32話 ビーチリゾート1
「ベーコンエッグ食べるかい?」
なんか凄くいい匂いがして
目を開けると
横に嶺様がいた。
帝 嶺。
攻略対象者。
財閥の御曹司。
趣味はトランペットとビリヤード。
アイドルとして活躍中。
一番モテるタイプ。
フェミニスト。
栗色の長めの髪。
目も淡い栗色で優しい。
そうだった。
攻略。
「お目覚めかな?
調子はどう?
俺? 俺は絶好調だよ。」
にっこり。
すくっと起き上がると鍛えられた筋肉が綺麗に付いている上半身が眩しい。
「何、見てるの?
そんなに君の見つめられると恥ずかしいな。昨日散々見たと思うけど?」
「いえ、あの、凄く鍛えられてて美しいなと思って。
わわわ、ごめんなさい。」
「え?褒めてくれるの?
ありがとう。謝ることとかないよ。好きなだけ見ていいよ。」
笑顔も身体も眩しい。眩しすぎる。
うーん、好きになるなと言われても無理だ。これは。好きになってしまう。
「なんか、腹減ったから飯作るから。ベーコンエッグでいいかな?
ベーコンエッグ食べるかい?」
「あ、私、作ります。」
「いや、いいよ。俺が作ってあげる。
それに
多分足腰立たないと思うよ。昨日無理させちゃったから。」
え?
言われてた起き上がって、
ベッドから降りて立ち上がろうとすると、
がくっ。
確かに膝が笑ってる。
太腿も腰も筋肉痛みたいな感じで。
力が入らない。
ひゃっ。
「ほら。無理しないで。」
そう言って、ふわっと私の身体を持ち上げて
お姫様抱っこで テーブルと椅子があるところまで運んでくれた。
「はい、到着。これ着てちょっと待っててね。」
私の肩にシャツをかけると、軽く右目を瞑ってウインクをしてキッチンに歩いて行った。
外の風が気持ちよく入って来る。私は今攻略中なのだ。そう、帝 嶺さまとのビーチリゾートでの攻略を
遡ること10日ほど前
月光亭での冷泉さまとの攻略が終わってドキLOVE城に戻った後、当然のように次は誰?にするかという話になり、
「うちのプライベートビーチに来ないかい?屋内のビーチリゾートのあるし、楽しいよ。」
とさらりと言った言葉に私は何の考えも無しに、
「わ、行きたいです。」
「じゃ、決まりだね。」
ニコっ。
「今度のオフの時に行こう。色々予約しとくから楽しみにしてて。」
と言って、右目てウインクをして、
颯爽と去っていった。
え?もしかして次の順番決めちゃった?
と他の人たちがむすっとしたのとかそのとき私は気付いてなくて、
ビーチとか楽しみだなあ。水着買いに行かなくてはなどと思っていたのである。
水着なんて久しぶりだなあ。
そもそもこの世界で今どんな水着が流行っているか分からないし、ビキニがいいのかワンピース型がいいのかとか調べなくては。
プライベートビーチだと言っていたけど、あまり変な格好では帝さまに迷惑が掛かってしまう。
どうしようかな。と思いながら、図書館に行ってファッション誌のバックナンバーを眺めていた。
最近私は図書館というものがあり、そこでこの世界のことを学ぶことが出来るという事に気付いて散歩がてら時間があるときは図書館に通っているのだ。
図書館には最新刊でなくても雑誌も置いてあるから、季節が変わってしまってもちょっと前の流行とかが分かる。
うーん、可愛いな。でも、今シーズンオフだけど水着売ってるのだろうか。
ネット通販でいいかな。でも、それじゃ試着出来ないし。
そう、この世界はまるで鏡の向こうの裏の世界のように元いた世界と酷似している。
ただ、ゲームの世界だというのと、不老不死の世界だという事が違うだけ。
違うだけというより、圧倒的な違いではあるし、色々価値観が違ってきてはいるが、同じだなあと思う事もたくさんあるのだ。
空気が澄んで空も高く気持ちがいい季節なので、散歩をして図書館に行くのは気分が良かった。
閲覧スペースでパラパラと雑誌をめくっていると、
「楽しそうですね。何をみているのです?」
と聞き覚えがある声がして、
振り向くと、聖也がいた。
「あ、聖也、どうしてここに?」
「瑠璃は勉強熱心なんですね。いつもここに来ているのですか?」
そう言って私の隣に座った。
「水着ですか。」
私の質問に答えることもなく、私の見ているページを覗き込んでくる。
「帝のプライベートビーチ用。」
「ですか。」
そして、ちらりと私の顔を見た。
「随分と楽しそうですね。」
「そういえば、この世界に来てあなたをどこか連れて行ってあげたことないですね。
近場しか。
