36話 ビーチリゾート5 白雪姫の夜
嶺が唇を這わすと、瑠璃はうーんと息をして、ハッと目を開けた。
まるで王子の口づけで蘇生した白雪姫のように。
嶺はちょっとびっくりして顔をあげた。
瑠璃の顔はますます赤くなって自分の置かれている状況に気付くと焦ってあわあわと手をバタバタさせた。
「あ、あの私、酔って。わ、、あ、ごめんなさい。
えっと、ここは。」
「ここ?君と一夜を過ごそうとしてる部屋だけど。
覚えてない?ここに運んできたときはもう眠ってしまったのかな?
マイレディ。」
そっと瑠璃の頬に手を当てて優しく言葉を掛けた。
「あ、あの。私。えっと。そのもう?」
不安げな顔をして自分の衣服の確認をしている。昏睡姦の心配をしたのだろう。
「ん?まだ何もしていない。レディの寝顔が可愛いからちょっとキスしてみただけ。
キスで起きてくれるなんて、まるで白雪姫みたいだね。それとも眠り姫か。
そうレディというより、マイプリンセスと言ったほうがいいかな。」
そっと瑠璃の額の髪をかき分けてキスをしてにっこり笑った。
その笑顔が美しくて、すっと鼻筋が通った端正な顔立ちにちょっと垂れ目っぽい綺嶺な形の目に瑠璃は自分の顔が映っているのを確認してそして優しい笑みに言葉も失くしてしまう。
「姫様、今宵、夜伽を務めさせていただきます。帝 嶺です。
瑠璃姫、俺のすべてを今宵受け入れて欲しい。」
そう言って瑠璃の手を取り手の甲にキスを落とした。
嶺は女性がどうしたらうっとりと気分よくなるかよく知っていた。
そのうっとりするような仕草に瑠璃の顔が益々赤くなって言うのが分かって心の中でホッとする。
「でも、取り敢えず、水を飲んだほうが良さそうだね。ちょっと待ってて。」
軽くウインクすると、部屋の冷蔵庫にミネラルウォーターを取りに行く。
そう言えば私ちょっと飲み過ぎてそれで、ここにお姫様抱っこされて、
ってとこまでは覚えてるけど、
それで、部屋に運んでもらってベッドに寝かせてもらっていたらしい。
という事を瑠璃は朧げに思い出して把握する。
大事な攻略の前なのに何という失態。折角用意してもらったシーフードディナーもあまり食べられずにワインをがぶ飲みして、ここに運ばれたのだから。
情けない。瑠璃は穴があったら入りたい気持ちだった。
ミネラルウォーターを持って戻ってきた嶺は、ミネラルウォーターを一口口に含み、
瑠璃に口移しで飲ませる。
「あ、じ、じぶんで飲めます。」
そう言ってミネラルウォーターの瓶を受け取ろうとする瑠璃の手をそっと捕らえて
「だあめ、俺にやらせて。それとも水でなくて、まだワインが飲みたいかな?」
そう言って瑠璃の頭を撫でた。
「ワインは、ワインはもういいです。」
これ以上飲んだら、多分もう意識手放してしまう。
それに多分明日二日酔いだ。
ワインがとてもいいもので、一口飲んだだけで上物と分かるそんなものだったから、実はもっと飲んでみたい気持ちもあった。
でもそんな意地汚いことをしている場合ではないということを、アルコールで判断力が薄くなった頭でも考えることができるだけの理性がまだ少しは残っていた。
今は酒を飲んでいる場合ではないのだと。
飲むなら水である。
しかし、水を飲むにしても、
口移しで飲ませてくれるので、
ただ水を飲むという行為なのだが、唇から身体の奥の方に次第に疼きが湧き上がってきているのを感じて次第にムズムズとして気持ちになってくるのを感じてもの凄く恥ずかしい。
そして、目を開けていないと水を飲めないのに、目の前にあるのは、端正な顔してちょっと意地悪っぽく笑ったりしている嶺の顔なのだ。
水を飲んだら一瞬で目が覚めたような気がしたのに、またドキドキと共に気が遠くなりそうな気がする。
口移しの破壊力に驚くしかなかった。
酔っているのが悪いのか身体が熱くて、心臓の鼓動が早くなっている気がする。
水を飲んだら気持ちが落ちつくどころか、むしろ、ちょっとおかしい。
シュッと首元のリボンタイを抜いて、シャツのボタンを外して胸元をはだけた嶺の身体をみた瑠璃は昼間散々みた嶺の上半身の裸が眩しくてそっと目を逸らした。
昼間外で見るのと、ベッドの上で見るのとまるで違う。
同じ裸なんだけれど、昼間は裸でいるのが普通なシュチュエーションだったから、プールでの嶺の上半身裸には鍛えていて美しいなあとか思ったけれど、恥ずかしくて見れないから目を逸らすなどという事はなかったのだが、今ベッドの上でおもむろにシャツのボタンを外して見えている胸元は男の色気がたっぷりで、心臓がバクバクとなり、今からしようとしている事、それが何かは分かっているのでとても恥ずかしくてそして、それにどこか期待している自分に気付くとやはり羞恥の気持ちでいっぱいで、どうしてこうも慣れないのだろう。もっとしなやかに自然にこういう行為を受け入れられないのだろうかと思ってしまう。
しかし、その羞恥に耐えている恥じらいの視線外しが、嶺の男の欲望に加虐心に火を付けている事を瑠璃は気付いていなかった。
「こっち見て、目を逸らさないで。」
優し声色で言っている嶺の言葉の内容は命令であってお願いでもあった。
「でも、恥ずかしいです。」
「恥ずかしい?何が?」
「帝様の、その身体が、美しくて、恥ずかしくて見れないんです。」
「褒めてくれるの?嬉しいよ。レディ。でもそれならちゃんと俺の事見て欲しいな。」
そう言って横を向いてしまった瑠璃の顔を自分のほうに向けた。
目の前にあるのは、柔らかくい薄茶色の嶺のふわふわとした髪と、整った顔、ちょっと垂れ目なのに、真剣な眼差しが瑠璃の心に刺さるようにまるで矢で射抜かれたように目を逸らせない。
美しい顔が近づいてきて、瑠璃はそっと目を閉じた。
その瞼にそっと唇が触れ、そして、唇に移った。
そっと唇についばむようにされる口づけ。
チュンチュンとしたような口づけに。思わず目を開けると、
嶺が優しく微笑んでいた。
「ごめんね。もう優しくとかできないかも知れない。」
先に謝っておこうと嶺は思った。
多分今晩俺は優しくとか出来そうもないそんな気がする。
最初の予定とは違ってしまうが予定は未定である。
「大丈夫です。」
瑠璃は答えた。
それが合図で、嶺の唇が瑠璃の唇に、そして瑠璃の口を嶺の舌がこじ開ける。
瑠璃の口の中を舌を探して蠢く嶺の舌。
絡める。
そして逃がさない。
息が苦しくて、思わず嶺の頭から離れようと首を動かすも、嶺に頭を押さえられてしまい、
やっと唇が離れたときには瑠璃は息も絶え絶えになっていた。
離れる唇から銀色に光る糸が見えて。
濡れた嶺の唇は艶めいていた。
「君が好きだ。愛している。瑠璃。君のすべてが欲しい。」
「俺のすべてを受け取って欲しい。」
すべてを食らいつくす狼になって、嶺は子羊の瑠璃を食べ始めて、
一晩中食べつくしてしまった。
帝 嶺 攻略完了。




