33話 ビーチリゾート2
帝さまのプライベートビーチ。季節外れと言う事もあるけどプライベートビーチだから他に人が居ない。
2人だけでの見渡す限りの地平線の向こうまで見える。
砂浜を歩くと真夏の火傷するようならジリジリとした熱さはなく、ほんのりと温かい。
パラソルの下にリゾート気分のドリンクを運んで貰って、ゆっくりと腰をおろした。
潮の香りが海に来たんだと実感させる。
白い砂浜はどこまでも綺麗で海と空の境目が分からないくらいに蒼い。
遠くに船が航行しているのと、うみねこが飛んでいるのが見えるだけで、ゆったりとした時間が流れていた。
「天気が良くて良かった。」
にこやかに笑う帝さまは眩しい。
ちょっと日焼けしてる肌に鍛えた筋肉がまるでギリシャ彫刻のように美しくて私は見惚れてしまった。
「何だい?そんなに見つめて。恥ずかしいな。」
ちょっと顔を赤らめて。
「帝さま、トレーニングで鍛えてらっしゃるのですね。
筋肉がとても美しくて、つい見惚れてしまいました。ごめんなさい。」
「褒めてくれるの?嬉しいな。謝らなくていいよ。レディも可愛いよ、水着似合ってる。」
優しく声をかけられて凄く嬉しい。
「いい波が来たから、俺の事見てて。」
サーフィンボードを抱えて海に入る帝さま。
帝さまはサーフィンもお上手らしく、
プロ級の腕前らしい。
冷泉さまは海は苦手らしいのだが。
何故か、お前も来るか?と冷泉さまを誘って断られでいたのだ。冷泉さまは帝様との間に海に対してのトラウマがあるらしく、
「俺はマリンスポーツは好きだはないのだ。ウインタースポーツのスキーならいいのだが。
それに今回か二人だけで行ったほうがいいのではないか。
その色々と二人の方が都合がいいだろうし、俺がいたら邪魔ではないか。」
としどろもどろに断っておられたのだけれど、
「俺は平気だよ。二人でないほうが色々と見つかってしまったときに言い訳になるし。」
「俺を隠れ蓑にするつもりか。断る。それならお目付け役に聖也でも連れて行けば良いだろう。」
「あいにくセイヤンも修二も仕事が入っていて頼めないんだ。けど、プライベートビーチだし、大丈夫かな。もし、都合が悪ければ、南十字星が見えるビーチにセスナを飛ばして逃げてもいいな。」
などと言う会話があったのだ。
大技を次々決める帝さまはかっこよくて、サーフィンの事とかあまり知らない私にも凄く難しい技を決めている事は分かった。
帝さま、運動神経いいんだなあ。
モデルもしている帝さまは身長も高くて、遠くから見ても分かる華やかなら存在感があった。
そりゃ女性がみんな虜になるわけだよなあと思う。
天性のアイドルとしての資質が帝さまにはある。
スタイルが抜群にいいし、歌もダンスも秀でているし、トランペットの演奏はセクシーで震えるほとだ。
ああ、私今夜あんな素敵な人と。
契りを交わすのだと思うと、
本当にいいのだろうかと、
輪廻転生の輪のバグ直しの為とはいえ、帝さまなんかに当たり前のように手伝ってもらっていいのだろうかと今更ながらに思ってしまう。
さっきだって、プライベートビーチに繋がる近くの屋内ビーチリゾートに入ろうとしていた女の子たちが、
「わ、今日貸切りだから休みだって。信じられない。ショックぅ。え?あれ?帝 嶺じゃない?」
と言ってあっという間に女の子たちに取り囲まれてしまい、
「レディたち、ごめんね、今日は撮影だから貸し切りにしてお休みなんだ。折角来てもらったのに。」
