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34話 ビーチリゾート3 帝 嶺視点

昼間プールで俺は瑠璃の水着姿を直視できなかった。恥ずかしくて。

普段はそんなことはない。水着だろうが裸だろうが気にせず真正面からガン見している。

だけど、噴水のプリズムの中で瑠璃はまるで水の中から誕生してきたばかりのビーナスのようで、

あまりの気高さ、美しさに俺は直視すら出来なかった。いやらしい目で見ていると思われて嫌われるのではないかと、その瞬間俺は思ってしまい、瑠璃の水着姿をチラチラとこっそりみるくらいしか出来ず、

終始俺はかっこ悪く緊張していた。スマートにエレガントにエスコートして楽しんでもらおうと、そのような所作は普段から身体に沁み込んでいたから出来ていたとは思うけど、

俺にはプールに来てからの瑠璃が何か不機嫌に見えて、それが何がいけないのか、

ファンに囲まれて待たせたのがいけなかったのかと思って訊くも違うと言われ、

シーフードレストランでは、

いきなり、【私なんかが】などと言いだして泣き出すし、

彼女が感じていた不安を払拭できなかった自分を責め、

明るく、エレガントにふるまっていたが

今こうして、部屋に二人きりになり、攻略を始めようとしたところで、

俺の緊張はMAXになっている。

欲望もMAXになっているが。

嫌われたくないのだ。

この帝 嶺が、女に嫌われたくなくて怖くて

手を出せないでいる。

どう切り出して始めようかと。

そして、いきなりがっついたら、怖がらせ、多分、嫌われる。


そう思うと、行為に及ぶのが怖い。

こんな事なんか今まで一度もなかった。

女の方から寄ってきて、そして服を脱いでいたし、足も股も開いてきた。

が、今回は違うのだ。

しなくてはならない事はひとつだけだし、

お互いに納得している。

こんなときにビビる必要などないと

分かっている。

でも嫌われたくない。

聖也から、

瑠璃が‘処女‘だったと聞いたとき

身体に電撃が走るほどびっくりした。

‘処女‘?

そんなもの、いたのか。

天然記念物、絶滅危惧種、というより

多分絶滅している。

この世界で会ったことがない。

いたというのを聞いたこともない。

不老不死の世界なのだから、もうみんな長い時を生き、‘処女‘などというものはとっくのとんまに、いつのことか本人も覚えていないくらいに、もしかしたら初めから‘処女‘などと言うものはいなくて

出会ったことがないのだ。


男性を初めて受け入れたという事で、

まだ慣れないから

優しくしてあげて欲しい。

と聖也が言っていたのだ。破瓜という行為を行ったという聖也の顔は興奮していて、優越感に浸っているのが見て取れた。何も気にしてない様子を装ってはいたが俺は内心羨ましさで頭の中が沸騰しそうだった。今までに人を羨んだことなど無いというのに。

夜が怖かったり、するらしく、それのせいか分からないけど毎晩うなされて怯えているからと。

それは冷泉のスキルでなくなったらしいが、悪夢にうなされなくなったのが、

冷泉のスキルで嫌な夢を見る原因がなくなったのか、処女の恐怖感を冷泉が無くしたのか、まさかの床上手で、とか俺の妄想は膨らみ、もうおかしなことになっていた。


とにかく、怖いとか痛いとかになれば、

嫌われてしまう。

それだけは阻止しなくては。

女の方から寄ってきて、

食べ放題だった、帝 麗が


今、女の前で緊張しているのだ。

かっこ悪いな。

そう思った。

そしてかっこ悪いところを瑠璃に知られたくなかった。

怖がられてもダメ、痛いと思われてもダメ、かっこ悪いと思われてもダメ。


このミッションはコンプリートするのがハードに思えた。


しかもレストランでは泣かれて


彼女は自分に自信がないようで、自分の価値をわかっていない。

こんなに俺が恋焦がれて、胸を高鳴らせているというのに。

ふと、一番に攻略を終えた冷泉はどうだったのだろうと、思った。

話を聞いておけばよかった。

女性との夜伽をペラペラと話すとも思えないが、会話の中に何かヒントになるものがあったと思うし、冷泉の攻略がどうだったのかが垣間見えたかもしれない。

普段好戦的に接しているから冷泉から情報を得るというアイデアが浮かばなかった自分を今は責めたい。


だが、何とか、酔ってしまった彼女をベッドの上に横たえてあげて


そのとき、

俺は見逃さなかった。

俺を欺こうとしても無駄だ。


それは、水着を着ていたら見えない部分に、夜の営みをしても薄暗かったら分からない、たとえ明るくてもよく注意してみないと分からないようなほんのささいな傷跡。


俺たちは不老不死だから、病気をしても

怪我をしてもわりに早く治る。

治らない傷はない。

心に魂に付いた傷は違うが、身体に付いた傷は容易に消える。

しかし、傷が付くようなことをすれば当たり前に痛い。

そして、俺に見えないように時間をおいていたのだろうが、薄っすらと残っていた傷に俺は何かとても嫌なものを感じた。第六感とでもいうのだろうか。何かとても邪悪なものが垣間見えたので俺のスキルで彼女の記憶をだどっていった。