今度どこか旅行に連れて行ってあげましょう。プライベートビーチとはいきませんが。」
「もう随分涼しいと思うのですが、水着とか要ります?」
「なんか、屋内に遊べるスペースがあるからって。」
「一応持って行った方がいいかなって。でもどういうのがいいか分からなくて。」
「瑠璃ならどれを着ても似合いそうですね。」
帝様どんな水着が好きかなあ。訊いとけば良かった。
どうせなら、気に入ってもらうの着たいし。
攻略なんだから、やはり好きになってもらいたい。
そんな気がする。
好きでなくても出来るのかも知れないけど。出来たら好きになってもらった方がいいなあ。
それでないと攻略って事にならないかもしれないし。
そんな事を思っていると
「でも、瑠璃がこんな可愛い水着を着てビーチで帝と楽しそうにイチャイチャするかと思うと、」
「少なからず、嫉妬という感情が芽生えてきてしまいますね。」
はあ、とため息を付くと、
雑誌のページから目を離して、私のほうを向いた。
「随分と楽しそうに準備をしている。」
なんか咎められたような気がして、ゾクッとした。
そりゃ、それしか私の魂とやらを救う方法がないらしいとはいえ、楽し気に他の男と旅行に行く準備をしているというのは、あまりよくないことのような気がするけど。
でも、私は一応この攻略はしなくてもいいのではないかという提案はしていたのだ。
あの月光亭から戻った後、次は誰にするかの話になったときに。
「辛い前世の記憶が無くなったみたいなので、もう攻略とかしなくてもいいのでは?と思うのですが。
それに、この全員との攻略をするよりも冷泉さまのスキルで記憶が残っている前世の記憶を全部消してもらえばそれで済むような気がするのですが、それでもダメなのでしょうか。」
冷泉さまは
「俺としてはそれでも良いが。
ただ、満月の時にしかスキルの効果が発動しないと古文書に記載があった。それと、一度には一つの前世しか消すことが出来ないらしい。だから今回も一番辛そうなものを選んで消したのだが。
だから時間がかかるやもしれん。どれだけ残っているか分からないが。」
「何だよ、それ、いっぺんに出来ねえのかよ。めんどくせえな。」
龍くんがビシッと言った。
「それにその方式だと、半年はかかりそうですね。
それまでにまた何のはずみで元の輪廻転生の輪の中に戻ってしまうか分からないですし、やはりちょっと心配です。」
「私、もう元の世界に戻るつもりとかないです。だから大丈夫です。」
そう言ったのだけれど、
「君の意思そのものが優先されるとは限らない。これは本当にイレギュラーな案件なので、何が起きてもおかしくないと思っています。
やはり、全員との攻略をして、輪廻転生の輪のバグは直しておく方がいい。」
修二君がきっぱりと言った。
「冷泉の前世記憶消去^_^作業は続けてもらうとして、毎月一回は冷泉にスキルを使ってもらうとして、全員の攻略も同時進行で進める必要がある。あとは順番ですね。」
「瑠璃は、冷泉以外とは出来ないと?嫌なの?僕たちとはしたくない。そう言ってる?」
咎めるように全員の目が私に向いてきて
嫌だとは言えないというか、それって失礼だと思うし、多分みんな攻略キャラとしての意地とか誇りとかがあるのかもしれないのだと、攻略したくありませんなどと言ったらゲーム上必要のない人物という事になってしまうし、
ゲームをしていて、「あのキャラつまんないよね。可愛くないし、かっこよくもないし、攻略しないとシークレットキャラ出ないのマジうざい。めんどくさい。攻略すっとばしたい。むしろ要らないんじゃね、あのキャラ。」などと話題に上るキャラなんかもいたりする。いや、必ずいる。全員魅力的に作るのは難しいし、プレイヤー一人一人の趣味やら性癖やらもあるから、ゲームのキャラクターを作るのは大変だと思う。
そして、要らないキャラだなんて誰も思われたくないし、
ここでは私はプレイヤーなのだから、この攻略をここで終わりにするとか多分言ってはいけないやつだ。
「太刀人がよっぽど良かったんだね。瑠璃ちゃん。でも太刀人とは毎月出来るから、僕たちの事も考えて欲しいな。」
暗にクレームを入れてくるし。
そして私が返答も出来ないでいるうちに、
「うちのプライベートビーチね。次は。それじゃ。楽しみにしてるよ。」
みたいにさっさと次の順番を確保して帝様が攻略の日付を決めてしまったのだ。
そして、誰も異議を言えないでいて、この旅行は決まってしまった。