「帝さん、私帝さんの大ファンなんです。こんなとこで会えて嬉しいです。プール休みでも帝さんに会えて超ラッキーです、
握手して下さい。」
「わあ。私も握手してください。」
みたいに女の子に取り囲まれてしまい、私は気を使って、そっとその場を離れたのである。
何か後ろ暗い事をしているような気がして、一応作詞家という事で専属契約をもらっているために寮であるドキLOVE城に部屋を貸してもらって住んでいるし。スタッフという事になるのだけれど、
何しろ実際に後ろめたい事をしてもらう算段なのだから、罪悪感を感じても仕方がないのだ。
その罪悪感は考えまいとすればするほど、じわじわと私の中に広がってきてしまい、
屋内のシーリゾートに移動してきて、フロントに大きなスクリーンがあって、PRキャラを務めている帝様のサーフィン映像や、歌っているみんなのMVが流れているのを見たら、なんだか、私が今当たり前にしようとしている事、いいのだろうかとの疑念がムクムクと夏空の夕刻に急に空が暗くなって雷と豪雨が襲来するときみたいに湧き上がって来ていた。
みんな当然のように、私のために攻略に協力してくれると言ってくれた。
でも、そこに同調圧力はなかっただろうか。
ヤりたくないと思う人だっていたはずだと思う。
それにスキャンダルとかになったら大変な職業なのだ。さっきちょっと屋内リゾートの入り口に居ただけで季節外れなのに、あんなにファンの人たちに囲まれてしまっていた。
気を付けないと本当にマズいのだ。だから山奥の月光亭に自家用車で行くという、といっても豪華なリムジンだったが、の選択を冷泉様は取られたのだと思うし、今日も帝様がプライベートビーチにビーチリゾートは貸し切りにしてくれている。それなのにあっという間に見つかり、ファンサービスをしているのだ。
陰でおとなしく隠れている私に気付いた帝様が、ニコッと笑ってウインクをしてくれた。その顔は待たせてごめんね、って顔と、あと少しだからというような表情もしてくれて、そのアイコンタクトに私もそっと笑顔を返したのだけれど。
いいのだろうか、こんな素敵な人たちを道具のように使う事が許されるのだろうか。そんなことしてもらう価値が私にあるのだろうか。元はと言えばあっち行ったりこっち行ったり決心も覚悟もないから引き起こした輪廻転生の輪のバグ。そんな適当な魂なんてバグで壊れてしまっても仕方がないのではないだろうか。私に課された罰なのではないか。
そう思うと、なんだか申し訳なくていたたまれない気持ちになってきてしまった。
帝様に良くしてもらえばもらうほど、辛い。
屋内リゾートに移動してプールサイドを歩いているとき、
「ん?どうしたの?
元気ないね。もしかして、さっき待たせちゃったこと怒ってる?君を裏に隠して女の子たちに囲まれてたこと。淋しい思いさせちゃったかな。もしかしてヤキモチとか妬いてくれた?」
ごめんねって顔で問いかけてきた。
「そんな事ないです。ファンサービスは大事だと思います。ファンの方たちを大事にしている帝様素敵です。そんな、私なんかが。ヤキモチだなんて、とんでもないです。」
「なんかが、なんて言っちゃだめだよ。君は素晴らしいんだから。なんかじゃない。
それにヤキモチ妬いてくれたら嬉しいよ。知らない土地で一人にされたら不安になるの当然だし、ね。」
「もっと甘えていいんだよ。」
そっと肩を抱き寄せて、鼻にチュッてキスをしてくれた。
