょっとのつもりが我慢できず、気が付くと、唇に唇を這わせ、舌でこじ開けていた。


眠っているだろうに、舌を入れるとそっと舌が逃げようとする反応があり、、息が苦しくなったのか、呻き声をあげた。


唇を離し、顔を見るとうっとりとした顔で眠っている。

うっすらと額に汗をかいている前髪をかき分けて、そっと額にもキスをした。


「ごめんね。俺我慢できないかも知れない。」

眠っている瑠璃に先に謝っておく。











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