だから、一応は攻略は全員の攻略は止めたいと私は言ったのだが。
でも、楽しそうに準備をしている。そう聖也に言われてしまうと。
辛い。
「楽しそうだなんて。」
いや、旅行自体が楽しみなので、楽しそうに見えてしまうのも仕方ないと思う。
屋内施設のパンフレットを帝様にもらってから余計に楽しみになっているのは事実だし。
それに、
「近くの海で採れたばかりのシーフードを使った料理が絶品なんだ。
ディナーはそこに予約しているから、もちろん、貸し切りでね。レディと二人きりのディナー楽しみにしているよ。レディも気に入ってくれるといいのだけれど、そうそう、苦手なものがあったら先に訊いておいていいかな。料理長に指示を出しておくから。」
と言われて、シーフードディナーも凄く楽しみなのだ、絶対見透かされてる。
楽しみにしている事。
でも、楽しみなんだもん。ごまかせない。
ごまかせないけど、でも一応、否定しておいた方がいいのだろうか。
嫉妬を感じるとか言われてるし。
「そんなに楽しそうに見えますか?そんな事ないです。」
真顔でしれっと嘘をついたのだが、
「嘘ついてはいけませんよ。」
とおでこにデコピンをされてしまった。
「嘘つく子はお仕置きです。」
「それじゃ、水着一緒に買いに行きましょう。私が選んであげますよ。」
「帝の趣味は分からないけど、私が好きな水着を着て欲しいです。それに水着姿を一番先に見たい。」
「ほら、行きますよ。」
雑誌を持って、元の位置に戻しに行ってしまった。
なんか流されてショッピングモールまで来てしまい、水着コーナーで水着を選んでもらっている。
うーん、これは、可愛いけど、露出がちょっと、多すぎるような。
これだとさすがにダサいかな。
ダサくてもいいか。
いや。
などとブツブツ言いながら手に取って眺めているんだけど。
季節的にどうなのだろうと思っていたのだが、一年中遊べる屋内のプール施設があったり、水着着用の温泉やらスパもあるし。海外に行ったりする人も多いらしく、水着コーナーが常設されており、しかも割に選んだりしているカップルも多かった。
「結構人がいますね。」
「そうですね。可愛いのは人に先に取られちゃったりするから油断なりませんね。早く選ばないと。」
真剣でびっくりした。
しかも一応アイドルだから、彼女の水着を選んでいるなどという事はまずいらしく、サングラスにマスク更に帽子まで被るという完全防備の体制で、水着を物色している様子は完全に変質者の様相を呈している。
「聖也、なんか怖いです。その格好。」
「一応アイドルですからね。バレたらまずいですから。」
「それより、良さそうなのを何点か見つけましたので、試着室に行きましょう。着てみないとわからないこともある。」
そういってすたすたと試着室に進む。
「お客様、ご一緒に入られますか?」
当然だというように頷く聖也。
え?えええ?ちょっと恥ずかしいんだけど。試着室に二人で入るのとか。
と思って辺りを見回すと、結構みんな一緒に試着室に入って試着しているらしくイチャイチャキャッキャッと楽しそうな声が聞こえてくる。
そういうものなのか。でも恥ずかしいよお。
「一緒に、ですか?」私が一応訊くと
「当然です。その方が早いし、色々確認できますから。ほら皆さん一緒に入って試着しているでしょう?
何か問題でも?」
色々問題があると思うけど、狭いし。
でも言われた通り、試着室に一緒に入った。店員さんにも一緒にって言ってしまってるし。
相当恥ずかしいものがあったが何とか試着というイベントをこなし、
結果3着の水着を買ってもらって
ビーチリゾート用の水着を買うというミッションは無事達成された。
けど
その晩
仕事から帰ってきた帝様が開口一番
「レディ、今日撮影で来シーズンの水着撮ったんだけど、女性用のも凄く可愛いのがあってね、レディに似合いそうなのを買っておいたから、水着の用意はしなくていいよ、もうあっちに送っておいたから、旅行の荷物が少ないほうがいい。何も準備しなくていいからね全部向こうに送っておくから。」
「俺の用意した水着、着てね、きっと気に入るよ、まだどこにも売ってない来シーズンのなんだ。」
こちらの章ですが、こちらのみでストーリーは分かるように書いておりますが、ムーンライトノベルズの方に18禁部分を入れたものを投稿予定ですのでよろしかったらそちらも呼んで下さると嬉しいです。尚、そういうのは苦手という方は見ないようにしてください。かなりキャラ崩壊しております。