「ん、ふぁ。」びっくりして変な声が出て顔が真っ赤になって熱い。
「本当可愛いね。夜までなんて待ちきれないかも。もう遊ばないで部屋に行っちゃう?」
こんなまだ明るいうちから、そんな事。
さすがにちょっと、
それにせっかく貸し切りにしてもらったのに使わないなんて、スタッフの人たちに変に思われちゃうんじゃないだろうか。
などと目を白黒させていると、
「ふっ、冗談。折角だから、遊ばないとね。あ、ここのプールね、中に隠しボタンがあって、綺麗な噴水が出るんだよ。隠しボタン探しに行こうか。」
笑ってプールに飛び込んで、
両腕をあげて私を呼んだ。
「おいで。」
「大丈夫、そんなに深くないから、怖くないよ。もし水怖いなら俺が抱いて泳いであげるから。
ほら、ここに飛び込んで。」
自分の胸を指しておいでと私を促す。
ざぶんと飛び込むとしっかりと逞しい腕で捕まえてくれた。
水しぶきがかかって、キラキラと光る。
そろそろ初秋になろうとしているのに、室内プールは快適な温度に設定されていて全然寒くなかった。
「レディは水が苦手なのかな?」
あまり泳ぎが得意でない私は水は苦手だった。
こくんとうなづくと傍らにある可愛いイルカの形を模したボートを引き寄せて、
「それじゃこれに乗るといいよ。」と言って
私を抱き上げて乗せてくれた。
「このプール少し深いんだ。ここからは深くなるからレディが怖がるといけないからね。噴水のボタンがあるところまで、引っ張って連れて行ってあげる。」
そう言ってボートに付いた紐を引っ張りながら泳いでいく。
南国のヤシの形をした樹木が島のようになっているところに生えていて、
その隅の方に隠しボタンがあった。
「見てて、レディ、これを押すとね。」
そう言って帝様がボタンを押すと
ふわーっと、噴水が飛び出して
まるでプリズムのように霧になったところが光り輝く。
美しい水と光のしぶきが一面に広がった。
「綺麗。」
思わず声が出てしまって私は見惚れた。
そんな私を帝様が優しく見守ってくださって
プールの天井は透明なガラスでできていて
室内でも太陽の光が充分に感じられる。
太陽の光で輝く噴水のプリズムがまるで一面にダイヤモンドをまき散らしたような美しさだった。
それから、少しだけ、手を持ってもらって
泳ぎを教えてもらったり、
イルカボートにしがみついて流れるプールに流されたり
とてもとても楽しくて
本当に恋人同士のデートみたいな時間だった。
「まるでデートみたい。」
ぽつりと呟くと
「え?レディはそのつもりじゃなかったの?俺はデートだと思ってたけど。」
と、にこやかに笑う。
デートじゃないなら何なんだ?というような。
「これは攻略だから、だから仕方なくこうなっているのかと。」
小さな声で本音を語ると
「俺はデートのつもり。仕方なくなんて思ってないよ。レディは仕方なくなのかい?淋しいな。」
そう言って、ちょっと気を悪くしたようなそんな顔を。
わ、怒らせてしまったのだろうか。
どうしよう。
「仕方なくだなんて、そんな事ないです。とても楽しいです。それにとっても楽しみにしてたので。」
そう言って、あたふたして顔を俯いていると
「そろそろ暗くなるね。おなか減らない?レストランに予約しているから、もう上がろうか。」
そう言って私の手を取ってプールから上がらせてくれた。
「更衣室にドレスを用意させてあるから、それを着てきてくれると嬉しいな。」
そう言ってにっこり笑う。
ドレス?