警戒されないように、目の奥を見ながら

「最近なんか痛いような事とかあった?痛いなあって思った事とかさ。」

さりげなく誘導する。うっかり思い出してしまえば俺の脳裏に場面が浮かぶ。


「痛い事、ですか?」


「そう痛かったこととか怖かったこととか、冷泉の別荘から帰って来てからとかなんかなかった?」

ピンポイントで当たればぐっとくるが、時間軸をなるべく絞らないとヒットしない。


「なんかレディ痛そうなこととかあったような、そんな気がしたから。ごめんね。変な事聞いちゃったかな?」


「うーん、大丈夫ですよ。大丈夫ですけど。」

訊きながらそうっと、傷のあった場所を触る。感覚的に身体が覚えていても俺のスキルに反応するからだ。


そして、時間軸、冷泉家の別荘から帰った日、そして身体の傷がうっすらあった場所で、スキルを使用して


ピンポイントでヒットした。


聖也が瑠璃の事をお仕置きと評して、傷を付けている場面、胸が悪くなるようなその情景が俺の脳に直接飛び込んでくる。


許せない。

こんなひどい事をあいつは、していたのだ。

この聖母のような女性に対して。


噛みついたり、痛い事を。痛いと泣いている瑠璃の顔が俺の脳内に飛び込んできて俺は怒りを抑えるために唇を噛んだ。

瑠璃には俺が記憶探知したことは分かってはいない。

が、俺は見てしまい、把握した。

聖也は瑠璃を自分のものにしたいために洗脳しているのだと。


これはDVだ。自分が征服するために暴力で支配するDV.

胸糞が悪すぎる。

はたまたこれはどうしたらいいものか。

勿論、このままにしておくつもりはないが。


というのも俺は瑠璃に惚れているのだ。

彼女に惹かれている。

この世界にはない魅力を持った女、瑠璃。

唯一無二の存在。

俺は小さい頃に母親を亡くし、父は俺の事を自分の子供だと思っていなかった。俺が母親にしか似ていないと親族、俺の祖母、父親の兄弟姉妹等が言ったからだ。

勿論、母親はそんなことをするような人ではなく、とんでもない言いがかりだった。が、死ぬまで俺を認めなかった。父親と親族を俺は恨んでいる。そして、父に支配されていた兄は今は俺の味方だ。父が死ぬまで俺は帝家で居場所がなかった。母の愛も温かさも知らない。あったのかもしれない。でもあまりにも幼く俺の記憶にはないのだ。それが俺のゲーム上の設定。


そんな俺が瑠璃に惹かれた。

この世界は不老不死の世界。だからここにいるこの世界の女はみんな出産も育児もしない。

女性にある母性というものは初めから存在しない。

それでもそういうものだと思ってみんな生きているのだが俺はゲームの設定上、母親の愛が欲しい。

と思ってしまうのだ。

母性を求めてしまう。

それはこの世界にない皆無のもの。

無いものなのだが求めている。そういう馬鹿みたいな宿命みたいなものに囚われている俺の魂。

それが、あるとき、見つけてしまった。

瑠璃という、聖也が連れてきた異世界の女に。

母性を見つけた。

彼女は元の世界で、妊娠出産、子育てを経験していた。

輪廻転生して何度もだ。

その事実、経験が彼女の魂には彼女が無意識で気付いていなくても沁み込んでいたのだ。

そして、その母性に俺は惹かれた。


まるで聖母、愛にあふれた魂に。俺は一瞬で惹かれた。

彼女を見たとたんに電撃が走ったように。

俺が探していたパズルのピースがこれだった。

いつも何か足りないと思っていた。

財力もある。

自分の資質も仕事も家柄も何もかも申し分ない。

勿論女にも困ったことなどない。

スキルも便利なスキルで文句の付け所がない。

のだが、何か物足りない。満たされない。

俺には満たされない何かがあって、飲んでも飲んでも喉が渇くような

そんな焦燥感がいつもあった。

それは

俺が求めていたのは母性。愛だったと

瑠璃を見たときに悟ったのだ。


欲しい。誰を押しのけてでも彼女が。

他の女ではだめなのだ。

この世界の女は薄っぺらい、まるで紙のようだ。

紙に書いた絵のように薄っぺらい。

それと違って瑠璃は暖かく厚みがあった。


やっと見つけた

俺のパズルのピースを

俺は誰にも渡したくない。

もし誰かのものならば力づくでも奪いたい。

俺のものにしたい。

俺だけのものに。


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