そうか、ディナーともなるとレストランとやらもきちんとした服装が要るんだ。
当然のようにそんなものの用意はしてなくて、気楽な服装しか持ってきていなかった私は焦ったけど、
ちゃんと用意をしておいてくれてあって、
着てみるとサイズも私にぴったりで、合わせた可愛いミュールもぴったりだった。
着替えて外に出ると帝様がスーツに着替えて待っていてくれた。
うわっ、やはりイケメンはスーツが似合う。
私の心の破壊力が半端ない。
素敵すぎて目がくらみそう。
というか、そもそも昼間の海パンの裸の破壊力も半端なかったのだが。
もうさすがにゲームをしているときから人気ナンバーワンのキャラだったのを思い出す。
有り得ないくらいの一番人気で、グッズなんかもすぐ売り切れてしまい買えたことすらないのだ。
そんな人気キャラの帝 嶺さまが今目の前にいて、私をディナーにエスコートしてくれようとしている。
この世界に転生してこなかったら有り得なかったのだ。
ゲーム内でもそんな素晴らしいイベントはなかったし。
帝様とディナーだなんて。
嬉しすぎる。
私が犬だったら今絶対に嬉ションをしているところだろう。
「綺麗だよ」、レディ。ドレス凄く似合ってる。俺の見立ては間違ってなかったね。」
「このドレス、帝様が?」
「そうだよ。レディに似合いそうなのを俺が選んだんだ。気に入らなかったかい?」
「そんな、凄く素敵で私なんかが着ていいようなものでないみたいで。」
実際に、そのドレスは素材もデザインも素晴らしくて、多分オートクチュールのものだ。しかも一点ものだろう。私のサイズに何故かぴったりだったし。どうしてサイズが分かったのかは謎なのだが。あつらえてもらったのものであることはいくら私でも分かった。それに安物では絶対にない。質感と着用感。そして洗練されたデザインこのドレスは素晴らしものであるという事を物語っていた。
そして言いにくいがこの世界の私はスタイルが良かった。
そして、可愛かった。
元の世界では絶対にこのドレスを着る機会はなかったと思う。
「じゃ、行こうか。」
帝様にエスコートされてシーフードレストランに行った。
そこには、採れたてのシーフードを使った料理が。
伊勢海老の焼いたのに、生の岩ガキ、それにタコのカルパッチョ。から
もうたくさんのシーフードを使った料理が。
そして、ワインが。
「じゃ、今日の素敵な夜に乾杯。」
「でも。レディ飲み過ぎないでね。これから大切な用事があるんだから。」
そう言ってウインクをする。
わっ、そうだった。
一番の大事な要件を私はすっかり忘れて浮かれていた。この旅の目的を。
あまりにもビーチリゾートが楽しくて。
帝様が優しくて。
それに聖也が心配してたような水着の端から手を入れてエロイ事をするような下衆なことは一切なかったし、帝様は紳士だったのでその要件をすっかり忘れて子供のように遊んでしまって、ちょっと疲れて眠くなってしまっていた。
その事を思い出すと、一気に緊張がMAXになって、食事が喉を通らなくなってしまった。
どうしよう。
今夜帝様と。
あんなことやこんなことを。
これからある大切な用事。その事を思うと私は目が泳いでしまい、あたふたと馬鹿みたいに焦った。
そのために来たのだ。
だけど、ビーチリゾートで遊ぶのが楽しくてすっかりその事を失念していた。
旅の目的を。
そして意識してしまう。
目の前にいる、帝 嶺。
それが今夜。
私の攻略対象。
契りを交わす相手なのだ。
私はぐいっとワインを飲んだ。
飲まなきゃやってられない。
くらいに緊張してきてしまって、
おずおずとしていた私だったが
意を決して
ずっと聞きたかったけど、
訊けなかったことを
口に出して訊いていた。
それは、
「私なんかと、攻略対象だからとはいえ、協力していただいて、宜しいのでしょうか。」
「皆さん、協力してくださると言ってくれました。でも、本当はこんな事するの嫌なのでは?彼女とかお付き合いなさっている方とかいらっしゃるとか、色々とまずいこともあるでしょうし。
それに、私なんかがその、
抱いてもらおうだなんて
帝さまみたいに素敵な方に。
私、
いいのでしょうか。」
なんか話しているうちに何故か涙が溢れてきてしまって、
「じゃ止める?」とか言われたりしたらとか、
そしたら私永久に魂が無くなってしまうんだ
とか
思ったら怖くもなってきて、
自分でもそれならなんでこんな事訊いてしまったんだろう。
「好きだよ」とか言ってもらいたいとか思ってるのだろうか。図々しくもそういう気持ちで訊いてしまったのだろうか。
とか、
言わなければよかったとか
どうしようとか言う単語が
1秒もたたないくらいに頭の中で爆発して。
言いながら涙がポロポロ流れてきてしまっていた。
とんでもない泣き上戸である。
元々私はお酒を飲むと楽しくなってしまい、幸せな気持ちで騒ぐといったタイプの酒飲みであった。
けど、
この攻略の重みが私に笑ってる場合ではないと思わせたらしく、
ワインを飲んで
こんなネガティブなことを
そしてこんな事言われたら言われた方が困るに決まってるのに私は最低だ。
と
思うのに。
お酒とは怖いものである。
と酒のせいにしてはいけないのだが。
私の様子を見て、質問を聞いた帝様は
それまでの楽しそうな顔から
笑みが消えた。
眉間に少し皺を寄せて、
「何言ってるの?」
と。
「まず、その
私『なんか』っていうのやめてって昼間にも言ったよね?
覚えてない?」
「君は【なんか】とかいうような人じゃない。
俺にとっても大事な人だよ。
俺たちのグループにとっても大事な作詞家だ。」
「それに、女性として魅力がなかったら、」
「俺は頼まれても
みんながやるといって同調圧力かけてきても、
やらない。」
「それと、付き合ってる彼女とかはいない。
俺たちアイドルは恋愛禁止だからね。
いないよ。
気にしなくていい。」
「俺は君が好きだからこの旅行を楽しみにして計画したんだけど、
気に入ってもらえなかったかな。
オフに合わせて旅行は行きたかったのもあるから、むしろ君に付き合わせてしまったけど。
俺は
好きでもない子にこんな事しない。
そんなに軽くないんだ。
そんな誰にでも尻尾振ってるみたいな軽薄な男に見えるかい?」
「それと、他のみんなも嫌なら嫌だと言うはず。
嫌なことを嫌だと言えないようなやつはうちのグループにはいないよ。
そんなんでいいパフォーマンスもできないし、ずっとグループとしてやっていくなんて不可能だからね。
みんなも君の事が好きだから協力すると言ってるんだと思うけどね。
むしろ、
ラッキーとか俺はさっさと無理やりオフに合わせて先に入れちゃったけど、他の奴ら結構揉めてるみたいだし、みんな我先にって感じでかなり乗り気だと思うけど。
もしかして冷泉は嫌だけどしてやるって言ったのかい?
そんな事言うやつじゃないと思うけどね。
それに、嫌なら冷泉だっててこでも動かない。
嫌だったら月光亭になんて連れて行かないだろう。あそこは冷泉家の別荘でも特別な場所らしいし。
俺たちをそんな安くみてもらっては嫌だな。」
「いいかい、レディ。君は素晴らしい作詞家で俺たちのパートナーだ。
そして俺たちはみんな君の事を大好きだから
だから協力してる。」
それを聞いて
私は言葉もなく
止めようとするのに涙が止まらなくなり
帝様を困らせた。
と思う。
「笑って、レディ。ほら、プレゼントもあるんだよ。」
そう言って渡された小さな小箱。
「開けてみて。」
言われて開けると
赤い色の宝石が付いたペンダントが入っていた。
「そのドレスに合うと思って、レディに似合うと思って用意したんだ。
付けてあげる。」
そう言って、そっと席をたち、私の後ろに回って、ペンダントを付けてくれた。
そして、顔の横から覗き込むようにして、見てきて
「似合う。良かった。とても似合うよ。」
そして、耳元で囁く。
「飲みすぎ。」
「部屋に行こう。食事は後で部屋に運んでもらえばいい。」
「可愛い顔が台無しだ。化粧が落ちてるよ。
泣いた顔も可愛いけど、
俺以外の人に見せたくないな。」
「行こうか。」
手を出してエスコートしてくれようとする帝様の手を取って立ち上がって歩こうとしたのだけれど、
よろめいて倒れそうになってしまった。
帝さまは抱き留めてくれて
私は帝様にお姫様抱っこされた。
「恥ずかしいです。歩けます。」
嘘。歩けなかったけど。
酔いが回って足に力が入らなかった。
「ここはスタッフもうちの人間だけだから気にしなくていい。俺が抱いて部屋まで連れてくから。
足を捻挫でもしたら大変だから。
あいつらに怒られてしまうからね。
攻略も進まなくなるだろうし。まさか、足を怪我したレディに攻略は無理だろう。」
「いい子だから俺のいう事聞こうね。足ふらふらだよ。」
大好きだよって
耳元で囁く。
「レディの為に用意した部屋だよ。気に入ってくれるかい?」
と、ドアを開ける。
「本当はコテージの方に行こうと思っていたんだけど、その様子じゃ移動は辛いよね。」
と、飲み過ぎた私を気遣うように眉をひそめる。
「急遽場所を変えたから、気に入るか分からないけど、一応俺からのレディへの誠意だよ。
少しでもロマンチックな夜を演出したくて、」
多分このリゾートホテルの一番高い部屋だろうと思われる、
部屋らしき場所にたどり着くまでに部屋の中に廊下があって、帝様にお姫様抱っこされたまま廊下を移動していく。廊下がある段階でもうそこがゴージャスな空間であると予想されるのだが、さりげない調度品も都市にある高級ホテルのような重厚感はなく、あくまでリゾートをイメージした明るいもので、しかし上品さは失っていない、まるで帝様のオフスタイルを象徴しているようなそんな感じの調度品。
やっと部屋らしきリビングのようなところに着くとまるで美しい庭園にでも来たかのような空間がそこにあった。
部屋じゅうに飾られた薔薇の花。
部屋の中は薔薇の生花の香りでいっぱい。
ふわっと、ソファに降ろされる。
部屋から見える景色がこの部屋がこのホテルの最上位の部屋であることを示していた。
オーシャンサイドであろう。そして多分最上階。
海が一面に見えて、海と空の境がないみたいなまるで綺麗な宝石箱を開けたみたいに星がちりばめられているのが見えた。
何も遮るものがない、その景観。
そして部屋の中を彩る美しい薔薇。
一体どれだけの数の薔薇があるのか分からないくらいに埋め尽くされていた。
今更だが、こんなに用意してもらって、ワインの飲み過ぎで具合が悪くなっているというのは、あまりにも失態過ぎて、本当に自分が嫌になってきてしまう。
それと同時に薔薇の香りで余計に気持ち悪くなってきて、
そして物凄く眠い。
急にとてつもなく眠気が襲ってきて、
ああ、飲みすぎるんじゃなかった。やっちまったと思いながら
私は深い闇に落ちていった。
朝起きたとき帝様がベーコンエッグを作っていて、さすがにスペシャルスイートルーム、部屋にはミニキッチンも付いてるらしく、朝ごはんは帝様が作ってくれた。
「ここもいいけど、なんか落ち着かなくてね。レストラン直結だったから昨日はここに泊まったけど、今日は移動してコテージに行こう。」
そう言われてコテージに移動することになり、
車で帝様のコテージというのだろうか、可愛い別荘みたいなところに移動した。
「海に来るときはいつもここでゆっくりするんだ。
俺の隠れ家みたいなものさ。こっちの方がゆっくりできる気がして。人目もないしね。」
どうしてもどこに行っても変装しようが、帝様の場合オーラが消せないというか、そのスタイルの良さが仇になって、遠目にも帝 嶺だという事がばれてしまうとの事。
「もっとオーラを消す訓練とかできるといいんだけど、セイヤンとか、タッヒーとかは出来るんだよね。
タッヒーには精進が足らんって言われちゃうしさ。俺もまだまだなんだよね。」
と言ってウインクをする。
オフに合わせて3泊くらいはしたいとのことで、
「瑠璃も付き合ってくれるよね?」
と言われて、帝さまに付き合ってビーチリゾートを満喫しているのだけれど
気になることがあった。
気になって仕方がないこと。
酒に酔っていたから?
攻略の記憶がないのだ。
一切の記憶がなくて。
でも
確かに
足腰立たなくて、筋肉痛になっているのだけれど。
でも、昨日プールで泳いだから?
って可能性もあるし。
訊いていいのか分からない。
どうしよう。




